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7月5日(水) 「有害鳥獣・ニホンジカ(内臓編)」

今日の東京は曇りのち雨。
最低気温は22℃、最高気温は29℃。
次の修行先が決まり、開始迄に少々間が開いたので、昨晩の新幹線で東京に戻りました。やっと、梅雨らしい天気が戻って来て、最高気温も久々の30℃割れ。さて、

昨日は「未利用魚・ミシマオコゼ」についてお伝えしましたが、今日は「有害鳥獣・ニホンジカ(内臓編)」についてお届けして行こうと思います。

既に以前書いた通り、自分は山梨県のとある猟隊に2017年秋から2019年6月の韓国赴任迄の所属しており、ソコで鹿と猪を中心とした巻き狩りに参加させて貰っていて、ほぼ毎週日曜日に捕獲・解体をしてました。
その解体の概要については、先週の「有害鳥獣・ニホンジカ(解体編)」でお伝えした通りなのですが、特にその解体作業中は、自分がモツ好きなこともあって、大バラシ後の内臓処理を進んでやらせて貰ってました。

ご承知の通り、シカは草食動物なので、牛や羊等と同様に4つの胃袋ミノ・ハチノス・センマイ・ギアラ)があります。ソレ以外の内臓としても、(厳密に言えば内臓じゃあ無いんだけれど)脳味噌・鹿タン(舌)・ウルテ(気管)・食道、(この辺りからは内臓かな)ハツ(心臓)・フワ(肺)、レバー(肝臓)・チレ(脾臓)、コテッチャン(小腸)・テッチャン(大腸)・テッポウ(直腸)・マメ(腎臓)、コブクロ(子宮)・ツル(ちんちん)・ホウデン(金玉)等があります。消化器系を覆っている網脂や、肺と消化器系内臓の境目にあるハラミ(横隔膜)なんてのも赤身肉に近い部位ではあるものの、内臓の一種でしょうかね。

まぁ、慣れればなんてぇコトは無いのですが、コレらをキチンと識別してキレイに食べられる状態にするには、多少の慣れが必要です。特に気を付けなければならない点は、大バラシをして本体から内臓を引き剝がす(切り離す?)際に、内容物やら外界のゴミや砂等が付かないように取り出すコト。どうしても、外のオープンスペースでやってるとくっついてしまうんですよね(保健所認可の解体処理施設であれば、胃袋内にある内容物にだけ気を付けていれば良いのだろうと思われますが)。
以下、上から順に?内臓処理に係るザックリ手順や食べ方等について書いて行きたいと思います。

・脳みそ
コレは大バラシ後にアタマを切り落とした後の作業になりますが、頭蓋骨をカチ割って脳みそを取り出しますので、少々厄介です。脳みそは、湯掻いて白子ポン酢のようにして食べたり、バターと塩コショウ等でソテーにして食ったりしたら、クリーミーで美味いですよ。シカの脳みそと言われなければ、食べたヒトも「結構美味い!」とか言いながら食べてくれると思います。アタマをカチ割るのが面倒なので、滅多にやりませんでしたが。

鹿タン(舌)
鹿の舌は意外にも小さいですね。もしかしたら、偶にスーパーで売られている豚タンよりも小さい位でしょうか。頭部を切り離した顎の下に切れ目を入れて、グイっと引っ張り出すカンジで取り出します。小さくて皮を引くのも面倒なので、豚タン同様に皮付きのままスライスして塩コショウでフライパン焼き(勿論、炭火の方がベターだけれど)すれば、牛タンほどとは言わない迄も、タンの味は確りとしてて美味いモンです。

 ・ ウルテ(気管)
気管の軟骨ですね。まぁ、コリコリ食感を愉しむだけで、味はそんなにあるとは言えません。オマケのような存在で、コレを食べよう!と言う人は猟隊内にも殆どいませんでした(笑)。

・食道
筋肉質の管。取るのも面倒なので、ウルテ同様に食べるヒトはいませんでしたが、食ってみればシコシコした食感で、マズくはないですよ。

ハツ(心臓)
言わずと知れた、心臓。シカが獲れた場合、自分が参加する迄はこのハツとレバーだけを取り出してて、アトは廃棄か或いは煮て猟犬のエサにしてました。まぁ、数ある内臓類の中ではこの2大巨頭が手間を掛けずに美味い部位でもある為、已むを得ないコトであったとは思いますが。コレはスライスして塩コショウでシンプルに焼いて食っても美味いし、フライパンにごま油・塩コショウで焼くも良し、煮込みなんかに入れても美味いんです。

フワ(肺)
これは割と大きな臓器ですが、そのフワフワした食感からやや敬遠されがちな部位ですし、食べ方としても煮込みに放り込む位しか思い付かないかなぁ。ソレに加えて割と大きい為に沢山取れてしまって処理にも困る、と言うコトもあり、お犬様のエサになることが多い部位でありましたかね。

・ハラミ(横隔膜)
焼肉屋等では牛のハラミは良く出されますが、鹿にも当然ハラミはあって、割と美味いんです(少々薄っぺらくはありますが)。ヘルシーな赤身肉で、ホルモンっぽくはないので、ソッチ系が苦手な方でも食べられると思います。

