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第4回 造成地と特撮と小田急線

今回は僕が子供の時、仮面ライダーの「中の人」にガムをもらった話。

 結論は、どんな形であれ文化に触れると現実的な対応力が増すよね。という事です。

 時あたかも1970年代前半。郊外ではニュータウンの建設ラッシュが、テレビでは子供向けの特撮番組が盛り上がっていた。特撮の中でも等身大ヒーローものは、僕の周囲では巨大ヒーローに少し押されつつも、二番手人気を誇っていた。

 そして正に10年計画のニュータウンの造成地の近所の団地に、僕は住んでいたのだった。何ならイナズマンは僕が住んでいた棟の前で子供たちを見守っていたし、団地から2つ目の十字路をライジン号が走り去ったし、風見志郎は造成地で敵のジープにロープで引きずられていた。V3!

 ちなみに団地から50mくらいのところに藤子・F・不二雄先生が住んでいたが、それはまた別の話。

 ある日の午後、僕は毎週水曜日の日課の習い事で、小田急線の各駅停車に乗って和泉多摩川に向かっていた。向ヶ丘遊園駅で急行の待ち合わせで止まっていた時に、そのお兄さんたち2人は乗って来た。そして言った。

「ボク、仮面ライダーは好き?」

 ボクが頷くと、痩せ型で眼鏡をかけたお兄さんは「実は僕ね、仮面ライダーの中に入ってるんだ。」と言った。

「信じないよなあ、そんな事言っても。」ともう一人のお兄さんと笑っていた。

 でもボクはもう、あの飛んだり空中で一回転したり、怪人にキックしたり戦闘員にチョップしたりしている姿を脳内で再生しており、処理が追いつかず口をパクパクしたり目を見開いたりしていたのだ。イー!

 「これあげる」と言って、お兄さんはジーンズのポケットからガムを出して、一つをボクにくれて、もう一つを自分で噛み始めた。向ヶ丘遊園駅で通過待ちをしていた急行、はホームの向かい側に来て、そして走り去った。

 ボクらが乗った各駅停車はノロノロと走り始めた。

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