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引越しシェアリングサービス「Hi!MOVE」をどうやってグロースさせる? #マーケティングトレース

本日は、引越しシェアリングサービス「Hi!MOVE」を #マーケティングトレース したいと思います。
先日WBSで取り上げられたのを観て、下記の点において素晴らしいと感じました。

・ターゲットユーザーのニーズを理解している。
・業界ならではの無駄、非効率だった部分を在庫として活用している。

Hi!MOVEとはどんなサービス?

Hi!MOVEは2019年1月18日からスタートした、シェアリングエコノミーの概念を取り入れた引越しサービスです。
大きな特徴は下記の2点です。

[1]カメラで撮った写真を送れば簡単に見積もりができる。
∟スマホのカメラで撮った写真と、引越予定日・現在の住所・引越先の住所があれば見積もり可能。
∟個人名や電話番号などがなくても見積もりができる。
∟従来の引越見積もりサービスにあったような頻繁な営業電話もない。

[2]トラックの空きスペースをシェアするので、料金が安い。

∟ピンポイントで時間は指定できないが、トラックの空きスペースをシェアすることで低料金で引越しが可能。


引越業界を取り巻く環境をPEST分析

まずは引越業界を取り巻く環境を掴んでいくためにPEST分析をしてみたいと思います。

Politics(政治):
長時間労働の是正/働き方改革の促進
Economy(経済):
引越業界の慢性的な人手不足/労基問題により、繁忙期の1日あたり受注件数が低下/それに伴う引越料金の高騰
Society(社会):
核家族化による単身世帯の増加/スマートフォンの普及
Technology(技術):
メルカリやCASHなどによる「スマホで写真を撮って即時性のあるサービスを体験する」ことの一般化

特に、近年では「引越し難民」という言葉が誕生するなど、繁忙期に引越しできない人が増え、社会問題になっています。
「引越料金が高くて頼めない」
「希望のスケジュールに合う業者がいない」
という状況に陥っている方も多いようですね。
業者側としても、人手不足や労基問題によって、繁忙期に1日あたりのこなせる件数が減ってしまい、結果的に件数を減らし、料金の値上げを行う形になっているようです。

Hi!MOVEをSTP分析

そこでHi!MOVEは下記のようにSTPを行なっています。

<対エンドユーザー>
セグメンテーション:
東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県(※初期のみ)の単身世帯

ターゲティング:
多少時間はかかっても少しでも引越し料金を抑えたい人
手軽に引っ越し料金の見積もりがしたい人

ポジショニング:
時間的な余裕があり、低価格を望んでいたユーザー。
今まではここを物流系運送業者や赤帽などの軽貨物事業者が埋めていた。

イメージはこんな感じです↓

<対引越し業者>
セグメンテーション:

東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県(初期のみ)に対応できる引っ越し業者
かつ、自社による選定基準をクリアしている。

ターゲティング:
売上を伸ばしたいが、人手不足や労基問題などにより繁忙期も受注件数を抑えざるを得ない引越し業者。
トラックの空きスペースを何とかしたいと考えていた引越し業者。

ポジショニング:
今までコスト対売上が低く、単価を上げざるを得なかった単身世帯などの、「高コスト低単価ユーザー」を、写真見積もり/引越しが確定してからのマッチングにより「低コスト」で獲得できる。

こんなイメージです↓

ターゲットユーザーと引越し業者のニーズがうまくマッチした素晴らしいサービスだなと思います。

Hi!MOVEのマーケティングミックス

次に、STPを整理した上でマーケティングミックスを確認し、
課題となるポイントはどこか、見ていきたいと思います。

<対ユーザー>
Product(商品/サービス):

写真で気軽に引越しの見積もり、手配ができるサービス。
対応が大変な営業電話もない。

Price(価格):
相場より3〜4割程度安い価格。

Promotion(広告/広報):
広告プロモーションは未確認/ニュース系メディアへのプレス/SNSでの発信

Place(立地と店舗):
スマートフォン中心のwebサイト
<対引越し業者>
Product(商品/サービス):

引越しが確定した案件だけ紹介してくれるサービス(営業人件費の削減)。
空いている時間やスペースを有効活用してマネタイズできる。

Price(価格):
相場より3〜4割程度安い価格だが、アドオン。

Promotion(広告/広報):
広告プロモーションは未確認/ニュース系メディアへのプレス/口コミ・紹介

Place(立地と店舗):
東京都新宿区のオフィス/コーポレートサイト

このように整理できました。特にプロモーションに関して、引越し系サービスは激戦区なので、どのように顧客を獲得していくか、鍵になりそうです。


Hi!MOVEがグロースする上で課題になりそうなポイントは?

