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#連続小説【アオハル】〜第三章・願い 1 〜

学校に行かなくなってからどのくらい経つのか…まぁ数えてなんていないし、そうする気も起きない。学校に行ったところで不合格の不の字が消えることなんて無いのだから。

あの日から俺の1日は惰眠。ゲーム。漫画。テレビ。食事。のサイクルで回っていた。ニッちゃんや真也がしょっちゅう家に来るのだが玄関先で少し話すだけで外に出ることは無かった。

受験までの短い時間で出来る事は全部やったし、手応えは確かにあった。俺の全部をぶつけて負けただけ。悔しさは無かった。次の目標を見つけられる自信が無かっただけ。熱くなれるモノ…それを欲していたんだ。ただ…この時の俺はそれに気付いてはいなかった。

「ショックなのは分かるけど、学校は行きなさいよ。みんな心配してるから。」

「ショック?…ショックなんて無いけど学校に行く理由もない。だから行くわけないし、誰かに心配される筋合いもないから。」

朝のお袋との会話だ。何日もこのような会話しかしてない。俺は完全に抜け殻状態だったので淡々と言葉を使っているだけだった。

そんな日々の早朝、家にニッちゃんがやって来た。こんなに早く来る事なんて無かったから正直ビックリしていた。「少しドライブでもしながら話をしようよ」そんな感じで俺を誘ってきたんだ。

俺はいつものように断りを入れるのだが、今日のニッちゃんは諦めも悪く、全く帰る素振りがない。そんなニッちゃんの姿勢に遂に折れた俺はニッちゃんの車に乗るのだった。

「余り時間が無いから少しだけ飛ばすよ。運転には自信があるから安心してね。それに今日はお休みをもらって来てるの。だから私の心配はしないで大丈夫だよ。」

「わざわざ俺のために休みなんて…」

「あなたの担任なんだから当然なの。それに今日は特別な日なんだから。」

俺の言葉を遮るようにニッちゃんはそう言ってニコニコしていた。車窓から見える景色は海と山並みだけ。いつも見てるはずの景色が今日だけはキラキラしてるような気がした。

最後まで読んで頂きありがとうございます。 無理のない範囲で応援をしてもらえたら嬉しいです。 これからもチャレンジしていきますので宜しくお願い致します。