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キンクス「ヴィレッジ・グリーン」

キンクスが大好きだという人に、出会ったことがない。音楽好きの友人、知人はいっぱいいるはずなのにだ。きっと「ユー・リアリー・ガット・ミー」くらいしか知らないんだろう。残念だ。かわいそうなバンド、それがキンクス。

1964年にデビューして、1990年代くらいまではコンスタントに活動していたイギリスの大御所バンドである。ビートルズのようなスター性はなく、ローリング・ストーンズのようにスキャンダラスなイメージもない。ザ・フーのようにロックファンに語られるような要素も少ないし、グラムだ、ハードロックだと、特定のジャンルに偏っているわけでもない。なんとも地味なバンド、それがキンクス。

デビューしてすぐに「ユー・リアリー・ガット・ミー」がヒット。かっこいいリフのギターサウンドなんだけど、そのスタイルはデビュー当初だけなんですよねぇ。

むしろ本質はクセになるメロディーなんです、このキンクスは。ズバリ黄金期は60年代後半。66年の5枚目のアルバム「フェイス・トゥ・フェイス」あたりからキンクスらしさがはじまり、67年の「サムシング・エルス」、いい感じです。

ところがセールス的には下降線だったらしいですね。そこへ輪をかけてトータルアルバム3連発。68年「ヴィレッジ・グリーン・プリザベーション・ソサエティ」、69年「アーサー、もしくは大英帝国の衰退ならびに滅亡」、70年「ローラ対パワーマン、マネーゴーラウンド組第1回戦」。

サウンドはややアコースティックになり、どれも素晴らしいアルバムです。ところが全く売れなかったらしいです。ん〜、まずタイトルがどれも支離滅裂。レコード屋に行ってタイトル言えないだろ、コレ。サウンドも時代を切り開くような斬新さはないかもしれない。ストーリー仕立ての歌詞も難解で、わかりづらいらしい。でも、でも、素晴らしいアルバムなんです。バンドとしては低迷期なのに作品としては最高という、、、。

その後キンクスはマーケットをアメリカに移して、「マスウェル・ヒルビリーズ」、「この世はすべてショー・ビジネス」とややアメリカンなサウンドで傑作アルバムを作っていくのですが、やはりイギリスロック大好き人間からすると、「ヴィレッジ・グリーン」、「アーサー」、「ローラ」、この3枚なわけですよ。

もうね、頭に残るクセのあるメロディーなんです。街を歩いてるとふと口ずさんでたりする。あ〜こんちくしょう、とか思いながら、また口ずさんじゃう。あ〜こんちくしょうめ。

CD棚を見てみると、ボーナストラック付きだの、2枚組デラックスだの、なんだかんだで同じタイトルなのに2種類持ってるやつがいっぱいあるじゃないか。「ヴィレッジ・グリーン」なんて3種類あるぞ。あ〜こんちくしょうめ。

もうね、愛すべきB級バンドの王者、代表格がキンクスだと思うのです。時代ごとに変わる作風、ベスト盤で済ますにはもったいない。ハマったら10年は楽しめますよ。

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