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tonkoriを作ったはなし

樺太の先住民族が使っていた擦弦楽器としてのtonokoriを
博物館で抱え鳴らしたときのことが忘れられず、
お金を出して買うのではなく
自分の分身の様に作ってみたいと思ったことから始まったおはなしです。

…はじめて知床の海から断崖を見上げた時
どうしようもない慟哭が胸からわき上がって号泣してしまった。

オホーツク文化が好き。つい博物館に行ってしまう。…

そんな私が
tonkoriを自作した自分用記録noteです。

制作にあたって、一番に参考にさせていただいたのは
Tさんという方の自作のblog。
(ご迷惑をかけてはいけないのでリンクは削除しましたが
どんな楽器でも
自作する、それを愛するという過程を愛する方にはお伝えしますのでご連絡ください)

そして
財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構の
アイヌ文化再現マニュアル「トンコリ」。
こちらは無断複製禁止のpdfなので、個人使用に留めておくことをスルドクおすすめ。

まず、何度も何度もTさんのblogを見る。見ているうちになんだか出来る様な氣になってくる。
だってしょうがないじゃないか、今年の春、自分のtonkoriは自分で作るものだというはてしない思い込みにガッツリ取り憑かれてしまったのだから。

武器、じゃなかなった、道具といえば、30年以上前にピアノリペアの実技で使った鉋(保存していたのが奇跡。)と、DIY用の安いノコギリ、電動ドリルぐらい。
ディスクグラインダも持っていない無謀なスタートだが、
数年前から穴のあくほどTさんのblog(もはや信者。)を見ていたわたしは、迷わず府中家具に細かいミリ単位で木材をオーダーした。オーダーしてから木工はほとんど初心者なのを忘れていたのを思い出し、かなりドキドキした。

こちらが届いた木材達である。ものすごく丁寧に梱包されて送られてきて感動してしまった…。

早速部分ごとに青いヒモで結んでみた。青い色に特に意味はない。たまたまラッピング用に買っておいたヒモだ。ナウシカになりたくて青にしたわけでもない。

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小さいものに至っては
24×106×30 (駒に削る木材)なんて、謎に細かすぎる発注であるが、1ミリの狂いもなくカットして送ってくださった府中家具さん凄すぎる。しかも、顔板にする予定の材だけ、すこし大きめだった。何を作るかもう既にご存じなのだろうか?オソルベシ、府中家具!

グレートすぎる府中家具さんに敬意を表して、暫く床の間に鎮座させて毎日眺める日が続く。
外は蒸し暑い。梅雨の始まる前に草むしりや毛虫とりをしておかなければ…。
(木材を発注したのが5月半ば、結局完成までほぼ4ヶ月かかってしまったた。)

ニヤニヤと白く美しいスプルースを眺めていても一向に形にならないので、頭の部分からとりかかる。

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弦巻きをねじ込む穴。最初は再現マニュアルを真似して熱したコテで焼いてみたりしたが、なんか予想外に燃え広がりそうでコワイので、結局ドリルで穴をあける。
再現マニュアルでは、一本の角材をトンコリに彫り響板を張り付けて仕上げている。一瞬ホームセンターで角材を買ってこようと思ったが、もちろんやめた。

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「頭」と「首」の部分。なんとなく嬉しくなってきた氣持ちをブタのバムセに表してみた。(なんとなくうっすらと模様も彫ってみた。)

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弦巻きを削る。四角く細長い角材を延々とパピコ目指して削る。
この時点あたりから、(電動ディスクグラインダーの代わりに)電動ドライバドリルをゲットして六角ディスクを装着するという新しいアイテムが加わる。
(ディスクグラインダを動作させるときに支えきれる自信がなかったからだ。)
電動と手動の鉋を交互に使い削っていく。

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さらにamazonさんでこんなアイテムをゲットする。早く買えばよかったと軽く後悔する。だって五十肩なんだもん。

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顔の模様は六芒星を入れたかったのと、

https://twitter.com/Deepfryguy76/status/1498716588416983045?s=20&t=I2ugsvAzEbD2whqydL9Qaw

