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インフォデミックについて考える

新型コロナウイルスの拡散にともない、それを上回る勢いでフェイクニュースが世界中で大量に拡散している。世界保健機関(WHO)はこれをインフォデミック(infodemic: information pandemicの略語)と呼び、警戒を強めている。週末の予定は新型コロナウイルスの影響もあり、暇になったので以前ちょっと気になったインフォデミックについて考えてみる。

インフォデミックの話
WHOは2月上旬の段階でこの発表をしているが、まず僕の理解している範囲で日本でのインフォデミックの影響を考えてみる。

・マスクや消毒液等の品薄
・偏見からくる衝突やトラブル
・トイレットペーパー等生活必需品の買い占め
・コロナには○○が効くといった偽情報

そういった所だろうか。ともあれ私の周辺の実害はほとんどないといってもよい。日本でもちょっとしたトラブルのニュース等を聞くが、まだそこまで深刻ではないように思う。しかし海外のニュースを聞くと、偏見が差別を助長し嫌がらせや追い出し等が日本より激しそうだなと感じているし、地域によっては今後より深刻化する予感がする。

イベントの自粛等で観光や交通を中心に経済に打撃を受けているのはインフォデミックというより、実際にパンデミックの影響だろうし。今後医療が全員に行き届かない国や地域に広がった場合デマがパニックを起こすというよりは、実際に生き死にのかかった深刻な実情がパニックを引き起こすだろう。そうした時は座して死を待つのが最善と言われても、そんな風に受け止めることは出来ない。個々として考えた時、怖がることや騒ぎ立てることまたは勝手に行動することも生存のための最善な行動という場合も多い。それは結果として周りには違う悪影響を生む事が多いだろうけれど。だからウイルスに対する反応をみていて世の中騒ぎすぎ、インフォデミックに侵されているよとは思わない。騒ぎ立てるからみんなの脅威がみんなに伝播するし、いい方向に変わった事もた沢山あるはず。だからこそインフォデミックというワードには何か引っかかりを感じた。

仮想世界が映し出す虚構の人物像
 自分自身を言葉や写真や行動の記録で表現した時点で仮想世界には虚像が作り上げられる。色んなSNSを使っているならわかると思うけれど、同じ人物が特に意図していなくてもSNS毎にまったく異なる人物像が浮かび上がったりする。SNS毎に求められる姿も異なっていたりするからだ。肉体を伴わない虚像が作りだす言葉や物事は、実世界で感じる事の出来ない熱量をハートや親指で表現する。兎にも角にも「誰がどこでどのように発したものなのか」という生産者情報が複雑かつ多様性を持つようになったなと思うところで。生産者の顔が見える農産物はわかりやすいが、一般に流通する加工食品が何を使って作られていてどんなものが含まれているがわかりにくいのと同じことで。

人と情報、意図とウイルス
 情報を人間、意図をウイルスと考えてあれこれと考えてみると面白いなと感じる。そもそも人体には多数の菌もウィルスも常在して生体の一部の様にあるいは一部として共存している。その中で人体に悪影響を持ち、さらに感染力を持つものの拡散をパンデミックと称しているだけだ。インフォデミックの場合も似たようなもので「悪意の紛れ込んだ情報の拡散」と考えられる。
人が情報を捉えた段階で様々な意図が混ざる。「この出来事をそのまま伝えたら自分がつるし上げられるから嘘を交えよう」とか、「事実そのまま伝えたらパニックになるから一部隠そう」とか、「一部歪ませて国どうしの外交に利用しよう」とか、情報に交わる意図は様々だろうけれど。
野生動物を食した事が発生源という事になっているが、まことしやかにささやかれる動物実験や生物兵器説の真偽も現状僕にはわかりえない。そもそも明かされる事のないであろう、その真実にたどり着く事だけでも大変な労力が必要だろう。もし特に追い求めてもいない人に、真実とされる物事が明かされるという事は逆に情報が何らかの意図をもって広められたという事でもあるだろう。
物事は伝聞された時点で誰かの意図が加わり情報となり、本質から遠ざかっていく。無菌状態の情報というのは厳重に保管した上でそれを求める限られた人にしか公開されない。考古学の資料を保存するように。全ての人間は色んなウィルス、細菌と共生して生きているように、全ての情報というのは色んな意図や、意思と共生しているのだろう。
WHOが非常事態宣言を中国忖度で遅らせたという話はよく流れてくるけれど、そもそもあの時点で感染拡大の可能性については言及されていたはずだろう。「人に害をなす意図を持った情報の拡散をインフォデミック」と考えるなら、安全と思わせようという意図をまぎれさせたインフォデミックの源流ではないかという気がしなくもない。ただWHOだってウイルス自体の研究はしっかりされていると思いますし、医学的な話は専門外なのでこれはあくまでこの一つの出来事に対する意見ですが。

人と情報を犯すウイルスと意図
 交通手段の発達によってよりウイルスの拡散力は大きくなっただろうし、SNSや情報テクノロジーの発達で特定の意図を拡散力というのも大きくなっただろう。そして技術を持っていたとすれば、悪用する方法は簡単に色々思いつくなという事も思う。人体にウイルスを感染させパンデミックを引き起こせるだろうし、情報に特定の意図を効果的に紛れ込ませる事ができる。トランプ大統領誕生の背景にはビックデータを活用したフェイスブックを中心とした行動誘発の仕掛けがあったなんて話も有名だ。そしてそれぞれが存在するための力がぶつかりあい多様な生体系を作る。ワクチンを完成させてウイルスに対抗するように、情報に紛れ込んだ嘘を他の正しい情報で取り除くように。またはウイルスが変異して抗体が効かなくなるように、情報が意図に合わせて全く別のものに変わるように。

さて、では普段僕らがメディアやSNS等で日々触れている情報には誰のどんな意図が大きく入りこんでいていて、どんな行動を誘発させられているのでしょうか。
ちょっとした行動の誘発だけでなく僕らの思考ですら、飲み込みまれてしまうという日も本当に近いのではないかと思うと共に、僕らはどう生きたいかと日々考える事が外から取り込まれる自分にとって有害な意図に対抗する手段ではないかと考えます。あたかも生き物がウイルスに自然免疫で対抗していく様に。
大きな出来事の発生により様々な情報が様々な形で僕らにもたらされる、その結果普段考えないような発想や行動が起こるというのも少し興味深い。私もこうして自分も文字にしていたりしますしね。「きっと世界全体の休息期間なのね」と考えて振り返っていろんな事を見つめなおしたり、「これは暮らし方を見直すチャンスだと」これまでと違う事をトライしてみる。また違ったそんなポジティブな捉え方もできる。
大きな視点でみればまだまだ予断を許さないCOVID-19だけれど、個々が持つ視点は口に出したらちょっと不謹慎と言われるようなものだっていいのではないだろうか。

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