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未来を作るワーケーションとエデュケーションと山梨

"Mount Fuji and Cherry Blossoms" by Midori Under CC-BY-3.0


 神戸市と楽天は広範囲な連携協定を締結しています。その枠組みとディレクションの中で楽天技術研究所も神戸市の学生のインターンを始めとする様々な人材育成施策に関わらさせていただいております。GW初日の4月27日、それが縁で、片山さつき 内閣府特命大臣、久元 神戸市長、フェリシモ代表取締役 矢崎氏、ライゾマティクス代表取締役 齋藤氏、とパネルディスカッションをさせていただき、神戸の未来の可能性について議論しました。

 都市の未来像とはどうあるべきかについて熱い意見を交換させていただいたのですが、控室で打ち合わせをした際に、エストニアは参考になる部分が多いということを紹介しました。

 エストニアは、ヨーロッパのシリコンバレーと呼ばれ、また世界最初のデジタル国家とも評されています。オンライン投票、国民IDカードから e-residency まで様々なデジタル施策を行っているのはよく知られているところです。ですが、あまり知られていないのは、エストニアは実は過去20年において人口が19%程減少しており、国としてどうサバイバルしていくかという難題に対し、デジタル国家というブランドを確立しトップランナーとして走ることで立ち向かってきたという事実です。どうブランディングし戦っていくか。これから人口減少を含めた多くの課題に挑み続けなければならない我々日本の各都市・地域創生にも学ぶべきところは多くあるはずだと考えます。

 先日、山梨日日新聞の取材を受け、山梨の未来像についていくつか話したことを7月1日の創刊記念号に掲載いただきました。

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 山梨はこれから人やモノの流れを大きく変えるポテンシャルのあるイベントとして、新東名高速道と中央自動車道を結ぶ中部横断道の全線開通を2020年に、リニア中央新幹線の開業を2027年に控えています。より広域でつながっていくことにより、山梨のプレゼンスが高まる機会があります。人もモノもより山梨を通り、また留まる機会も増えていく。観光客の数も確実に増えることを期待したいところです。
 しかし、それだけでは不十分かもしれません。エストニアがデジタル国家としてのブランディングを行い、EUでのビジネスに関心のある人々やデジタルな働き手を積極的に誘致しているように、山梨も過去の文化資産、自然の資産を活かしながらも未来に向かったブランドを確立し、人々をひきつけていくことこそが更なる発展に必要でしょう。山梨ではこんなことができる。こんな機会がある。それは他の県では得ることはできない。山梨という場所だからこそそれができることに意味がある。という他と比較してもアウトスタンディングなブランドの構築です。
 中央自動車道や中部横断道という大動脈を活かしつつ、都市部との近さをアピールしていき、更には、ならではである山間部や郊外のもつポテンシャルを提供する。例えば、以下の記事で書いた通り、今後もECの利用は伸びていき、結果、配送の取扱個数も増加していきます。しかし一方で配送に関わる労働人口は減っていき、ニーズの増加と労働力の不足というミスマッチが拡大していきます。この悩ましい問題を解決する手段の一つとして、UGVやドローン等の新しい配送手段の開発・展開は急務です。これらUGVやドローンの実証実験特区等は可能性の一つとしてあるかもしれません。


 ワーケーションという言葉があります。ワークとバケーションを合わせた造語であり、バケーション先で仕事を行うという意味ですが、観光地に中期・長期に都市部から滞在してもらいつつ、仕事も行ってもらうというコンセプトとしてとらえることもできます。石和、湯村、韮崎、八ヶ岳、小淵沢、富士吉田、河口湖、山中湖、南アルプス等など、沢山ある山梨の観光地に宿泊しながら、UGVやドローンロボティクスの研究開発や実証実験を行う。中部横断自動車道全線開通、リニア中央新幹線開業と合わされば、「新物流のあるべき姿は山梨から」、という形で更にブランド発信に意味をもたせられるでしょう。自然が豊かな山梨だからこそUGVやドローンも十二分に実験ができる場としてアピールし、企業の誘致が可能となるでしょう。

 ですが、これでもそのブランドの効果は一時的なもの、限定的なものに留まってしまう恐れがあります。より長期的な、盤石なブランドに成長させていくには、より先を睨み、多くの世代を引きつける教育とも連携させたものにしなければなりません。つまり、ワーケーションとエデュケーションを融合させた施策です。
 誘致した企業の技術者に小中高教育でカリキュラムを担当してもらい、人材育成につなげる等の試みも重要でしょう。人材育成に貢献した企業には補助金を出す、あるいは何かの費用を免除していくということでインセンティブをもたせるということもありかもしれません。また、昨今は企業のドローン、UGV事業は(楽天技術研究所もそうですが)海外から来ているエンジニア、研究者が従事していることが多く、そのような国際的でプロフェッショナルな方にサマースクールでの講師を担ってもらうこともありでしょう。夏休みに、山梨では、AI、IoT、ロボットの技術を英語に触れながら学べるサマーキャンプに参加できる、将来にも世界にもつながる知識と技術を自然と共に体験できる、というプログラムが提供できたらそれは教育効果を考えても魅力的なものになるかもしれません。


 各都市・地域の未来を考えるに、今既に目の前に山積した課題に、また今後更に立ち上がってくる試練に、ただ圧倒され、立ち尽くしてしまいがちです。それでも、過去の文化資産、起こりうるイベントを識別し、そしてそれらをつなげるストーリーをもって確立すべきブランドを見出し、短期と長期のどちらにも渡る、そして時には国際的にもつながる、一連の施策群を生み出し実行し、多くの世代を引きつけていく。そうしてそのブランドをもって日本におけるフロントランナーとして走ることで立ち向かっていく。そういうことこそが必要なのだと思います。

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