■二種メンnote 003  家事メン・イクメンから二種メンへ

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■連載コラム:猿の子孫の家族論
第3回 
夫が残業にかこつけて酒飲んでるのと
妻のキッチンがコクピット化するのは
連動していると言っても過言ではないのだ

 梅雨に入ってから何回か雨が降りましたが、晴れ間も多いですね。空梅雨で水不足になるのも心配になってきますが、真夏になったらどうせゲリラ豪雨と台風で何とか帳尻が合うでしょう。怖いですね、温暖化って。

 マクラ代わりにそんなことを書いていたら、データセンターでサーバーが発する熱やら冷却用の電力でCO2が増えたりしてないの? とか気になったのでちょっくら検索してみました。総務省が2011年に出した報告書だと、2000年に比べて2010年はネットワークやサーバ類で50.6%、端末関係で59.2%の増加。結果として600万tの排出CO2の増加があったそうです。合計して1720tの排出。

 でも、ITによる環境負荷低減効果で2680万tの削減に貢献したそうです。火力発電所10.6基分/年の排出量くらい減ったと。行って帰って減ってるならちょっと安心ですね。全体的には2%の貢献なんだそうですけど。どんだけ排出してんだ人類。

「地球温暖化問題とICT 総務省情報通信政策局 情報流通高度化推進室」平成19年(2011年)9月26日版
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/chousa/ict_globalwarming/pdf/070926_2_si1-3.pdf

 何というか、数年前にヨーロッパの酸性雨が問題になった時の「日本だと酸性の雲とアルカリ性の雲が上空で中和して、結果として中性」みたいな話を聞いて、複雑な気持ちになったのを思い出しました。方向性はずいぶん違いますけども。


 そんなことより兼業主夫の話ですよ。1回目に書いた兼業主夫になる上で躊躇は無かったか、という話の続きから書きます。まるっきり「無かった」か? と言えば嘘になります。そりゃ堀井雄二さんや坂口博信さんみたいなゲーム界のスーパースターになってヒットを連発するのだ! みたいな夢は見ます。しかしですよ、当の堀井さんや坂口さんがプールとヘリポート付きの大豪邸に住んでいるか、というとそういう訳でもない。ないどころかあの方々でさえドラクエ、FF以外にトリプルAクラスのヒット作を何作も作ってるわけではありません。まあマンションを数個持ってるのかもですが、知らんけど(笑)。

 そんな業界の中にあって、僕もあれやこれや業界や社会の動向を目を皿のようにして調べたり知恵を絞ったりしてポジションを確保しようと踏ん張ってはみたものの、コンテンツ業界というところはモロに社会や景気の影響を受け易く、かつ集団的な業態でもあり、給料が上がらないうちに時間切れになった、というところですね僕の場合は。「世帯収入」という観点で見た時に、妻の言う通り僕の方の仕事を縮小した方が家族の幸せになる、ということが明白だったんです。それに何より、共働きで遅くまで働いていると、子供らにしわ寄せが行きますから、かわいそうですからね。

 まあいくつかのヒット作にも関われたし、最後の最後にビッグプロジェクトに参加できたので、「ある程度満足の行くキャリアだった」。という感じに「気が済んだ」という部分もあると思います。前々から妻には「55歳で定年を迎えるつもりでいてもいいよ」とは言われていたので、ある程度心構えが出来ていたのも大きいと思います。


 さて、僕の話はともかく男性の描く夢というのは「いつかビッグになってやる」とか「好きなジャンルでナンバー1になってやる」みたいなところはあると思います。「オンリー1になればいい」とか言いますけど、それですら「ニッチなジャンルでもいいからナンバー1」みたいな読み替えである可能性は高い。

 その夢を縮小して行ったとして、社内で昇進とか昇給とか賞与多くしたい、みたいなところに着地することはまあ、多い訳です。さらに矮小化すると社内評価上げたいみたいなね。それが具体的な行動に微分されると何が起こるか。「どんな小さな商機も見逃さない」とか「一攫千金につながる、まだ誰も気が付いていないピンポイントの金脈はどこだ。」という行動につながる訳です。目を皿のようにして、まだ見ぬ金脈を探しまくる訳です。それが情報を洪水のように浴びてみたり、散歩中に見た風景のふとした違和感に注目したり、モヤモヤして言語化できる前の気分を維持したままウンウン考えるみたいな行動ですね。

 コンテンツ制作の現場が長かったので、こうした「すげえ観察する」「モヤモヤし続ける」「ウンウン唸りながら考える」みたいなことは呼吸するようにやる訳です。話しかけられても気が付かないとか、約束を忘れちゃうとか、いきなり「うるさいッ!」とか言い出すオジサンはこうした職業病にとり憑かれています。

 こういうメンタルながんばりの他にあるのが、営業パーソンにありがちな「太い客に逆らわない」「細い客も逃がさない」「客の信頼を得るために何でも」する、というフィジカル全方位外交です。雑務に近いような事を手伝ったり、やたら飲みに行ったりですね。

