「芸人前夜」を読んで

「あなたは絶対にオリエンタルラジオ好きだと思うよ」

小学校高学年ごろから人並みにそれなりにお笑いが好き。
ゆるく浅いミーハーオタクとしてまさに絶好調だった頃だ。
しずるが好き。フルーツポンチが好き。はんにゃも好き。レッドシアター、良い番組だったよなあ。はねるのトびら、笑う犬、レッドシアター、毎週録画。ドラマのあとはエンタの神様。
好きな男性のタイプ、オードリー若林。いや、これは今でもずっとなんだけど。どメンクイだし顔がもっと良い男はいっぱいいるけどフォルム顔性格全部どストライク。いつか若様の隣で一般女性として交際を報道される日を夢見て早10年。もしこの記事をお読みの若林正恭さまがいらっしゃいましたらDMでご連絡ください。

オリエンタルラジオ?ああ、普通に好き。メガネの方チャラいよねw慎吾?だっけ。正直「アッちゃんかっこぅぃー!」って言ってる人のがカッコよくない?くらいの認識。
そんなゆるーく浅ーいお笑い期を経て、サッカーゲームにハマり、音楽ゲームにハマり、その間もずっとハマっていたアイドルに対する熱量が上がり、いつの間にか当時の自担より若い男の子に執心し、はたまたいつのまにか今度は自分より若い女の子にキンブレを振るようになり、今では小学生の女の子を親目線で見るような立派なアイドルオタクになってしまった。
お笑い芸人?ブルゾンちえみしかわかんない。あ、ブリリアンは可愛いよね。わたしは黒い方が好きかな。

きっかけは何だったか。
RADIO FISHと自担のコラボか、いや、きっともっと前だ。確か、慎吾ちゃんととある女芸人さん(名前失念)が二人暮らしするというバラエティ。真面目すぎるが故に些細な失敗のたびに自己嫌悪に陥りがちな彼女を見て、「だったらこうすればいいんじゃない?」「俺はこれ好きだけどなあ」などと即座にフォロー出来る藤森慎吾かっけえと武勇伝ネタばりに賞賛を飛ばした時か。(追記:横澤夏子さん)

いやいや、Twitterだ。確か、Twitter。
https://twitter.com/chara317megane/status/928613335070785537

長すぎる直筆メッセージ入りの中田氏の著書の隣には藤森氏がちゃんと実費購入したものが一冊。
いやいや、仲良すぎるでしょ。結成何年目だよ。
サイン入りの著書を渡す:わかる
メンバーが自費購入してる:わかる
自らの著書に相方のいいところを重すぎる手紙が如く長々と書き綴り、ハートで隠されてはいるものの「これからも数え切れない夢(不明)を共に叶えていきましょう」で締める:お、おう.....?

そして冒頭の言葉を受けるに至るのであった。

自分がよくわからなくなって明らかに自らの許容範囲以上のアルコールを摂取し新宿ど真ん中で号泣したクリスマスイブイブ。そのまま人んちに転がり込んで(つくづく迷惑な人間だ)、HIGH&LOWを見せられるという荒療治のおかげかけろっとしている私に「そういえば、」と手渡されたのが中田敦彦氏の「芸人前夜」だった。
いやいや、「天才の証明」じゃないんかい。とりあえず一作目からということで。
60ページから61ページがすごくいいらしい。 (追記2:170-171ページでした。そしてその箇所を読み返したら良すぎて辛すぎてまた泣いた)

ところが、だ。読もう読もうと思ってなんかすっかり忘れてた、いや、忘れてない、けどそれ以外にやることが多すぎた。師走だし。うん。
で、12月もあと2日で終わるぞ、という30日に思い出して、帰省の荷物に詰めて来たが結局年内には読めなかったので、2018年の読書始めとしてこの作品を開いたという次第である。

前置きが長くなった。

そうだ、最初に断っておかねばならないことがある。わたしはこの本を読んで脳髄が破壊されたようなそんなふわふわした心地でこの文を書いている。故に、支離滅裂な上に解釈が公式見解と異なる場合があるがどうか見逃して欲しい。彼らのファンの皆様及びご本人、関係者様がたには最初に謝罪しておきたいと思います。

