サイバーパンク・ビート 〜 Corin「Virtuality」〜



 2010年代のエレクトロニック・ミュージックを聴いていると、SFの世界観を好む者が多いように感じる。たとえばワンオートリックス・ポイント・ネヴァーは、DJミックスで『攻殻機動隊』のサントラから選曲していたりする(※1)。また、スペース・ディメンション・コントローラー『Welcome To Mikrosector-50』のように、アルバム全体でSF的なストーリーを語る作品もある。
 この流れに筆者は、とても興奮している。さまざまな問題が渦巻く世界からの逃避願望を表象しているのか? あるいはあえて人工的な質感を打ちだした音が流行っているにすぎないのか? だとしたら、それはハドソン・モホーク『Butter』以降の流れとして考察できるのではないか...などなど、たくさんの考えが頭をよぎっては消えていく。いずれにしろ、SF好きとしては現在の潮流を否定する理由なんてない。


 そんな筆者の琴線に触れた作品が、オーストラリアのレーベルWondercore Islandからリリースされた、コリンのEP「Virtuality」である。まずは、本作に収録された「Void」のMVを観てほしい(※2)。『攻殻機動隊』や『ブレードランナー』を想起させる映像で、まさにSF的世界観なのがわかるはずだ。具体的にいえばサイバーパンクだが、そうしたイメージは本作のジャケットでも前面に出ており、ヴィジュアル面での強いこだわりがうかがえる。


 サウンドは、ほのかにダークな雰囲気を醸しつつも、キラキラとしたアーティフィシャルな質感を強調したものとなっている。この点は、コリンが去年デンマークのSpeaker Footageから発表したカセット・アルバム『Wave Systems』とも共通するが、本作はよりベース・ミュージック色を濃くしている。「Vexations」のビートにはジューク以降の感覚が表れているし、作品全体で見ても低音が多めだ。
 しかし、フレーズの微細な変化によって作られる起伏や、リヴァーブやディレイなどを中心とした丁寧なエフェクト使いはホーム・リスニングでも楽しめるだろう。こうした側面は、μ-Ziq(ミュージック)や初期のエイフェックス・ツインといったIDMを連想させる。強いて本作の欠点を言えば、曲の展開がワン・パターンになりがちなところか。しかし、コリンというアーティストの可能性を知るには十分のクオリティーだ。





※1 : 『XLR8R Podcast 315』のこと。こちらで聴けます。https://www.xlr8r.com/podcasts/2013/10/oneohtrix-point-never/


※2 : 「Void」のMVはこちらで観れます。https://www.youtube.com/watch?v=1I64wE3MRLk

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近藤 真弥

音楽レヴュー

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