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「週刊プラグインレビュー」Three-Body Technology / Cenozoix

今月の初更新になります。
寒さもちょっとずつ落ち着いてくるようで、なんでも都内は来週20度になる日があるとかないとか。でも最低気温は3度の日もあるらしく、服装の調整に難儀しそうな月であります笑

今回は皆さんご存じ、Kirch-off EQで有名なThree-Body TechnologyからCenozoixという何でも出来るコンプレッサーがリリースされたのでご紹介していければと思います!

検証面について、ほぼほぼマニュアルに書かれている通りではあるので、基本「難しそうなところを自分なりに和訳するぜ~」という記事になりますが、お楽しみいただけたら嬉しいです。

それでは今回もやっていきます!
プラグインレビュー!!

Cenozoixとは?

CenozoixはThree-Body Technologyから出た、色んなコンプレッサーをデジタル的な弱点を回避しつつつくられた万能コンプだ。
相変わらずなんて読むか全然わからない笑
Cenozoicが新世代という意味なので、それにXをつけたった!的なとこだと思う。多分・・・。

で、特徴的なところとしては以下の機能を兼ね備えている。

・ADAAの技術を応用した低歪のディテクターを搭載
これは、オーバーサンプリングとは別枠で、数学的に無限のサンプルレートと見なせるように処理をすることで、エイリアスノイズを軽減するテクノロジーのことであるらしい。
Newfangled AudioからでているSaturateが似たような技術を搭載していたが、ADAAもどうやらその一種である様子だ。

・12のビンテージ+12のモダンコンプレッサー
合計24種類!やりたい放題っ・・!
これもなかなかうまく調整されていて、各モデルによって触ると破綻しそうなパラメーターは触れないようになっている。
また、モデルごとのアルゴリズムを結構ちゃんと変えている様子で、カメレオン的な変化をしてくれる。

・アタックのコントロール
今回は、この機能が個人的に目玉かなと。
素早いトランジェントを処理する機能と、アタックで打ち漏らした成分を再度処理する機能を備えている。

・リリースのコントロール
アナログの挙動を再現するデュアルリリースを備えていて、ワンノブでそのリリースの揺らぎ具合を設定できる。

・独自のコンプツクール機能
Peak/RMS、そのコンプレッサーがどれぐらい歪むのか?Fead Back、FeadFowardのブレンドをしてあげることが出来る。
特にFBとFFのブレンド・・・というのは結構珍しいんじゃないだろうか。

相変わらずの全部入りモデル・・・ということで機能がてんこ盛りなわけだが、マニュアルをちゃんと読まないとやはり何が何だかわからないので、その辺りを早速解説していきたい。

機能面

基本的なコンプレッサーに搭載されている機能(スレショルド、ニー、レシオ辺り)は割愛させていただきつつ。特徴的なところをおさらいしていく。

こいつはやりたい放題だぜ・・!

HOLDとLookahead


HOLD
ゲインリダクションを維持する時間の調整。
短いホールドタイムを設定してあげることで、ゲインリダクションの透明性のある処理に。
長いホールドタイムではPumpingエフェクトとして利用することが出来る。

説明書より

Loookahead
Cenozoixにどのぐらい波形を先読みさせるか?を数値指定する。
波形を先読みすることで、信号のトランジェントをより正確に読み込むことができて、透明性の高いリダクションをすることが出来る。
 ※なお、有効にすると20msのレイテンシーが発生する。

Attack Control


Clamp
アタックタイムで打ち漏らしたトランジェントをターゲットにして再圧縮をかける機能。
従来のコンプレッサーはこんな弱点を抱えていた。
 
・アタックタイムを短く設定する → 過剰に圧縮され、人工的なサウンドになってしまう。

・アタックタイムを長く設定する → 音の最初の勢い(トランジェント)が十分に圧縮されない。

なので、例えば、ボーカルに迫力を持たせようとアタックタイムを50msと遅めに設定すると、ボーカルの初期アタック部分に含まれるトランジェントが未圧縮のまま残り、鋭く突き抜けるような「パツン」という音が出現しやすくなる。これは心当たりある人多いと思う笑

この現象を解決するために、長めのアタックタイムで逃がしてしまったトランジェント部分に対してさらに圧縮を追加する機能を追加した。
それがClampであるとのこと。

説明書より

De-Click
 超高速のトランジェントに対して、Clampとは別処理でハードクリッピングのオーバードライブディストーションを追加して、信号を均す機能。
 基本的にパーカッション系の楽器の処理に特化している。
これは ビンテージ設計のコンプレッサーが元ネタになっていて、適当に機材を通したときのハードクリッピングの感じを再現してくれてるとのこと。

※ クランプは遅いトランジェントであっても再圧縮をかけていくのに対して、De-Clickは超高速のトランジェントのみに反応するようにアルゴリズムが設計されている。アルゴリズムそのものが違う様子。

Punch/Pump
全体的なアタックとリリースの形状を変更するスライダー。
 スライダーを上にあげると、より激しくパンチの効いたサウンドに。
スライダーを下に引くと、トランジェントがより強く圧縮されて弾力性のあるサウンドになる。

説明書より

Release Control


Tight
ローが入っていることを検出すると、アタックタイムとリリースタイムを自動的に調整してくれるノブ。
 右に回すと、アタックタイムリリースタイムは短くなり、WaveShaper的な挙動になっていく。
 左に回すと、逆に延長され、低域をナチュラルになだめつつ、歪を減らすことが出来る。