結論からいうと、「あーーー!!オリエンタルラジオ.....すき.............,,」とため息と奇声を漏らすことしかできない。ええ、嘘でしょう。嘘と言ってくれ。こんなのが実在されてたら困る。しかもビジュアル知ってる状態で読んでるから、「ええ、この2人が.....はあ......」とただただ感嘆するばかりなのである。困った.......。
実在する2人にしてはあまりにドラマティックで物語的すぎるのだ。

【僕は石油王(詳細は省くが初対面の藤森氏は頭にターバンを巻いていた)の出で立ちの次にその瞳に興味を持った。日本人らしからぬ薄くブラウンなその瞳。あ、これはもしかしたら見つけたのかもしれないと思った。
「よう。目が茶色いね。ハーフ?」
(「芸人前夜」41p)】

瞳を!見て!「見つけたのかもしれないと思った」!
いやいや!?お前が石油王かよ!??
私は石油王に見初められることを時々夢想するのだが、5回に1回くらいは石油王は私をこうやって口説く。
「瞳が綺麗ですね」

瞳!はあ!瞳ねえ!綺麗ねえ!
瞳が綺麗で話しかけるという発想。行動力。うう、これはやっぱり石油王か少女漫画だ。

断っておくが、著者が探していたのは恋人や友人、運命の相手(まあ、運命の相手はあながち間違ってないが)ではなく「漫才の相方」だ。
極彩色のタンクトップを2枚重ねに紐で縛ったサルエルパンツ、大量のピアス、メリケンサックが如き指輪にターバンという出で立ちではなく「瞳」を見て興味を持ったという。
ええ.......まじか..........

そしてその2人はその会話の後、2人でバイクに乗って新宿に映画を観に行った。

!?
急展開すぎるじゃん、待ってねえ、待って。オタクだから待ってしか言えません。さてここで問題です。わたしはここまでで何度「待って」と言ったでしょう。
待って待って言ってる間に随分と仲良くなった2人は夜中はバイトをし、朝方家に帰ってきたアッちゃんは昼過ぎに家に来る慎吾ちゃんのバイク音で目を覚まし、夜中のバイトの時間まで2人でずっとボンバーマンをするような日々を送っていた。待って。

相方を探していたあっちゃんが石油王的誘い文句で慎吾ちゃんをあの手この手で説き伏せて今のオリエンタルラジオに至ると思うでしょ!?ブッブー!
正解は!!
「あっちゃんが学園祭で披露した漫才のVHSを見た慎吾ちゃんが"天才!"と熱を上げ、断るあっちゃんをに何度も何度もしつこく『漫才やろう!』と食い下がったから」でしたーー!
いや待って。
そんな漫画みたいな展開あっていいわけないじゃん。
本気で漫才やりたくて「漫才で食ってく覚悟のあるやつ」を探していた拗らせ主人公に「天才!天才!」と捧心してくる漫才のマの時も知らないリア充男子。主人公はその熱意に折れてコンビを組む。
人生そんなに上手く行って良いはずがないじゃん。

とにかくテレビに出たかった。
お笑いのことは何もわからないけれど、この人とならテレビに出れると思った。

とにかくお笑い芸人になりたかった。
だから「お笑いで食っていく覚悟がある」奴だけを探していた。
瞳を見ただけで「見つけたのかもしれないと思った」ソイツは、「お前なら売れる」と手放しで称賛してくる。

「俺に人生賭けんのか」
(中略)
「…わかったよ。本気でやる」

「賭けるんだな」
「賭けるよ」

ああ、物語のプロローグはなんて美しいのだろうか。

その後ふたりはなんだかんだ上手くいってしまう。藤森氏がいったように「売れる」存在だったのだ。

そんなんだから中田氏はまた「自分は天才だ」「他のやつと違う」と自意識スパイラルに陥るわけですが、今までとは違うのが、「そこに藤森慎吾がいること」なんですよね……

自意識スパイラル中田は人付き合いがまーーヘッタクソなんですけど、そんなアッちゃんも見捨てず、アッちゃんが切り捨てた他の連中とも上手く仲良くやってる藤森慎吾コミュ鬼かよ……