この記事↑。イルカの声を形にするとこんな幾何学模様になるよというtwitterを見て。

なんとなく形になってくると氣がせいて弦まきをとりつけてみたくなる。まだまだ削るんだけど。

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本体になる部分の背中・脇・底を接着したところ。
頭の部分をはめたときに「カーン」といい音がしてびっくりすると同時に愛しさが溢れてほおずりしたくなる。ヘンタイである。

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このあたりから「豆鉋」というアイテムをゲットする。
ものすごく使える!さあ、魅せてもらおうじゃないか、その性能とやらを!

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ひたすら内部を削る。
削っていると不思議なもので、普段馳せないところに思いを馳せてみたりして、「ああーあれはああいうことだったのか」とか、一生理解することのないと思っていた人の気持ちになってみたりして、ちょっぴりおセンチに涙ぐんでしまう一瞬があったが、
とにかく淡々と削る。過ぎゆく感情は青い空に浮かぶ雲のように流れていくにすぎない。ねえ、リンポチェさん…。

いいかげん手も腕も痛い。いったい何ヶ月削るつもりだ…。
そんな時に尊敬する創作楽器演奏家である、みんな大好き”Gさん”から秋の催しのお知らせメッセージが偶然届く。メッセージに便乗して
「実はtonkoriつくってるんですけどぉ」とさりげなく聞いてみる。
話は楽器の弦のいろいろまでに及ぶ。流石…。
ついでに今やっている作業は結構粗めに削っても大丈夫なようだと確信する。やっぱり聴いてよかった…。
一人で黙々と作業している煮詰まり感がうっすら出てきたころなので、ふいのメッセージは本当に有り難かった。

↓響板の表はうっすらヤスリで削って、裏から薄めに仕上げていく。もちろん相棒豆鉋とヤスリで!あまり削ると割れそうで怖いのでこのくらいにしておく。

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中に「たま」を入れる。最初から石を入れようと思っていて想い入れが強すぎてちょっと重量感がでてしまい、本体を持ち上げて石が動くときのカラカラ音が大きくなってしまった。

instagramに石の写真をアップしているので閑があったら見てね。


ラストスパートは9月末ごろから。
全ての部品(弦以外)が揃ったところを撮影。
木肌にはクルミ油を塗る。(響板にも模様を入れた。)
背部から弦をひっぱり止めるところと、バンビ皮の下に忍ばせる「弦のまとめ棒」(勝手に命名。○井棒ではない。)は、なんと青森ヒバの箸から作った。使えるものはなんでも使う。

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ボディの穴の周りの模様は
後から北方民族博物館で買ったウィルタ模様の針刺しに
ちょっと似ている。
もし次回作るときはがんばってウィルタ模様をもっとつけてみたい。

とうとうここまできた!とひとりでジワジワする。

弦は三味線の弦を使う。これもTさんのblogを熟読(したつもり)で決めた。改めてネットで調べてみると三味線の世界の奥が深すぎて分からない。三味線の竿の形態や唄のジャンルでも糸が違うらしい…。どうしたらいいんだ…。右往左往しながらネットで絹の糸を注文する。
その頃、丁度クリスタルボウルを聴きに来てくださったグループのある方が三味線演奏家で、なんと発表会に出るのに○○万円も払うと聴く。生け花やお茶の先生にもその世界の厳しさは薄薄感じてはいたけれど、伝統的な芸事の世界の厳しいこと…。ひたすらスミマセンとココロで言いながら
それでもニヤニヤして届いた糸を鼻の下と一緒に伸ばしてみる。

ついでに告白すると、(ゴカイのないように読んで欲しいのだが、)
tonkoriを作ったのは、別にそれで人を癒してやろうとか、地球のためにとか、そういうつもりは1ミリもなくて、
ただただ自分の骨肉に音を響かせたいからである。

次回「弦を張ったぞ!これで沖縄に行ける!」(ほんとか?)につづく…。 

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