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社会人のための「AIガチャ」入門

はじめまして、マスクド・アナライズと申します。
AI(人工知能)やデータサイエンティストなITベンチャーで働いており、Twitterでこんな内容を発信しております。

毎週のように「AI搭載製品をリリース」「業務にAIを導入しました」というニュースが流れる昨今、一見AIとは無縁な会社でもこんなやり取りがあるようです。

この場合、外部のIT企業に開発を依頼するのが一般的な流れです。
しかし、AIを開発できる会社は、口にパンをくわえて「遅刻するぅ~」と走っている女子高生並みに希少です。
山ほどあるIT企業から、数少ない「AIを開発できる」会社を見つけなければいけません。

さて、こんな状況はどこかでみたことがありますね。
運試し、リセマラ、当たるまで引く、レアとハズレ……はい、「ガチャ」でした。

つまり、AI開発を依頼するのは、非常に高額な「ガチャ」となります。
しかもAIは一回で完成するものではなく、試作品を作ったり、継続的な改修も必要です。
この試作や改修だけでも1回数百万円かかるわけで、もちろん失敗もします。
このような意味も含めて、「大人ガチャ」と呼べますね。
そこで皆さんが持つ社会人の特権(予算とか)を利用した、「大人ガチャ」の世界を堪能しましょう。

まずは依頼先ですが、AIで有名なIT企業(Googleとか)は、自社向け研究・開発が中心です。
「部長に言われたからAI作って」という依頼に答えてくれるのは、受託開発を請け負う会社です。
具体的には

・大手SIer
・外資系企業
・有名なAI開発会社 
・独立系SIer
・フリーランス/クラウドソーシング
・自称AIベンチャー

のどれかです。
どこの会社に依頼すれば良いのか、言い換えれば「どのガチャを回せばいいのか」を詳しく見てみましょう。
それぞれのガチャには「費用」「技術力」「成功率」のステータスも設定しているので、合わせて参考にして下さい。

・大手SIerガチャ
費用:バカ高い
技術力:外注頼み
成功率:メンツによる

解説:歴史と伝統を持つ、電話や電機メーカーの名前が入った大手SIerです。
抜群の知名度を誇りますが、AIを開発できるエンジニアの質・人数は微妙です。
実際には研究開発部門に所属していたりするので、貴方の開発依頼は下請に丸投げされる前提です。
なお、打ち合わせに同席するエンジニアは大抵は下請社員なので、名刺の社名は信用しないこと。
高い予算の割に微妙な成果で終わる事もありますが、大手のメンツで一応の形にはしてくれるので、プレスリリースでドヤれるのが強みです(ただしリリースだけで終わる)。
また、失敗しても「信頼と実績の大手企業に依頼してもダメでした」と逃げ道を作っておけるので、社内政治にも配慮できます。

・外資系企業ガチャ
費用:失禁レベル
技術力:日本にいるの?
成功率:予算に比例

解説:「AIもコンピュータもアメリカ生まれなんだから、アメリカの企業に任せれば良くね」という、アメリカン合理的主義で判断する人向け。
権限も人材も技術もアメリカ本社が最優先であり、製品開発も「USA is No.1」思想なので、何を頼んでも「ウチの製品をそのまま使え」と返答されます。
どうしても業務に合わせてカスタマイズしたい場合は、ゴルゴ13への依頼並みに札束を積みましょう。
資料は全て英語ですし、サポートが英語でも文句は言えません、だって外資系だから。
時々物好きな会社が島国ジャップのために資料を翻訳したり、サポートを日本語で対応してくれますが、ボッタクリ価格をふっかけるためなので、お人好し日本人にならないように。
なお、「不具合」は「仕様」なので、文句があるなら弁護士&裁判所まで。
探偵の助手みたいな名前の製品が導入されてますが、それが出来るのは宣伝費込みで無駄な予算を持っている会社だけです。
そう、サグラダ・ファミリアみたいな青い銀行のように。

・有名AI開発会社ガチャ
費用:ボッタクリ
技術力:それなり
成功率:そこそこ

解説:知名度や実績のあるAI開発会社であり、新興ベンチャーとして上場している会社もあります。
よくAIやデータサイエンティストのセミナーに登壇したり、業界団体の主要ポジションを務めるくらいに、発言力や政治力のある会社も含みます。
"それなり"の技術力と人材により、成功率も"そこそこ"に高いものの、昨今のAIブームにより開発費がやたら高騰していたり、スケジュールが1年先になる事も覚悟しましょう。
また、急遽増員したので人材育成が間に合わず、新人をアサインされる可能性も考慮するのが無難です。
会社の沿革を見るとそもそもAIと関係ない過去が見え隠れする会社もありますが、そこは変化に柔軟に対応してきた証拠です。
ちなみに、ニュースサイトに掲載される「大企業のAI導入事例」は、大抵この手の会社が請け負ってます。

