「週刊プラグインレビュー」SIR Audio Tools / SIR3
ふと夜中にドライヴしたくなって、絶対疲れている後輩に連絡をして深夜のすき家で食う飯はうまい!
そんな、ヤンキーな日々を送っている諸石です笑
先日、僕が世界一だと思っているミキサーのボブクリアマウンテン氏のセミナーにお伺いして、その特徴的なリバーヴ使いから色々と刺激をいただくことができました。
そんなわけで、前回に引き続き、リバーブ熱が再燃しているわけですが・・
今回は、高品質なIRローダーのSIR3について触れてみようかなと思います。
それでは今日もやっていきます!
プラグインレビュー!
SIR3とは?
Standard Clipでお馴染みのSIRのコンボリューションリバーヴだ。
SIR自体はドイツの会社で、質実剛健・・・という感じのベンダー。
コンボリューションリバーブは何かというと、実際の空間でインパルスレスポンス(IR)を記録し、そのIRを使用して任意のオーディオ信号にその空間の音響特性を適用するリバーブのこと。
要はシミュレートというより、正確なその場の空間のキャプチャーと考えてもらえればいい。
その性質上、アルゴリズミックリバーブのように柔軟に操作を出来ない場合が多い。
SIR3は高品質なHDIRに加えて、True Stereoや様々なエディット機能を加えることで、差別化を図っている様子だ。
HDIRってなにさ?
で、その目玉のHDIRって何だろう・・という話になってくる。
特に詳しくはSIRのマニュアルに書かれていないので、製作元のPinguin Ingenieurbüroさんをあたることに。
ここに色々と仕様が書いてあったのでご紹介しておく。
Pinguin HDIR-Creatorは、高解像度(最大24ビット/96kHz)のインパルスレスポンス測定プログラムであり、快適な編集とエクスポート機能を備えている。HDIR-Creatorは、スタジオにおいてユニークなプライマリーリバーブを作成するための中心的なツールとして機能する。
要するにハイレゾで、ダイナミックレンジは測定器の実効値。かつ、エディット可能なアルゴリズムが組み合わさったIR生成技術・・ということのようだ。
あれ?それってほとんど完全無欠なのでは・・?
センスの良いメーカーと、センスの良いメーカーのクロスオーバーであることが予想される。これは期待できそうだ。
機能面
そんなSIR3だが、機能についてそれぞれ見ていこう。
超多機能なので長くなります・・スイマセン。
フロー図について
画面説明
Basic
プリディレイ
ドライ信号とインパルスレスポンスの開始間の遅延を調整できる。
値を高くするほど、直接音(ドライ)と最初の反射音の時間が長くなり、自然な録音のようにリスナーに近づいて聞こえる。これはマイクが音源に近いほど、直接音(ドライ)は反射音よりも早くマイクに到達するから。
通常、ボーカルなどミックスの前面に置きたい音に使うことが多い。
ミックスしたドライ/ウェットがぼやけないようにする良い方法でもある。
ダブルクリックでこのパラメーターをリセットできるようになっている。
ディケイ
ディケイは時間の経過に伴う増幅を表す。このパラメーターで、リバーブが時間の経過とともにどのように続くかを制御できる。
値が-3dB/sの場合、インパルスゲインが1秒あたり3dB減少し、部屋が小さく感じられる。
ピッチ
このコントロールは、インパルスレスポンスのアップサンプリングとダウンサンプリングを調整する(低速/高速で再生しているテープレコーダーのように)。半音単位で調整可能。値を高くすると明るくて短い部屋に、低くすると暗くて長い部屋になる。
ダブルクリックでこのパラメーターをリセットできる。
ERキャップ
「ERキャップ」は、どの初期反射音を聞こえるようにし、どれをミュートするかを変更する。また、「初期反射図」ですぐに視覚的なフィードバックが得られる。初期反射は、リスナーの耳に最初に届く反射音で、部屋の知覚に非常に重要。
負の値は、しきい値を超えるすべての反射音が無効になることを意味し、正の値は、しきい値を下回る反射音が除去されることを意味する。
初期反射を下げると、部屋の印象がより透明になり、部屋を持ち上げると、よりライヴに感じられる。
初期反射の検出は、40dBのダイナミックレンジとインパルスレスポンスの最初の300msの時間範囲に限定される。
ダイレクト
このオプションは、HDIR(PinguinのHigh Definition Impulse Response)でのみ使用可能になる。
「オン」にすると、インパルスレスポンスの「ドライ情報」を使用して非常にリアルなリバーブを得ることができる。
注:これを使用する場合は、フランジングを避けるためにドライ信号をミュートすること(4.2 ウェットとドライ)。
プラグインをセンドエフェクトとして使用する場合は、このオプションを無効にするのが一般的とのこと。
フォワード/リバース
面白いエフェクトを作成するために、このボタンをクリックしてインパルスレスポンスを反転できる。
ステレオイン
このコントロールは、入力信号のステレオ幅を調整する。これは、ミドル(モノ)またはサイド信号(ステレオ)がエフェクト信号にどれだけ影響するかを制御するのに重要。ダブルクリックでこのパラメーターをリセットできる。
MIXセクション
これらのフェーダーを使用して、ドライレベルとウェット(リバーブ信号)レベルを変更できる。
フェーダーの下のオン/オフボタンをクリックして、ウェット/ドライ信号をミュートできる。