私が現時点の情報から考える、Hi!MOVEがグロースする上で課題になりそうなポイントは下記です。

【1】ユーザーの集客(サービスの普及)
・ターゲットユーザーがどこにいて、どのように効率的に集客するのか。
(シェアリングエコノミーがまだまだ一般的とは言えない中で、どのように集客していくのか)
【2】在庫の確保
・ユーザーの数に足りる在庫(引越し業者のトラックの空きスペースと時間)を確保できるのか。
【3】繁忙期以外の需要と供給
・繁忙期以外の時期にどのようにサービスを供給するのか。

特に【1】のユーザー集客は、他業者も含めて激戦区なため、課題になりそうです。

自分がHi!MOVEのマーケティング担当ならどうする?

では上で挙げたそれぞれの課題に対して、自分ならどう取り組んでいくのか、考えてみたいと思います。

【1】ユーザー集客について

サービスの特徴である、

・カメラで撮ってすぐ見積もりができるサービス
・予算はあまりないけど、時間的な余裕があるユーザーがターゲット

これらのポイントを考えると、
コアユーザーになりうるのは、10代後半〜20代の若年層ユーザーではないでしょうか。
また、この年代のユーザーであれば、新しいサービスに適応しやすく、シェア系サービスを使うことに対して、他の年代と比較して相対的に抵抗感が少ないはずです。
コアユーザーとしてある程度のボリュームを確保できれば、そこからSNSや口コミを利用して、シェアリングエコノミーを利用するハードルを下げてくれる役割を担ってくれるかもしれません。

また、Twitterで「引越し難民」で検索するとかなりのツイート数が出てきますし、「引越し 高い」などのツイートもかなり多いです。

よって通常のwebマーケ(SEO,SNS,Paidなど)は当たり前にやるとして、下記に注力します。

・ユーザーがユーザーを紹介してくれる仕組み(紹介キャンペーン的な)
・SNSでの企画×集客

これらをうまく活用すれば、シェアリングエコノミーを活用するユーザーのハードルも下げられるはずです。
また、ECサイトのようにユーザーレビューが可視化される仕組みも面白いかもしれません。

実績がある程度溜まってきたら、
10代後半〜20代の若年層が多い、学校(高校、専門、大学)や
不動産屋さんに、Hi!MOVEを紹介してもらうように営業を仕掛けてみたいですね(私が業界の実情をあまりわかってないのと、単価が相場より低く、紹介インセンティブが低そうなので難しいかもしれませんが…)。
まとめると下記です。

・webマーケはコツコツ
・ユーザーがユーザーを紹介してくれる仕組みを作る
・SNSでの企画×集客にトライ
・実績が溜まってきたらリアルで学校関係や不動産屋さんに営業で一気に拡大(実現可能性は不明)

【2】在庫の確保について

ユーザーの数が増える見込みが立ったら、次にネックになりそうなのが、
在庫の確保(いかに引越しトラックの空きスペースを用意しておくか)です。
私であれば下記の3点でアプローチします。

1.提携引越し業者拡大
2.トラックの空き時間をユーザーが見えるようにし、空いているところに発注してもらえる仕組み作り
3.ユーザーに候補時間を複数提示してもらい、引越し日間近で予定を確定させる仕組み

1は単純な在庫の総数を増やすアプローチで、営業力が重要です。
2,3は在庫を効率良く消化するためのアプローチで、ある程度時間に余裕があるユーザーであれば満足度に影響を与えず、利用してもらえるかなと思います。

【3】繁忙期以外の需要と供給
繁忙期であれば需要が多いので、シェアをする形で在庫を生み出し、サービスを供給するという形は理にかなっていますが、
閑散期はどうなのでしょうか。
ネット上のブログ記事などの情報を参照すると、
閑散期は繁忙期に比べ、価格が半分以下になることも多いようですね。
閑散期であってもサービスが成り立つ見込みであればいいのですが、
引越し業者の余るリソースが多い→シェアではなく買取の在庫しか確保できない→今までの低価格で提供できない
となってしまうと最悪ですね。
シェア用在庫が余るのは良いとしても、閑散期すぎてシェア用在庫がなくなる、という懸念です。

解決策のイメージとしては、

・(利用ユーザー数が多ければ)相乗りにしてサービスを維持する。
・引越し業者以外の空きリソースを活用することでサービスを維持する。(運搬業者とか買取業者とか)

でしょうか。杞憂であればいいのですが、繁忙期と閑散期の差が激しそうなので気になりますね。

以上、『引越しシェアリングサービス「Hi!MOVE」をどうやってグロースさせる?』でした。
また別のテーマで書きたいと思います。

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