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「週刊プラグインレビュー」Tone Projects / Michelangelo

今年も残すところあと1日。
お仕事が納まったのか、納まってないのか・・・。
何か忘れてることあるじゃないの?など・・・。
職業病ともいえる警戒心のせいで、いつものことながらぬるっと年を越しそうな今日この頃を送っております笑

さて、今回はリクエストをしていただいたプラグインのTone Projects Michelangeloについてレビューをしていきたいと思います。

Michelangeloは実機を所有していたこともあり、僕としても思い出深い機材で。その魅力とソフトウェア化するにあたって相当こだわったんだろうな・・・というポイントについて、ご紹介出来たらいいなと。

それではやっていきます!プラグインレビュー!!

Michelangeloとは?

ここの記事を読んでいるような方はご存じの方が多いと思うんですが、今回のベンダーのTone ProjectsはUnisum Compressorをはじめ、Kelvin、BassLaneなど、他とは一線を画した超高品質プラグインを輩出しているメーカー。
そんなTone Projectsがちょっとマニアックな真空管EQのMichelangeloのモデリングをしているわけですが、まず、そのMichelangeloって何なんだ?というところを説明していこうかなと。

Michelangeloは、HendyAmpsというメーカーがつくっている真空管EQの一つで。以前レビューしたPlugin AllianceのOvenと同じメーカーになる。

真空管の色付けと、スーパーブロードなEQを掛け合わせているため、複雑なハーモニクスとそれぞれのノブの”一期一会”感が実際使っていて楽しいのが大きな特徴で、普通のアクティヴEQだとドン引きするような設定であったとしても、それを音楽的に取りまとめることのできるEQだ。

僕が持っていたころは、HendyAmpsがまだ製品を出したての頃で、当時僕の中のトレンドで「真空管最高!」が流行っていたので、結構な頻度で使っていた。
その後、だんだんとデジタルがクリアーになっていくにつれて、アウトボードのチョイスもクリア方向に変化し、手放すことになった。
ただ、このギターアンプのノブのようにぐりぐりとトーンをざっくり変化させていくことが出来て、しかもその音色が美味しいというのは、マスタリングだとかミックスバスで使えるモノとしては結構珍しい。
今、また手元に戻したい機材の一つである。

そこに対して、さらにTone Projectsの変態的ともいえるモデファイとモデリングが加わったのが今回のプラグインになる。

機能面

そんなMichelangeloだが、どんな機能を持っているのか。
詳しく見ていこう。

ダイアグラムについて

気の遠くなる実装してらっしゃる・・・偉い。

メイン画面について

OVENよりはわかりやすいが、一応それぞれのパラメーターについて解説していく。

Calibration
EQのトーンと独立して、回路が作り出すハーモニクスの量を微調整するために使う。上げると信号が強くなり、より歪み、下げるとクリーンな結果となる。
ハードウェアでは、このキャリビュレーションはレベルの変化を伴うため、結構扱うのが大変だった記憶があるが、これについては自動でレベル補正をつけてくれている。ありがたや・・。
なお、キャリビュレーションのレベルは、真空管回路のクリッピング特性に影響をするため、入出力の変化とは異なる変化になるとのこと。

Agressive
回路のドライヴ感を変化させるノブ。
真空管への入力信号をプッシュすることで、SATを強めにかけることが出来る。
説明書では、アグレッシヴにSATをかけたときには、信号がダークになる印象を補うために、HighとAirを回してみるのがオススメとかかれている。
※SHIFTを押しながらこのノブを回すと自動的にTRIMのノブも回してくれて、概ね同じ音量で操作をすることが出来る。

LOW
ローバンドのゲインをコントロールする。
5の位置がニュートラルで、左に回すとカット、右に回すとブーストとなる。

Low Shift
デフォルトの150Hzでは、かなり緩やかなローシェルフになる。
このLow Shiftのスイッチを倒すと、80Hzが調整ポイントになり、ややカーヴが急で、ローミッドがよりディップするカーヴになる。

MID
中域をつかさどるバンド。
ローバンドやハイバンドと比べて広大な帯域をカバーしている。

Mid Shift
デフォルトのFULLはLowとHighの間の帯域をカバーする広いベル。
Flatオプションはより広いベルで、ローミッドをカバーする広いベルが設定されている。

High
高域を調整するバンド。
操作は他のバンドと同じ。

High Shift
デフォルトのSmoothでは緩やかなハイシェルフを。
Sharpでは宙域を巻き込んだかたちでのハイシェルフになる。

Air
超高域をブーストするためのノブ。
基本的にブースト用途でつくられていて、カット方向はゲイン幅が小さい。
より超高域を減衰させたいケースの場合は拡張パネルからLPFを使うと良いとのこと。

Trim
Michelangeloの出力を減らすノブ。
ただし、このトリムは10から下にしていくと緩やかに高域をロールオフする特性があるようで、クリーンなデジタルアウトプットで調整をしたいケースは、右下のOutputスライダーを使って欲しいとのこと。

バンドコントロールの画面について

Tone Projectsが変態なのはここかもしれない・・・。

先ほどのメイン画面に加えて、Michelangeloの各ノブをより細かく調整できるように様々なオプションが用意されている。
これらによって、周波数の微調整だけではなく、マルチバンドサチュレーションや、マルチバンドダイナミクス、トランジェントの形成・・なども出来るようになっている。

各種Freq
先ほどのデフォルトの周波数帯域を調整する。
元の周波数帯域に対して、上下にシフトさせていく。
※Shiftキーを押したままFreqを操作するとバンドソロを聞くことが出来る。
ただし、このソロはあくまでも近似値になるとのこと。

