CLC(씨엘씨)「ME(美)」



 5月29日、CLCの新曲“ME(美)”がリリースされた。タイトルは、〝私〟を意味する〝Me〟と〝美〟の発音が似ていることから、ダブルミーニング的につけられたそう。つまり、私は美しいということを少々回りくどく言っているのだ。もしかすると、アリアナ・グランデの七輪タトゥーなど、日本語が世界のポップ・カルチャーで注目されている流れを意識したのかもしれない。

 さっそく聴いてみると、イントロでレゲエ風のカッティング・ギターが聞こえてきた。しかし、すぐさまヘヴィーなキックが響きわたり、レゲエの風は止んでしまう。
 驚かされたのはサビだ。蹂躙的なウォブリー・ベースとクラップ音が印象的なそれは、スクリレックスとリック・ロスが組んだ“Purple Lamborghini”を彷彿させる。今回作曲を手がけたモスピックは、音楽オタクなら特定の曲を容易に連想できるトラックが多い。とはいえ、ここまで露骨にやることはなかった。それをまんまヒップホップではなく、ポップ・ソングの譜割りでも機能する音の配置に変えているのは、さすがモスピックといったところか。

 歌詞はそのモスピックに助力を得て、イェウンが書いている。イェウンといえば、(G)I-DLEのソヨンと共に手がけた“No”の歌詞がおもしろかった。韓国の世情を意識したような言葉に、女性の連帯を促す想いも込めていたからだ。
 その想いは“ME(美)”にも受け継がれている。強力な自己肯定で満ちあふれ、自らの美しさをこれでもかと誇示する。興味深いのは、外面的要素に触れる言葉がないことだ。〈華やかさの中にある清純さが(화려함에 담긴 청순함이)〉〈凛々しさの中にある純粋さ(도도함에 담긴 순수함이)〉などのフレーズからもわかるように、“ME(美)”は内面に依拠した美しさを寿いている。
 そこには、“No”との連続性も見いだせる。化粧やハンドバッグといった、外面的要素に囚われることを拒絶したのが“No”という曲だからだ。しかも、その姿勢は共作パートナーが変わっても保たれている。だからこそ筆者は、イェウンの想いは切実で、非常に強いものだと確信できるのだ。



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