曲がらない柱

この話は、ある国で伝わっている、
不思議なお話。

ここの家には、一本の柱が立っている。
それはそれは、たいそう立派な柱で、
街中の噂になっている位だ。

ある人は「あそこの家の柱は、大層立派でとても丈夫なんだそうだ。なんでも、あの東にあるインドに住むゾウとかいう動物がぶつかっても折れないそうだよ。」
また、ある人は「あの家の柱は、見ようと思っても見ることすらできない。なんせ、輝きがすごくて、見たら、目が潰れてしまうからさ。」
そして、そんな話を聞いたある人は、「いやいや、君たち、何を言っているんだい。そんな柱がどこにあるっていうんだ。誰も見たことがないじゃないか。」

そう、この柱を見たものは誰もいない。
いや、正確にはいたかもしれない。だが、誰もその柱が一体どんな形をしているのか、どんな色をしているのか、太さは?どんな手触り?
そう、誰も知らないのだ。知っているのは「その柱にまつわる噂」だけ。

だから、彼は言ったのだ。「そんな柱がどこにあるっていうんだ」と。
彼は、街で一番の元気者、名をジョヴァンニ・ペスタスコッチ。
この名前は、街では一風変わった名前で、一向に友達からは名前を覚えてもらえない。いや、正確に言うと、発音がその地方の人には言えない発音なのだ。だから、いつもあだ名のペニーと呼ばれている。

ペニーは好奇心が旺盛で、何をするにしても、真実を見極めたいと思っている。だから、子供の時は、穴を掘ったらきっと地球の裏側に行けると信じていた。そこで、穴を1m、2m、と掘り続け、遂に5mに達したとき、穴から出られなくなって、街中で「ペニーがいない」と大騒ぎになったこともある。

そんなペニーの好奇心は止まるところを知らず、
町中を探検して回った。そこで、街の真ん中の大聖堂の隣にある、ある老僧が住んでいたという家のことを知った。
そこには、大きな柱があって、それはそれは大層立派な柱なんだそうだ。
当然、ペニーも見たいと思って覗きにいくのだが、
不思議なことに、その家にはドアがない。
いや、ドアどころか窓もない。
そして大きな煙突はあるが、そこは煙突の上に登って見ると、塞がっていて、あのクリスマスに子供たちの人気者のおじいさんのように入ることもできない。

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