・独立系SIerガチャ
費用:ゴネると下がる
技術力:虚無
成功率:カミカゼ

いわゆる「人売りIT企業」を指します。
自社のエンジニアを各プロジェクト毎に寄せ集めて、「後は野となれ山となれ」方式で開発します。
技術力は個人に依存しており、「ネットのAIエンジニア育成コース(月額5000円)を受講した人」で上位5%が構成されます。
さらにエンジニアの能力や実績を詐称するのが常態化しており、経歴書は「日本語で書かれている」以外に正しい内容はありません。
上場企業であろうと、社員数と売上が多いだけで、社会的な信用やプロジェクトの成功は期待しないこと。
もしも貴方が開発を依頼しても、人数以外の要件を満たす事はできませんし、AI開発は従来適用されていた「人を集めて何とかする」という手法が通じません。 
よって希望するスケジュールや要望などは一切通らないと割り切らなければ、依頼側の担当者は精神崩壊します。
「玉砕覚悟」「一億総火の玉」の特攻精神に満ち溢れた方と、「強引にAI担当にさせられた腹いせに、わざと会社に損害を出してから辞めたい人」以外にはおすすめできません。

・クラウドソーシング / フリーランスガチャ

金額:ワーキングプアとデフレと「ドトールのコーヒーが200円台」
技術力:闇
成功率:素粒子

フリーランスのエンジニアなどが登録し、運営会社を経由して仕事を請け負って開発します。
その内情は恐ろしく安い単価と、雑すぎる発注側の仕様で埋めつくされた紛争地帯の地雷原です。
講演料や紹介手数料を狙ったフリーランス独立煽り勢と、自称エンジニアが作ったパンドラの箱であり、質を問わなきゃ何でも作れます。
地獄を抜けたらまた地獄、退職の後悔に棲みついた一掴みの人間性とちっぽけな野心、セミナーの虚構に溺れた者が生み出したソドムの街。
虚勢と見栄、後悔と混沌をコンクリートミキサーにかけてぶちまけたここは、IT業界のゴモラ。
リリースまで地獄に付き合う覚悟で発注しましょう。
そもそもデキるAIエンジニアはこの手のサイトに登録せずとも仕事を請けているか、超高給で企業に雇われています。
よって、偉い人に提出する「AI活用ビジネス案」などの企画書作り程度しか、使い道はありません。

・自称AIベンチャーガチャ

金額:50万円~億単位
技術力:宇宙創生
成功率:努力と根性と運次第

創業間もない、又は知名度の低いAIベンチャーです。
IT未経験や文系の社長が設立した会社もあります。
社長の学歴が金で買ったものだったり、CTOが名前貸しだったり、CFOが社長の愛人(元キャバ嬢)という会社が無きにしもあらず……という噂。
開発能力は皆無で、仕事を受けても外部に丸投げするのは常套手段。
会社の住所がレンタルオフィスでも、気にしてはいけません。
反社会的勢力のフロント企業に成り下がっている会社はないはずですが、一応疑っておきましょう。
費用は安すぎると失敗しますし、カモられると青天井なので、最初から明確に予算感を伝えましょう。
時々ヤクザな会社があって、安すぎる金額を提示するとその場でヤキを入れられるので、打ち合わせにはカメラとレコーダーが必須です。
エンジニアが在籍していても、知能は「日本語が話せるゴリラ」から「ジェダイの騎士」まで光年単位で幅があります。
ただし、銀河系に知的生命体が存在する可能性ぐらいには、スゴイAIエンジニアがいるので、奇跡を信じる人におすすめします。
なお、筆者が働く会社も世間的にはココに分類されます。

・まとめ

少なくとも「ここに頼めば大丈夫」と保証できる会社(ガチャ)はありません。
そもそもAI開発自体が成功を保証できないので、一定の損失は覚悟しましょう。
金に糸目をつけず有名企業に頼めば成功率は上がるかもしれませんが、そもそも発注側にも「とりあえずAI作って」と抜かすチンパンジーがいるので、リテラシーが重要です。
また、経済誌(日経・東洋経済・ダイヤモンド)で名前の挙がるAIベンチャー(PFNなど)は自社開発や研究のみで、外部の依頼を請けない会社もあるのでご注意を。
悪意と偏見に満ち溢れた文書ですが、ことIT業界(特にAI絡み)において、こうした魑魅魍魎が跋扈し、世紀末救世主伝説の様相を呈しているのです。

しかしサラリーマンである以上、上司からの命令は避けられません。
もしも偉い人からこう言われたら、貴方の答えは一つです。

つまり、これを伝えたかったのです。

「AIで問題は解決できるのか?」
「AIでなければ問題は解決できないのか?」
「AI以外の解決策はあるのか?」

AIにこだわる必要はありません。
まずはこれを考える事が、貴方の仕事です。

※本内容は悪意と偏見を含むフィクションなので、本気で怒らないこと。

#AI #人工知能 #データサイエンティスト

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