「オートゲイン」は自動音量補正機能で、ボタンをクリックしてオン/オフできる。この機能は、異なるインパルスレスポンスを閲覧するときに便利で、新しいアイテムを選択するたびにウェットレベルを調整する必要がない。
ダブルクリックすると、ドライレベルとウェットレベルが0dBにリセットされる。
イコライザー/アナライザー
SIR3には、ウェット信号のみをフィルタリングする最小位相イコライザーが内蔵されている。
小さな丸いノブをドラッグして、ディスプレイ上で直接フィルターの値を変更するか、フローティングパネルを使用してキーボードから値を入力する。右クリックでコンテキストメニューを開き、イコライザーをリセットしたり、アナライザーモードを選択したりできる。
フローティングメニューの背後にノブが隠れてアクセスできない場合は、マウスをイコライザーから離すと、フローティングパネルが自動的に消える。
ウェット信号の周波数スペクトルを表示するスペクトラムアナライザーは、アナログIIRライクなアナライザーまたはFFTスタイルのアナライザーのいずれかに設定できる。右クリックで両方のモードを切り替えられる。
ファイルブラウザ/ライブラリ
検索フィールド付きのライブラリ。地味に便利。
Damping
特定の周波数帯域における時間経過に伴う減衰(または増幅)の程度。
例えば、中域周波数の減衰時間を長くしたい場合は、中央のダイヤルを高い値に設定すればOK。
下部の2つのダイヤルを使って、低域、中域、高域の3つの周波数帯域の境界周波数を設定できる。
Modulation
インパルスレスポンスにモジュレーションを追加して動きや変化を加えることが出来る。
4つの独立したLFOを持っていて、先頭部分、テール分、全体をそれぞれ変調してあげることが出来る。
各LFOは
・タイム
・ピッチ
・パンニング
に変調を加えることが出来る。
「LFO Waveform」ボタンをクリックすると、使用可能な波形(サイン、三角形、ノコギリ波)を切り替えることができる。
「LFO Sync」をオンにすると、LFOはホストのテンポに同期する。
「Initial Phase」は、LFOがどこから始まるかを制御する。0°はLFOが最大値から始まり、180°は最小値から始まることを意味する。
「IR start/end」では、LFOが影響するIRの範囲を指定できる。これにより、IRの特定の部分のみを変調することができる。
「LFO LR Phase」をオンにすると、左右のチャンネルでLFOを時間的にシフトさせることができる。これにより、ステレオ効果が得られる。
モジュレーション編集パネル
このパネルでは、モジュレーションパラメーターを視覚的に調整したり、モジュレーションLFOをより詳細に制御したりできる。
モジュレーション編集パネルを開くには、各LFOセクションの右側にある小さな歯車アイコンをクリックする。
モジュレーショングラフは、LFOの波形と範囲を表示する。ハンドルをドラッグして、LFOの開始位置と終了位置、および振幅を調整できる。
グラフの下にある追加のパラメーターを使用して、「Shape」(LFOの波形を変更)、「Randomness」(LFOに不規則性を加える)、「Smoothing」(LFOをなめらかにする)を制御できる。
Dynamics
ゲート
スレッショルド:ゲートが開くレベルを設定する。
リリースタイム:スレッショルドを下回った後、ゲートが閉じるまでの時間を設定する。
ルックアヘッドタイム:ゲートがスレッショルドを下回ることを予測し、より自然なゲーティングを可能にする。
ホールド:ゲートがオープン状態を維持する時間を設定する。
サイドチェーンHP/LP:サイドチェーン信号の周波数範囲を制限し、特定の周波数のみでゲートをトリガーできるようにする。
ダッキング
スレッショルド:ダッキングが始まるレベルを設定する。
リリースタイム:スレッショルドを下回った後、ダッキングが止まるまでの時間を設定する。
ルックアヘッドタイム:ダッキングがスレッショルドを超えることを予測し、より自然なダッキングを可能にする。
サイドチェーンHP/LP:サイドチェーン信号の周波数範囲を制限し、特定の周波数のみでダッキングをトリガーできるようにする。
ルーティング
Mono to Mono
Stereo to Stereo
Mono Impluse使用の場合
Mono to Stereo
True Stereo
True Stereoは左右それぞれステレオの畳み込み処理が個別に発生するようになっている。
例えば、Lchを見てみる。
・Lの入力がIR1を通りLに行く
・Lの入力がIR2を通りRに行く
ようになっていて、ソースのLRがそれぞれ個別にステレオ処理され畳みこまれるようになっている。
そのため、4チャンネルのインパルス応答のファイルのみで可能になっている。
Envelope
時間変化に対して、エンベロープを直接描くことが出来る。
描けるエンベロープの種類は以下の5種類。
・Volume
・Low-PASS
・High-PASS
・Stereo-Width
・PAN
長くなったが以上が各セクションの説明になる。
難しそうだ・・・という印象を与えてしまったら、それは誤解だ。
要するに、IRをロードして気になったところを全てエディットできるだけだからだ。
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実際、クセは殆どない。
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