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グララバッグ(製作:2017/3月)



〈旧瑞穂競技場にて・鉢巻き姿も可愛いグララ〉

 

マスコットバッグ第一号

 名古屋グランパス(サッカー・jリーグ)の公式マスコット「グランパスくんファミリー」。グランパスくん(父)・グランパコちゃん(母)・グランパスくんJr.(息子)・グララ(娘)の四シャチ家族で、それぞれ独特の魅力があって個性豊かなので、名古屋サポーター以外の人達にも人気の一家です。
彼らの詳しいプロフィールはこちら→https://nagoya-grampus.jp/fan/mascot/


 今回はグランパスくんの愛娘・グララのバッグを作った時の様子をざっくりですがご紹介。
 
 このグララバッグは自分にとって、記念すべきマスコットバッグ第一号として今も特別な思い入れがあります。
 というのも、自分はこれを作る数年前から趣味で本革バッグの製作をしていたんですが、当時はまだ今作のようなキャラクターものは作ったことはなかったんですね。
 その一方でグランパスの試合にも並行して観に行っていたのですが、スタジアムでグランパスくん一家がファンから色々とお土産をもらっても、それを入れておくものを持っていないので折角受け取ってもすぐ、お付きのアテンドさんに預けることになるという光景をよく目にしていました。
 その光景から自分は、「グランパスくん達もマイバッグとかあれば、お土産も直接持っていられて便利じゃないのかな」と思うようになり、そこから更に「グララがこういうバッグを持ってたら、きっと可愛いだろうな」とバッグのアイデアが浮かんだのです。

大好きなグララのために

 元々グランパスくん一家の中でも特にグララが大好きな自分は早速、どうせ作るならお誕生日プレゼントとして贈ろうと考え、彼女の誕生日(3/22)に近い試合で渡せるよう日程に気を配りながら2016年冬、製作を開始。
 今作の場合、バッグの形とデザインについては最初に頭の中でアイデアが浮かんだ時点で大体決まっていたので、そこから具体的なサイズを決めてデザイン原画の描き起こしと、各パーツの型紙作りを始めました。
 
 まずバッグ本体の形ですが、グララの丸っこくて可愛い姿と女の子らしさを表現するには、バッグ自体も丸い方がいいと判断し、円形に決定。サイズは彼女が実際に持っている姿を想像してみて、このくらいが丁度良さそうと思った大きさ(直径22cm)にしました。
 デザインの方は、グララ自身がシンプルなフォルムなのでバッグの前側もシンプルに”顔のどアップ”。バッグ後ろ側も、彼女の後ろ姿になぞらえてトレードマークである”お尻のハート”にして、でっかく配置することにしました。

 人によって方法は違いますが、自分はデザイン原画は一般向け・マスコット系を問わず全て手描きしています。今作ですと左右対称の正円なので、デザイン画はどちらか半面だけ描けばもう半面は反転・トレースするだけで済むため、まともに描き込んであるのは半面のみ(①と②)。
 

①デザイン原画・正面
②デザイン原画・後ろハート

 そこから更に、トレーシングペーパーにも原画を書き写します。何故かというと、このトレース版は後で顔などの各パーツ革を縫い付ける際に、付け位置を原画通り正確に合わせるために欠かせないからですね(③)。

③上記①のトレース版(透けているので下に白い紙を敷いてあります)

 トレース版もできたら、厚紙で製作に必要なぶんの型紙をそれぞれ作っていきます。バッグ本体の正面・後ろ面は作る上で土台となる部分なので、実寸通りの「元型」の他、縫い代やポケットの位置合わせの印を付け足した「裁断型」の2種類を用意(④)。

④バッグ正面及び裏面の型紙(左が元型、右が裁断型)

 バッグ横のマチの型紙は、④の裁断型を使って定規を作り、この定規で正確な長さを割り出して作成します。今作のような円形の場合、このマチの採寸を間違えるとバッグ正面・後ろ面と合わせた時にズレが生じてやり直しになるので慎重に。

⑤定規(上)とバッグのマチの型紙(下)
※マチ幅は10cmに設定

 バッグ本体の型紙ができたら、後は顔など細かい部分のパーツの型紙も作っていきます。グララの場合は以下⑥の通り。
 彼女の睫毛のところは原画より太くなっていますが、これは縫い止める際に縫える最小の幅が6mm(これ以上細くしたら縫えない)なので、縫えるギリギリの6mmに修正した結果ですね。

