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750億ドルの TikTok と 新たなつながりの世代、そして国家による規制と検閲


TikTok について書きます。

新しい世代が来ています。AI ネイティブという世代が要請されているということを以前書きましたが、常に若い世代が新しい世界を生み出していきます。


その新しい世代の象徴といえるが、TikTok というアプリの爆発的人気です。人気がすごすぎて、Bloomberg によると、提供会社の Bytedance は、去年時点で 750億ドルの Valuation があるといわれています。Uber よりも評価額の高い世界一のスタートアップです。

TikTokは、2016年9月にByteDanceによってリリースされた「抖音(Dǒuyīn)」が原点です。「抖音」は、ビブラートを意味しています。わずか一年以内で抖音はユーザー数を1億人にし、その人気を集めました。Instagramが2年ほどかかったのに比べるとその人気がいかに加速度的だったのかわかります。後、2017年11月、同じく中国製の短編動画共有サイトのMusical.ly を買収し、統合。Musical.ly はUSで大人気だったため、これによりUSでの普及の足がかりをえます。「抖音短視頻」になり、TikTok とリブランドします。「短視頻」は、ショートビデオを意味しています。ユーザーの中心はジェネレーションZ (90年代後半から2000年代に生まれた世代)とされており、まさにインターネットとデジタルデバイスに囲まれて育った世代がその躍進を後押ししているアプリとして、その上の世代の大人たちは、半ば戸惑いながらその広がっていく現象を眺めています。

ここで、各国のニュースチャンネルがどう解説しているかを見てみると、それぞれのTikTok 観が見えてきて興味深いです。

以下は、オーストラリア(ABC)。

こちらは、アメリカ(NBC)。

そして、UK (BBC)。BBCは、プライバシー問題、特にTeenagerのオンラインプライバシーの問題にフォーカスしています。


基本は、15秒程度のショートビデオ共有アプリです。上の解説動画でも、Vine を連想していたりしていますが、Vine との違いとして、BGMにあわせてLip-Syncing (口パク)したり、ポーズをとったり、ダンスをしたりするユーザーのプレゼンテーションを撮影してハッシュタグをつけて共有していくユースケースが中心となっています。その用途から様々な映像をユーザーが撮りあって披露しあい、またそれら映像・音楽をブラウジングしてお気に入りのクリエーターをフォローしたり、応援したり、更に拡散していく、強力な伝染性をうまく内包したSNSになっています。色々な映像エフェクトを演出してくれるフィルターがあり、特別な技術がなくても多様な動画が簡単に作成できることも魅力ですが、特にDuet という、作品と作品の思わぬシナジーを可能にするユニークな機能は、ユーザーのクリエイティブな作品作りを加速させていて非常に興味深いです。

とにかく手軽で、楽しいというUXをユーザーに提供しています。同じBGMを使ったユーザーによって異なるダンス、プレゼンテーションを次々にブラウジングしていき、その中で、多様な人たちの生活も垣間見え(英語圏では特にそうなのですが、多くのTeenagerは、家の中の、片付けもしていない生活しているそのままの状態で撮影をしている)、どんどんフォローしたり、コミュニケーションして応援できる。

映像をアップする方も手軽で、基本は、音楽にあわせてLip Syncする、踊るという形式なので、YouTube とは異なり、自分の Voice (肉声でもあるし、自分自身の意見や表現)を使わなくていい、自分のいいとこをいいように披露して、自分そのものはそこまでさらさなくてもいいという敷居の低さがある。TikTokには「チャレンジ」というお題のハッシュタグをつけて投稿する場が用意され、ユーザーに自分も発信したいというモチベーションを高めています。チャレンジは何も難しいものではなく、言うなれば大喜利に近いかたちのもので人気の投稿を真似する、ちょっとだけアレンジするだけでも参加できるため、気軽にこの楽しい世界につながっていくことができます。

結果、ユーザー数は桁違いです。月間アクティブユーザーが中国国内だけでも4億、グローバルだと10億をこえるといわれています。Instagram も月間ユーザーが10億をこえていますので、あっという間に Instagram に並び、インターネットにおけるユーザーを通した爆発的な拡散性を体現しています。新しいつながる世代の誕生を目撃しているかのようです。

そのユーザー数や拡散性を利用し、TikTok でまず注目を集め、YouTube の自分のチャネルへ誘導する等のマーケティングのテクニックも見出され、ビジネス活用も広く始まっています。


TikTok は中国から始まり、日本でも使われていますが、それに限らず、インドネシアやタイ等の南アジアでも人気が上昇し、最初の方の各国ニュースで解説されているように、世界的に使われています。現在、ユーザーの25%はインド、9%はUSです。その一方で、規制・検閲も行われています。2018年7月にはインドネシア政府はポルノや冒涜などの違法コンテンツの蔓延を懸念し、一時的にアプリをブロックしました。(その後、解除)。2019年1月、中国政府は、TikTok 等のショートビデオ共有アプリのコンテンツを検閲する規制案を新たに発表しました。今月6日インドでは、TikTokのダウンロードが青少年の精神の健全性を損なうという理由から禁止されました。(が、TikTok側が、コンテンツ規約に違反した約600万のビデオを削除したことを受け、4月25日に解除。)US ではFTCが、TikTokのプライバシーの扱いについて問題視し、児童オンラインプライバシー保護法に違反していると指摘。2019年2月に和解しが成立し、TikTokは、罰金570万ドル(約6億3000万円)の支払いが命じられています。

これら TikTok に対する規制及び検閲は、今までもあったメッセージングアプリの各国でのブロックの話と同様に、SNSと地政学というテーマを考えさせてくれる事例なのかもしれません。国からの規制だけではなく、他の企業からのブロックもあります。 WeChat を開発している Tencent はTikTokと仁義なき戦いを繰り広げ、WeChat からTikTok へのアクセスをブロックしました。これは、Facebookが、WhatsAppやInstagramを買収したことがUSのネット興亡期の一幕であるように、中国のインターネットの発展の仕方を占う一つの材料かもしれません。

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