アッちゃんはアッちゃんで自意識こじらせスパイラルお前はどこぞの6つ子の緑色かよってくらい自意識浮遊してるんですけど、この人「頭がいい」んですよ。いや、「頭が良すぎる」。
賢すぎる。
この本も文が読みやすくて、演出もドラマティックなので自伝というよりは「小説」的。活字を目で追いながらも脳内には映像で変換されて入ってくる。(だからアッちゃん目線の慎吾ちゃんはあまりに「可愛い生き物」すぎて脳内映像に戸惑っている自分がいる)
頭が良すぎて頭が悪い人のことを理解できないし、理解できないからこそ見下しているというか、見下しながらもやっぱりその遥か上のことができちゃう人だから「売れる」コンテンツを連発できる。
「頭が良く」て、「糞真面目」で「面白いもの」の仕組みがわかってるからこそ「面白い」し、どんなに自意識こじらせてようがそんな中田敦彦に藤森慎吾は忠犬が如くついていくのだなあとしみじみ。
中田敦彦はPDCAをきちんと回せる方の人だし、勝ち戦しか挑まない。
勝ち戦しか挑まないアッちゃんが慎吾ちゃんの勧めでボツネタだったものを披露して大ブレイクしたのがあの「武勇伝」なんだからなるべくしてコンビになったふたりです。

200ページ。鳥肌が立った。
だから何度も言ってるじゃん、人生こんなに美しくていいわけがないじゃんって。
この美しい真っ白なキャンパスのような2人にぐちゃぐちゃの汚い絵の具が無造作に叩きつけられても、何度でも清く真っ白に、そして誰もが賞賛する絵を描き続けることができるという象徴のようなシーンだ。
映画だったらここで消音でセリフを言い合った後に壮大なBGMが流れはじめる。いわゆる泣き所。泣くというよりはエモーショナルすぎて胸が熱くなる、なんてそんな。
このシーンで「ああ、わたしオリエンタルラジオ好きだわ」と確信した。わたしの負けだよ。
出会うべくして出会った2人だ。歯車ががっちり噛み合って、パズルの最後のピースはお互いの手によって嵌められたのだ。

(あと、ここのシーンに登場するのは私が割とよく利用する場所なのですが、情景描写が上手すぎるんだ、これが。)

正月早々245ページ読み切った結果「待って」しか言えなくなってしまった。待ってタルト崩壊。待ってほしい、嘘だといってほしい....まって.....?
録画してあったRADIOFISHの映像見るだけで泣けるし、武勇伝ネタに至っては大号泣なのどう考えても:残念ながら手遅れです。
正直長々と文にはしたものの正直な気持ち「😭😭😭🙏😂🙏🙏😂😂😂🙏👬🕺👓🕶🙏🙏🙏🙏🙏🙏😭😭😭😭」って感じなので完全に脳髄やられた。こんな賢い文章読んでここまで破壊されてるの恐ろしすぎる。もっと賢い感想が書きたかったよね.....?
ところで、オリエンタルラジオが気になるのですが次に何を見ればいいのでしょうか。

どうしても言いたいが明らかにネタバレなのでこの先注意

①木更津キャッツアイにハマる2人。
バイクに二人乗りしながら木更津キャッツアイのテーマを歌うのですが、アッちゃんが「きーさーらーづ!」の方で慎吾ちゃんが「にゃーにゃーにゃー!」の方なの死ぬほど尊くない.........................?
【「きーさーらーづっ!」
僕が叫ぶと慎吾はにゃにゃにゃにゃ言いだした。」】

にゃにゃにゃにゃ.........................

バイク二人乗りして寝たら危ないから眠くなったら2人で歌おう、というルールがまず待ってポイントですよね.........?

②アッちゃんがこっぴどく振られた時、女の子に未練タラタラなアッちゃんに「可愛いだけでつまんなかったし」と代弁する慎吾ちゃん。かわいいね。

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