#連続小説【アオハル】〜第三章・願い 5 〜
「マイク〜!おめでとう!薩摩実業受かったんだって?俺はお前と工業に行くって思ってだんだけどな〜まぁしゃあないか!」
「まぁな。シャンはこれから受験だろ?勉強しなくて大丈夫なんかよ?」
「足し算と引き算が出来たら入れる高校に、かけ算と割り算までマスターしてる俺が、受からない訳ないだろ?アハハハ!」
「イカレてる…でもお前は何とかしちまうからな…まぁ頑張れ…」
あの言葉通りに真也は、勉強を全くしないで合格をもぎ取ってきたんだから本当に凄い。
「おら!遊び行くぞ!大将!」
真也は笑顔で俺の肩を叩きそう言ってきた。真也と遊べるのもあと少し。「しゃあねえな!付き合ってやるよ。」しんみりした気持ちを吹き飛ばすように俺は真也の肩に腕を回した。
三月初旬。
今日は卒業式だ。始めこそ何でもなかったのに時間が過ぎれば過ぎる程、俺は自分の靴を睨む時間が増えたんだ。
そう。涙を堪えるのに必死だったから…
ありがとうの気持ちが涙に変わっていくのが分かった。真也や先生、お袋や親父、弟に妹。
誰が欠けても今の自分にはなってないと思うと感情をコントロールするのが難しくて、余計に涙が出てくる。
周りの人から見たら泣いてるのはバレバレであったと思うが、当の本人はバレないようにって必死だ。しかし、その我慢は卒業生退場の時に崩壊した。
それは、ニッちゃんの「顔を上げて」って声で顔を上げた時だった。ニッちゃんは目を真っ赤にしてポロポロと涙を溢しながら笑顔で立っていたのだ。それを見た瞬間だった。俺の目からは尋常じゃない量の涙が溢れ、そして肩を震わせたんだ。
「先生ありがとうございました。」
恥ずかしくて本心から言えなかった感謝の言葉…あの日ニッちゃんは聞こえていたのだろうか…確認する訳もなく、今でも分からないけど届いていたらいいな。
そして俺は高校生になった。
最後まで読んで頂きありがとうございます。 無理のない範囲で応援をしてもらえたら嬉しいです。 これからもチャレンジしていきますので宜しくお願い致します。