⑥お尻のハート・顔部分の細かいパーツの型紙

 型紙ができたら、これらを使って革と裏地を裁断していきパーツ毎に縫い合わせます。
 革に裏地を付ける際はどちらか一方に両面テープを貼って仮止めしてから縫い合わせるのですが、上記⑥のように他の革の上に直接縫い付けるものについては、裏地不要なので各パーツ革の裏面に両面テープを貼り、土台となる革に仮止めしてから縫い止めていきます。
 今作でいうと土台の赤い革の上に、顔の各パーツ革を縫う順番に沿って仮止めして本縫いに入るわけですが、ここで欠かせないのが上記③のトレース版原画。特に顔のところは原画通り正確に合わせるため、赤い革の上に③を乗せた状態で、③の下に各パーツ革をくぐらせて原画通りの位置に革を合わせて仮止めし、縫っていきます。
 このやり方でのパーツ革付けはハッキリ言って手間ですが、革そのものに極力、余計な傷を付けずに作業できるので個人的にはやりやすいですね。  
 他の付け方としては土台となる革に直接、銀ペンで印を描いたり目打ちで付け位置としての点を打つというのがありますが、本革によっては銀ペンで描いた線を消しゴムで消す際に革の色が薄れてしまったり、中には一度描いたら消せない材質のものもあります。
 また、目打ちなどで打った点も、一度付いてしまった点の凹みは元の平らな状態に戻しにくい事が多いため、もし打ち間違えてしまったら、場所によっては”不自然な点”として表から見えてしまう事に・・。なので自分の場合、手間はかかっても安全策として上記のやり方で作っています。

バッグの完成と全体図

 こうした細かい部分も含めて各パーツの縫製を進めていき、完成したのがこちら(↓)。
 まずはバッグ正面、シンプルに”顔のどアップ”。睫毛は作業のため原画より太くなりましたが、結果的にグララのトレードマークとして強調できたように思います。

⑦バッグ本体・正面

 バッグ後ろ側はグララのもう一つのトレードマークである”お尻のハート”。これはスリットポケットになっていて、紙のような薄手のものなら一応、入れられるようにはなっています。
 上記の原画もそうですが、実際に身に付けると隠れて見れない部分なので、このブログで初めて後ろ側のデザインを知ったという人もいるかも?
 
 なお、元々ショルダーバッグとして作ったのでショルダーストラップもちゃんと作ってありますが、画像では撮影しやすいようにハンドストラップの方のみとなっています。
 ハンドストラップは本体と同じ本革で作った一方、ショルダーストラップは軽くて柔らかいアクリルテープで仕立てました。実際にバッグを身につけて動き回るとなると、アクリルテープの方が負担が掛かりにくいと判断しての事です。

⑧バッグ後ろ面

 横側(マチ)を見ると分かるように、バッグの開閉はファスナー式。引手のところには持ちやすいようにハートのストラップも付けました。このストラップもパーツだけ買ってきて、レジンで形を固めて手作りしたものです。
 

⑨バッグ横・マチとハートのストラップ

 裏地はグララの大好きなイチゴの柄で、内ポケットも1つ付けてあります。イチゴ柄といっても色々な生地があるので買う時は迷いましたが、特にグララの雰囲気に合っていそうなものを選びました。

⑩バッグの中・裏地と内ポケット

グララの反応は・・・

 そしていよいよバッグを贈る当日、自分は普段の観戦の時と同様にグランパスくん一家のグリーティングの時間に合わせてスタジアムに到着。この日はグララのお誕生日が近いこともあって、グララも特製の帽子をかぶってお出迎えしてくれました。
 果たして喜んでくれるのか不安いっぱいでしたが、意を決して渡したらすごく喜んでくれて、心底ホッとしたのを覚えています。このあと試合のハーフタイムで早速、ショルダーバッグとして身につけてくれていて感激し、更にグランパスくんの公式SNSでも、この時のことを取り上げてくれたのには驚きましたが嬉しくもありましたね。

⑪バッグを贈った直後の様子

 その後の試合でもグララはよくバッグを身につけてくれるようになり、あちこちでバッグ可愛いねと言われて喜ぶ姿が見られるようになりました。
 この当時はよほど気に入ってくれたのか、試合以外の地域イベントに出るときでもバッグを持っている事は多かったようですね。

⑫バッグをアピールしてくれたグララ

 それから翌年以降のシーズンでも引き続きバッグを使ってくれていて、時には下記⑬のようにちょっとした宣伝にバッグを利用することも。

 ただ、コロナ禍でグランパスくん一家の活動も大きく制限されるようになったのを境に、今ではバッグを使う姿もめっきり見なくなりました。特に感染抑止のため、厳戒態勢で試合を行っていた時期はそもそもグランパスくん一家のグリーティング自体が中止になっていましたから、その流れで後に観戦規制が緩和されても結局、バッグを使わなくなったとしても仕方がないのでしょう。

⑬ファンクラブのキッズコースを宣伝中のグララ

 とはいえ自分としては元々作ってみたくて作り、予定通りグララに贈れてしかも、凄く喜んでもらえたという事実が何より嬉しいので、今もなお特別な思い入れのあるバッグであることに変わりはありません。
 ”自分に出来る形で大好きなグララのお誕生日をお祝いしたい”という思いもあって作ったので、その結果が予想以上に良かったからこそ、今作はこの後も引き続きマスコットバッグを作っていくきっかけになったといえます。

 ・・もっとも、実はこのグララバッグを贈った時点ではまだ、グランパスくん一家全員分のバッグを作ろうとは思っていませんでした。無事にグララに贈れた!という達成感だけでもう充分、満足していたからです。
 それが何故、他の家族のバッグも作っていくことになったのかは・・次作となるグランパコちゃんバッグの回から分かるかと思います。

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