 メンタルもフィジカルも全部やったら、確実にいつか入院するんですけども。

 こうした「男性が描きがちな夢」と「仕事を頑張り過ぎるパーソン」は、遡れば類人猿が持っていた自然の一部としての本能に行きつくとは思うのですが、前頭葉が発達し過ぎた人類にあっては、本能が自然の一環として機能などしておらず、モヤモヤとした衝動としてドライブしてしまう訳です。その辺の話は別マガジン「猿の子孫の惑星で」をお読みいただけばいいと思うので割愛します。

 さて、家庭不和の原因というか、夫婦喧嘩の原因として、星の数ほど発生するのがアレです。「家事をもっと手伝ってよ!」「ハア?! 俺は外で仕事頑張って疲れてんだよ!」

以下
ルートA「専業主婦だろ!」
ルートB「私だってパート行って疲れてるのよ!」「高が知れんだろ!」
に分岐。

 ルートAの続きは、「だったらテメエがぐうの音も出ないほどやってやる」と女性が意地になって家事を奮闘。家庭内の収納は要塞化し、キッチンがコクピット化します。全ては女性主導によるユニバースと化し、ルールは開示されなくなります。絶対に妻/お母さん以外の誰も、何がどこにあるか分からなくなります。「手伝おうか?」なんて言った日には、「勝手に触らないで!」と怒号が飛びます。

 そして男性は意地になって、「外の仕事」を奮闘。商談だ情報交換だと飛び回り帰宅は遅くなり、やがて身体を壊す。

ルートB
「だったらもっと稼いでやる」とより時給の良い仕事を探す、家庭が荒廃する。起業する、男性より稼ぎがよくなる。男性はより多く稼がなくてはとプレッシャーになり、さらに意地になって「外の仕事」に邁進、疲弊して注意散漫となり事故に遭ったり、やっぱり身体壊して倒れたりする。

 そしてどうなるか? 「稼ぐ稼ぐ言って稼がないじゃん」つって離婚。「全人格を否定されてまで夫婦でいる必要なんかない」つって離婚。DVに発展して離婚。女性が子供連れてったり連れて行かなかったり別居して離婚。離婚。離婚。離婚。


好きで一緒になったんでしょ、そんな地獄みたいな人生になったらもったいないじゃないですか。

 結婚は建設的な雰囲気も手伝って周囲の応援とかもありますから、それなりに勢いに乗って達成できますけど、離婚するとなると、決裂した人間同士ですから、交渉と調整と合意と手続きを全部一人でやらなくちゃならないんです、「外の仕事」をきちんとこなした上で。そらあしんどいですよ。起業する時は仲間やら支援者がいるけど、倒産して整理する時は一人、みたいな事を想像してみてください、それおんなじ。
 
 兼業主夫になった僕の目線から言えることは「男性が家事ができなくなるほど『外の仕事』を頑張っちゃダメ」だってことです。ちょっと前の流行語で「クオリティ オブ ライフ」なんて言葉がありましたが、家事分担で離婚にまで発展したとしたら、何クオリティだって話です。

 だったら、「結婚とは家族の形成と家庭の運営である」という原点に立ち返って、幸福な家庭の構築を頑張った方が建設的なんじゃないでしょうか。まして今や一部の大企業を除いて、男性一人の給料で家族全員を養うことなんて、少なくとも向こう20年は少なくともできない時代に入ったんですから。

何故「向こう20年」かいうと、現在は海外市場の売上まで視野に入れた業態に転換しないと、企業は立ち行かなくなるからです(トヨタだってカプコンだって、主な稼ぎは海外市場です)。全ての日本企業が明日その施策を実行したとして、そのシフトが完了するまで少なくとも20年はかかるということですね。その辺の話はビジネスニュースサイトに詳しいのでここでは割愛します。

離婚に至らなかった例でも、以前務めていた職場で気の毒な人を見かけました。年齢はけっこう行ってるものの、ポジションとしては低からぬ「◎◎長」で、組織内でも一目置かれている方だったのです。が、実務の詳細が判らないので常に抽象的なオーダーばかり言って現場を振り回す、意味なく休日出勤して何をするでもなくブラブラしてまたた出ていく、目的なく職員やら出入りのフリーランスの人を誘って遅くまで酒を飲んで、寝ちゃう(笑)。

「何故この人はこうなのだ?」と思ってつぶさに行動を観察していたのですが、どうやら「男は外で仕事、妻は家事、子育ても不参加。」をナチュラルにやっていたらしく、土日祝日でも家庭に居場所が無かったみたいで、職場でイベントをやってるのでつい来てしまっていたようです。というか、家をないがしろにして50年近く経ってたら、そら居場所も何も、ねえ。70歳近かったから、世代バイアスは当然あるでしょうけども、時代の変化にまったく頓着が無いというはすごいことだなと思いました。


