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#連続小説【アオハル】〜第三章・願い 3 〜

試験はどうやらホールではなく、いくつかの部屋で行うようだ。受験する高校の名前すら受付するまで知らないでいたのだが、俺が受験するのはスポーツで全国に名を馳せる有名私立校らしい…

(私立薩摩実業高校…俺でも知ってるレベルの有名な学校じゃん。)

ビッグネームに驚いた俺だったが、今の目的は試験に落ちる事である。適当にやって時間を潰すだけ。俺はそれで親孝行したって自分に言い聞かせる作戦にでたのだ。

試験が開始されると、分かる所の回答のみ記入した。それは全体の半分にも満たない。しかし…深く考えなくてもいい問題が、半数近くあるのに俺は驚いた。

(簡単すぎねぇか!?それとも工科学校が難しすぎた…?もしかして…普通の高校ってこんなレベル!?)

複雑な心境のまま俺は全科目を終えた。どの教科も考えなくても分かるような問題が半数を占めており個人採点では50点に届かないくらい。これであれば確実に落ちる。そう俺は確信した。

最後は面接だ。面接室に入ると大柄な男性が1人机に腰掛けていた。

「座ってください。」

「失礼します。」

「鬼木優人君だね?」

「はい。」

「私は重田克彦。お袋さんから話は聞いているよ。自衛隊残念だったな。学校にも行ってなくて高校にも行かないって言ってるそうじゃないか。」

「えっ!?何でそんな事知ってるんですか?」

「悪い悪い!お袋さんはヘルパーしてるだろ?実家に寄った時にバッタリ会って話を聞いたんだよ。」

お袋と重田さんは同じ中学の先輩と後輩であった。たまたま面接官として帰省してる時に俺の話を聞いたそうだ。

「お金の問題だろ?高校に行かないって言ってるのは?」

「そうです。」

「俺もなそうだったんだよ。だけどな…この高校には特待制度がある。俺はこれを使って全額免除で入学して卒業した。全額免除はもう締め切られているが、準特待生として君を迎えるようにする。入学金免除。授業料半額。公立校よりも安く済む。薩摩実業に来なさい。」

「ちょ…ちょっと待ってください!何も聞かされてないですし…今日だって連れてこられただけなんで…」

俺の知らない所で、俺の人生の歯車は動き出していたのだった。

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