Drive
各帯域の歪の量を調整する。真空管にどれぐらい強く押し込むか?を設定した上で、自動的にレベル補正がされる。
隣についているLEDが信号強度を表していて、青→黄→赤の順でどのぐらい信号が歪んでいるのか?を確認することが出来る。
※Driveは各バンドの内部ゲインに影響しているので、ダイナミックEQにも影響するとのこと。
※Shiftを押しながらで、他のバンドのドライヴとリンクする。

MID/Side
M/S処理をのブレンド具合を調整する。
このブレンドという考え方自体は結構珍しい気がする。
どちらかに振り切ると対応するチャンネルのみがEQされる。

Trans/Body
トランジェントとボディのブレンドを調整する。
バンドEQのゲインをどの程度分配するかをスライドで調整していく。

具体例として以下の例が挙げられている。

・ブーストをトランジェントがずらすことで、ボーカルのボディーに耳障りになることなくトップエンドの存在感を加える。他、トランジェントに特化したディエッサーのようにも使える。
・トランジェントのみを集中的にベルブーストすることで、要素にパンチを加える。
・ボディのみにミッドカットを当てることで、パンチを失うことなくMuddyな帯域をカットすることが出来る。

説明書から引用

他、ダイナミックEQも搭載しているが、他のダイナミックEQと大差ないので、そこは割愛させていただく。

キャラクターコントロールについて


アナログモデリングのキャラクターと特性を調整できる。

Tube Comp
真空管のコンプレッション具合を調整するノブ。
トランジェントをゆるく飽和させる効果がある。
ここで設定した値はEQのゲインとAgressionに影響をする。

Tube Blend
Triodeは偶数倍音を付加する丸みを帯びたサウンドで、Pentodeは奇数倍音を付与するパンチの帯びたサウンドになる。

Spread
チャンネルの許容誤差の調整をする。大きく設定すると左右のチャンネル間の差が大きくなり、ステレオイメージが広がる。
デフォルトの100%の設定では、ハードウェア版で測定された差と一致するようにできている。

隣の「><」マークはフリップボタンで、チャンネルの違いを反転させる機能。

Crosstalk
片方のチャンネルから、もう片方のチャンネルへのにじみを発生させる。
高域が強調されてて、音像がより広がる。

このセクションがやはりキモのようで、説明書に乗っているハードウェアの開発者Chris Hendersonのメッセージを以下に乗せておく。

クリスによる紹介

ミケランジェロにはほぼ無限のオプションがありますが、非常に使いやすいです。シンプルな箱を想像してください。ノブを回して、気に入る音が出るまで試してみる感じです。このシンプルな箱が他に何ができるのか不思議に思い始めたら、使える便利なツールやオプションが層を成しているのを見つけるでしょう。こだわりの強い人も満足できるほどです!

ミケランジェロプラグインでは、ハードウェアで愛されていた部分を残したいと考えました。しかし、それに加えて、ミケランジェロで何ができるかも探求したかったんです。ハードウェアの世界では手に入らないツールやオプションを、ミケランジェロに取り入れて、市場で最高のEQにしたかったんです。

ミケランジェロを使う上で、常識にとらわれる必要はありません。このEQは、クリエイティビティを大切にして押し進めるために作られました。各ノブは他のノブと相互作用するので、刺激的な楽器を操作しているような感覚があるでしょう。

ミケランジェロのハードウェア版は、ステレオイメージを向上させる方法でクロストークを取り入れるように設計されました。また、高音部分のコンポーネントはよく異なります(異なるタイプのコンデンサーなど)。これは、個々のニーズに合わせてカスタムビルドされたためです。プラグインでは、クロストーク量とステレオ拡散をユーザーが調整できるようにして、さまざまなユニットの幅広い範囲を捉え、各アプリケーションに最適な組み合わせを選ぶことができます。

ミケランジェロは常にトライオードベースの管(12ax7/ECC83)に焦点を当てており、特に低中音域で非常に暖かく豊かな音を提供します。この音は、リラックスしたアプローチに最適で、原材料の音をより豊かで充実したものにするために、偶数次のハーモニクスを多く生成します。これまで試されたことのないのは、ペントード管を使ったミケランジェロの構築です。プラグイン版では、トライオードトポロジーの補完として、このトポロジーを探求したかったのです。ペントード管はトライオードよりも表現力が高く、低中音域ではトライオードよりもスリムで、パンチのある奇数次のハーモニクスを生成します。結果として、ミケランジェロプラグインでは、従来のトライオード管の音と、ミケランジェロのハードウェアユニットには存在しない、そして存在しないであろうペントード管の音を組み合わせることができ、さらに多くの可能性があります!

- クリス・ヘンダーソン、Hendyampsのオーナーでミケランジェロのオリジナルデザイナー

説明書より

他にも追加のPEQやLPF HPFが追加されて、フルスペックのマスタリングEQとして仕上がっているが、その辺りについては他のEQと変わらないので割愛させていただく。

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僕は現在、parasight masteringという場所でマスタリングエンジニアをやっています。
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検証してみる

まず、このMichelangeloを検証してみて驚いたのが、デジタルのいいところどりを全くしようとしていないこと。
あくまで忠実なモデリングであることが前提で、補強するためにゴツイデジタル周りが実装されている・・という珍しいパターンであることだった。
正直複雑にできすぎていて全てを検証するのは不可能だが、分かった範囲で書いていきたい。

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