 残業をいくらやったからと言って、業態の根っこの発想がダメなら生産性が下がるだけなので、仕事はそこそこ頑張って、家族が仲良くて家庭も笑いが絶えないっていうことの方が、QOLとしてはいい仕上がりになるんじゃないでしょうか。それを阻害するような企業こそが「ブラック企業」という扱いになる世の中になるといいなあと思います。

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■今週の家事スキルのためのTIPS
・機械的な家事は機械にやらせて、空いた時間で「手の仕事」を。
 仕事を経験してる人なら知っていると思いますが、①「他のメンバーがやってくれる業務」と②「実際に自分が手を動かしてやる業務」がありますよね。先に①のコミュニケーションと調整を進めて、メンバーが自律的にやってくれるのに任せますよね、その後②に着手すれば、思うさま作業に没頭できるし、効率も上がるというものです。

 家事も同じです。洗濯機や食洗機がやってくれる作業の仕込みをやってしまってから、自分が手でやる家事に移る。機械が勝手にやってくれる間に他の家事をやれば、圧倒的に家事は効率化されます。乾いた洗濯ものを畳んだりしまったり、食洗機対応してない食器を洗ったり、掃除したりなど。というのが正しい「男性の家事」なんじゃないでしょうか。「機械やAIに奪われる家事」だったら、大歓迎ですよね。コストさえ安ければ。


・牛乳パックをまな板代わりに使う
 妻の発案ではありますが、うちではいつからか牛乳の1リットルパックをまな板の代わりに使うようになりました。飲み終わった牛乳パックを水で洗って、開いて使います。まな板って、やれ傷がついたり、ニオイが~、殺菌が~などなど、けっこうメンテナンスに手間がかかるじゃないですか。
 
 そりゃ使ってるうちに傷もつきますけどコーヒーや紅茶に牛乳を入れて日々飲むもんですから、新しいまな板の供給には事欠きません(笑)。使い終わったものは、牛乳パックのリサイクルに出します。肉だ魚だと使い分けたい人は、2枚使ったらいいんじゃないかな。


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■今週の初心者向け家事TIPS
・油を使ったフライパンは、他の洗い物と一緒に流しに入れないで後回しにすること。全部油まみれになって、大変な手間になるぞ~! だいいち滑るしな。


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■おたよりコーナー
まだ2回くらいしか書いてないので、何の便りもありません。今回も想定QAでもやりましょう。

Q:主たる稼ぎ手から退いた感じはどうですか?

A:コンテンツ業界の競争環境が年々厳しくなって行く上に、加齢のせいもあって「この先仕事無くなるんじゃ?」とドキドキしながら働いてはいたので、「稼ぐプレッシャー」から解放されたような気分になってた頃もありました。もう「大ヒット出して一発逆転」とか、あり得ない妄想に向かうこともありませんし。


Q:昔から家事は得意だったんですか?

A:「とても得意」ということでもありませんが、小学校3年生くらいの頃から家にあった「家庭で作る洋菓子」みたいな本を見てたら小麦粉でケーキが焼けることを知って、ジュラルミンの弁当箱でケーキ台を焼いてみたり、ゼラチンでゼリーを作ったりするような子供ではありました。科学の実験みたいで楽しかったですね。そこからすればインスタントラーメンなんて粉ジュースとの違いは温度だけじゃん、みたいな感じにはなりました。

チャーハンに入れたニンジンに、ちゃんと火が通るようになるには5年生くらいまでかかりましたが(笑)。お腹が空いて買い置きのおやつが無い時なんかは、薄力粉でお好み焼きまがいのものを作って食べたりしてました。

中学に上がった頃だったかな、両親が共働きになったのと3人兄弟の長男だったので、母が仕事の時は土曜日とか夏休みには、弟たちの昼食なんかも作ってました。分量を間違って3人分なのにパスタを1キロ茹でてしまったりしたのは、今ではいい思い出です(笑)。

風呂掃除と掃除機をかける以外の掃除をやるようになったのは、結婚してからです。


Q:カップ焼きそばと生焼きそばを焼くのと、どっちが得意ですか?

A:どっちも得意ですが、室内ならカップ焼きそば、屋外なら生焼きそばから焼くのが好きです。

Q:カップ焼きそばの湯切りで麺がドバッ! ってなったことはありますか?

A:正直なところ「麺だばぁ」の経験は一度もありません。指をヤケドしたことはあります。

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このマガジンについて:今や全国平均で48.8%を占めるまでになった共働き世帯の中で、主に「男の家事力」を上げたり、家事の時短に役立つ情報などを共有しようと思ってます。そりゃ世の中思い通りに行くわけないってことはさすがのオレも百も承知だけどよ、せっかくのゲームプランナーだ。知恵を使って面白がって生きようって事をなあ、さっき自問自答の上、結論しました。

■編集人:浅野正蔵(あさの・まさぞう) ゲームクリエーターからジョブチェンジした第二種兼業主夫兼ボンクラ。現在はゲームやゲーム以外のプランナー業やら客先常駐などで日中なるべく8時間くらい働く。上には上が居る世界で上ばかり見てたら首が疲れたので、前を向くことに。


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