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#連続小説【アオハル】〜第三章・願い 2 〜

「優人君。工科学校はダメだったけど…高校は出なきゃいけないと先生は思うの。自分の成長を止める事はしない方がいい。勉強だけじゃなく社会経験としても役に立つから。考え直してみない?」

「俺の家はほら…貧乏だしさ弟も妹もいるから…だから金の掛からない所が良かったんだよね。」

「お母様はお金の心配はしなくていいって先生に話してくれました。優人君が卒業するまで絶対に支払うんだって言ってたんだよ?お母様の言葉を信じてみて、もし…万が一ダメだったら、その時は私に相談したらいい。」

「どうせ無理だよ。先生にまで迷惑かける事になる。」

「優人君の必死な頑張りを見て、お母様は何が何でもこのままで終わらせたくないんじゃないかな?親孝行だと思って高校に行ってみてもバチは当たらないと思うよ?」

親孝行…その言葉に俺は衝撃を受けた。当たり前にいる両親。当たり前にある家族。当たり前に反発して、当たり前に反抗して、当たり前に生活して…でもその当たり前は両親がいたから出来た事なんだと理解した瞬間だった。

ただ、この時の俺は思春期真っ只中である。認めたくても認められないそんな気持ちを抱いていた。だからそれ以降の言葉が出ずにいたんだ。

沈黙をやぶるようにニッちゃんが「到着!」って言って車を止めた。そこは地域最大のホールがある駐車場だった。

(映画でもみるのかな?)

「優人君。コレを持って降りて!」

ニッちゃんに渡されたのは小さめのリュックサック。中身が入ってるのか疑問に思う程に軽い。

「中に受験票と筆記用具、お母様が作ったお弁当が入ってるわ。終わる前にはこちらに戻ってくるから!優人君…頑張ってね!」

「えっ…!?受験!?どうゆう事?訳が分からんのだけど?ニッ…先生!?」

ニッちゃんは車でどっか行ってしまった。

どうやら俺はお袋と先生に騙されたようだ。
負け惜しみだが、変な感じはしてたんだ。
ドライブに行くのにわざわざ制服を着てくるように言われ、その理由として怪しい関係だと思われたら大変だからなんて。
今思ったらそれは逆に怪しいだろ!って話。

さっきのだってそうだ…親孝行なんて言われたら…

(金も無いし…制服だし…暇だし…弁当も食いたいし…適当に落ちるようにすれば大丈夫でしょ。)

俺は会場になっている大ホールへと向かっていくのだった。

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