レバー(肝臓)
コレは上述のハツと共に、シカモツの2大巨頭。流石にE型肝炎や肝蛭はコワいので、生でレバ刺食う勇気は持ち合わせていませんが、ニラと一緒に炒めたり、煮込みに入れたりしたら美味いです。パテなんか作ってもきっと美味いでしょう。シカだからと言って特有の臭みとかは殆ど無く、牛レバや豚レバと同様に扱っても大丈夫な部位だと思います。

チレ(脾臓)
コレはあんまり食べるヒトいませんが、レバーに似た色合い・食感・味わいで、決してマズいワケじゃあないと思います。割とマジメな焼トン屋さんなんかでは、豚のチレを食わせてくれるトコロがありますが、鹿のチレも遜色ない美味さだと思います。東十条にある行き付けのお店では、豚チレにバター乗せて焼いてフレンチ風にして出してくれてたのは絶品でした。

ミノ(第一胃)
コイツはデカいんです。開けてみると、一時的に消化された青っぽい草がたっぷり。結構青臭いです。キッチリと洗ってゴシゴシしないと、青臭さが取れないかな。もう、タワシやら何やらで徹底的にお掃除。力仕事です。牛ほどの厚みは無いけれども、ソレなりの厚さはあるので、焼いて良し煮込んで良し。特にミノサンドとか上ミノとか呼ばれる厚みのある部分は美味いですね。

・ハチノス(第二胃)
4つの胃袋の中では、個人的にはコレが一番美味いかな。ハチの巣のような形状になっている為にこの呼び名になってますが、中華の点心にも良く使われてるし(牛ですが)、イタリアンのトリッパなんてのもこの部位ですね。コイツも黒い膜で覆われているので、コレをキレイにお掃除するのは面倒なのですが、自分は面倒なのでやりません(その代わり、独特の臭みは残ると思いますが、臭みを香りと捉えれば…(笑))。矢張り、自分はトマトで煮込むコトが多いですかね。

センマイ(第三胃)
コイツは処理が面倒臭い部位です。効率的な消化・吸収を行う為に入り組んだ襞々構造になっていて、ソコに消化途上の内容物が入り込んでいるので、コレを丁寧に洗い流すのが面倒なんです。その上で、コイツもハチノス同様に黒い膜で覆われているので、コイツを丁寧に落とすとなると、手間暇掛かります。でも、コレも美味いんです。焼くのも良いけれど、個人的には北京で良く食べた爆肚(サッと湯掻いて、胡麻ダレで食す)的に食うのが好きかな。

・ギアラ(第四胃)
焼肉屋等で牛のギアラは時々見掛けますかね。くにゅくにゅ食感のホルモン。焼いても良いし、煮込んでも良い。個人的にはフツーかな。

・網脂
網脂は、胃袋等の臓器を覆っている網目状の脂であって、コレをキチンと取り出すのは結構難しいんです。汚れが付着し易いし、切れたりもし易い。特段優れた味があるワケではないのですが、特に鹿肉等は肉自体の脂含有量が少ない為、コレを巻いて焼いたりすると脂補充になって、より旨味が増すと言う効果ありです。ただ、ホントに獲るのが面倒臭いので、相当気合の入った時でないと、他の臓器と一緒にポイされてしまうコトが多いですかね(勿体無い、とは思いつつ)。

・コテッチャン(小腸)
鹿の場合、長いし細いしで処理が面倒な部位。あんまり手出ししないコトが多かったかな。羊なんかだとソーセージの皮にしたりするんだけど。食っても然程美味くはない印象。

・テッチャン(大腸)
イノシシの大腸は食いでがあるのだけれども、鹿の大腸は結構薄いので、コレもあまり手出ししなかった部位かな。

・テッポウ(直腸)
直腸は最後の内臓の部位だけれど、鹿の直腸は上記の小腸・大腸と共に然程美味くないコトもあり、あんまり手出しはしなかった部位。キチっと処理すれば美味いんだろうけれども…。

・マメ(腎臓)
オシッコを濾過する重要な器官である為か、少々オシッコ臭が気になるヒトもいる部位かも。ソレがまた臭いモノ好きにはタマランのかも。フライパンで焼いて良し、煮込んで良し。

・コブクロ(子宮)
メス鹿ならば持ち合わせている部位で、豚ほどではないけれども、そこそこイケる。春先だと子宮内に仔鹿の胎児が入っているコトも。胎児はぶよぶよしてて、食べるには少々残酷過ぎるのでナンマンダブしてサヨウナラ。

・ツル(ちんちん)
長いけれども、細い(笑)。好んで食べるホドのモノでもないかな。

ホウデン(金玉)
オス鹿には付いてます(当然ですが)。意外に小さい(笑)。茹でたコトはありませんが、スライスしてソテーにしたらミルキーで(?)割と美味かったですよ。男性的には、チト痛々しいですが(笑)。

と言うコトで、ニホンジカの内臓編はおしまい。まぁ、シカの内臓をコレだけ細かく取ったり、食ったりするヒトはあまりいないでしょうし、ましてやお店で提供するなんてのは中々ハードルが高いとは思いますが、将来的に自身の解体処理施設を持てるようになったら、この辺りについてもお出し出来るとオモシロいかも知れませんね。

明日は、個人的に割と好きな岐阜は養老にある玉泉洞酒造さんがが造り出す「醗酵飲料(日本酒)・醴泉」について書いて行こうと思います。


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