Sensitive
アダブティヴリリース(Program Dependent Release)の機能。
このアダブティヴリリースというのは、通した信号によってリリースタイムが揺れる設定のことで、結構名器と呼ばれているものは実際にそのようになっていることが多い。
だからこそ、適当に通してもウマく機能することが多い。
このSensitiveでは、0%でリリースの値を固定して、100%で0msから現在設定している値の間で自動リリースを有効にしてくれる。

Compression mode


Peak/RMS
コンプレッションのモードをPeakとRMSの間でどのようにブレンドするか?を選ぶモード。
 一般的には、ピークコンプレッションはトランジェントを捉えるのに向いている一方で、コンプレッション感が強くなってしまう。
 RMSコンプレッションは、スムーズで自然だが、トランジェントを圧縮することが出来ない。
 なので、両方を使っていいとこどりが出来るように設計されている。

 ノブを右に回すほどRMSよりになっていき、50%で両方の特性をカバーできるようになっている。

FF/FB

フィードフォワードとフィードバックコンプレッションのモードのブレンド。
FFとFBの違いは何ぞや?というとレベルを検出するディテクターの位置の違い。

 フィードフォワードコンプ
元々の信号を検知信号として使う形式。

RockOnさんより拝借

1970中盤に開発されたVCAチップ以降、最近のコンプレッサーはこの形式が多い。最近のモノはだいたいこの方式・・ということ。

 フィードバックコンプ
コンプレッションした信号を検知信号として使う形式。

RockOnさんより拝借

 ビンテージコンプレッサーに多い。1176やLA-2Aなど。

ざっくりと考えるなら、いわゆるビンテージっぽいよく言えばマジカルな・・悪く言えばいなたい感じを求めるならFBの比率を上げてみるとうまくいくことがあるかもしれない。ぐらいに考えておけばOKだと思う。

ノブを右にあげれば上げるほど、FB方式に近づいていく。

Odd/Even
どの程度偶数倍音を混ぜるか?のノブ。
右に回せば回すほど偶数倍音が優位になっていく。
一般的に倍音は、奇数(ODD)はパキっとした音で、偶数(Even)は暖かみのある音とされている。

Compression Style

12種類ずつのコンプレッサーがVintageとModernに搭載されていて、それぞれ見ていこう。多分これが元ネタじゃないかな~を一応書いておくものの、明示されてないので話半分に聞いてください笑

Vintage

Brit VCA
チャンネルストリップインスパイア。Tightパラメーターも利用できるように微調整されている。SSLのチャンネルコンプかな。

• Glue VCA
クラシックなVCAコンプレッサー。接着剤のようにトラック同士をくうつけて、まとまりのあるミックスをつくりだす。 これはSSLのバスコンプ

• US VCA
 アメリカンVCAインスパイア。Brit VCAやGlueよりもストレートなサウンドが特徴で、バスドラムやスネアに特徴が出やすい。これはAPIのバスコンプ。

Black VCA
ドラムのコンプレッションに最適。
まー DBXでしょう。

• RED VCA
 クリーンで透明感がありつつ暖かいサウンドの赤いVCAがモデル元。 FocusriteのREDかな。

•Dist VCA
クラシックなVCAコンプで、サチュレーションを豊かに発生させる。モダンなドラムのサウンドプロセッシングに最適。
ノブ的にディストレッサー。

BLACK&BlueFET
オリジナルのFETに比べて様々な調整ができるようにカスタムしてあるモード。 1176シリーズですね。

Vintage Opto
ユニークなマルチステージのアタックとリリースが特徴。
LA-2A。

Diode Bridge
ベーストラックに是非使ってみて欲しいとのこと。巨大なサウンドを産みだす。欠点としてトランジェントが大きくなりすぎることがあるが、Clampで適宜調整できるようになっている。
Neve系。

• Vari-mu
クラシックなチューブコンプレッサーのインスパイア。偶数倍音でよく知られていて、ふくよかさを印象に付け足すことが出来る。
そのまんまVari-Muだと思う。

• Vintage Tube
クラシックなビンテージサウンドの真空管コンプレッサー。暖かみと深くもぐりこんだローエンドの表現が得意。
フェアチャイルドかな・・自信ないです。

Modern

Clean
科学的に正しいスタイルで、特殊処理を一切行わないモード。すべてのパラメーターを微調整できるようになっている。

• Tight
Cleanに近いが、内部パラメーターを微調整してよりモダンなサウンドに仕上げている。ローエンドがコンプれっしょんさせると、アタックとリリースが自動的に短くなる。

• Open
ワイドでオープンなサウンドを得やすい。

• Natural
Openに似ているが、より自然なサウンド。アコースティック楽器やストリングスのようなレガートの演奏スタイルにオススメ。

• Vocal
Cleanをよりボーカルに使いやすいように調整したスタイル。

• Pluc
ギターやハープなどの弦楽器に使いやすいように調整したスタイル。

• Smooth
ナチュラルをより滑らかにしたスタイル。

• Drum
少しダッキング間のあるハードなトランジェントを産みだし、よりハードな印象になる。このスタイルはトランジェントが強くなるので、Clampで微調整して欲しいとのこと。

• Hard
 ハードなアタックで最もアグレッシヴなサウンドに仕上げることが出来る。

• Loud
Openに似ているがよりアグレッシヴなスタイル。ユーザーが定義したアタックとリリースはヒントとして機能して、自動で調整してくれる。

• BUS
マスタリングスタイルと似ているが、よりコンプレッション優位のサウンド。Glueを強調する。

• Mastering
非常に自然なリミッターとして機能する。


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検証してみる

正直なところ、ほとんど公式で言われている通りなので、そこまで検証の余地がないのが実際だが、自分なりにさわってみてここが注意が必要かな・・と思うところについて書いていきたい。

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