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地方だからこそ問われる「モラル」の問題/ボランティアや社会貢献にみる地方の弱点

行政然り、福祉や医療も然り、教育も然りである。


公共性の高い分野においては、それを扱う者、プレイヤーとして振舞う者、はたまた、そこでリーダーシップをとる者は、常にモラルを要求されることとなる。
事業の公共性が高まるほどに、その与える影響は大きく、責任は重い。
ゆえに、一般的には、より公的な機関や組織が、公共性の高い事業にあたることとなる。


その点で、ボランティアのように誰でもできる類の個人またはチームが公共性の高い事業にあたる際には、細心の注意が必要であるといえよう。


昔からよく聞くのは、「ボラインティアというものは、事を成した者が、社会への恩返しとして行うものである」というようなフレーズ。
社会での一定の成功を経て、経験も人脈も、それこそ金銭的にも豊かである者が、その余剰をもって社会貢献にあたるべきである、と。

これには一理ある。

なぜか?

それは、モラルを知るという点が、一定の成功を収めた者には担保されているからである。


無論、時代は変わり、若い人が社会における最初の活躍の場として、ボランティア的な業界・分野を選ぶことは増えている。
本来、仕事というものはすべて社会貢献であるはずだと考えれば不自然なことではない。


一方、それでもなお、高い技術や知識、経験を持ち合わせた熟練者、成功者こそが、ボランティアの世界を担うのであれば、これはこれで、やはり社会に大きなインパクトを与えうる可能性は大きくなるといえるだろう。
問題は、そうでない者、前者のような若者や、専門性が低い者、技術の未熟な者、知識が不足している者、経験のない者が、タクトをふるう場合である。

モラルがどう欠如するか?

それは、利他といいながら、利己に落ちるという形で生じる。
社会貢献だ、ボランティアだ、と正義の剣をふるう。たとえばそれは、正義だとか社会的弱者だとかいった形で猛威をふるう。このとき周囲は、正義や弱さを持ち出されることで手を出せなくなる。
未熟な者がそれを行えば、未熟なゆえの毒を周囲に撒き散らし、実は誰かを支援をしているようで、逆に誰かを傷つけてしまいかねない。
やがて、未熟な者は、この正義の剣を盾に、利他ではなく、利己に終始し始める。


次のステージは、自己の欲を満たすという形でやってくる。それまでに社会での実績や認められた経験がない者が、正義の剣の力で、周囲をおとなしくさせ、承認欲求を満たし始めるのだ。
こうした行為は、社会貢献、いわゆる利他の心によって行われる行為ではない。あくまでも、自分の欲、我欲、煩悩を満たす行為に過ぎない。


誰かのため、弱者のため、他人のため、といいながら、自分を満たすことに溺れていく。
しかし当の本人は気づけない。

気づくための、知識や技術、教養や経験が不足しているからだ。
専門性(高い技術と豊富な知識)や経験なしに、「世のため、人のため」といってしまうことの危険性がここに含まれている。

閑話休題。

時代は変わった。
かつては、社会や共同体の、いわゆる一定の成功を収めたものの特権的振る舞いであったのがボランティアなり社会貢献なりであったはずである。

ノブリスオブリージュ。

現在その道は、若者にも、素人にも、十分にひらかれている。

ひらかれているからこそ、要求されるのは「モラル」である。

自己満足に陥らないために、慎重な振る舞いと、より高い専門性が要求されることはいうまでもないだろう。

忘れてはならない。
利他の心は、その者の熟練度、成熟度により、簡単に利己に転化されうる。
そのことを知った上で、物事にあたる。
行政然り、福祉や医療も然り、教育も然りである。
公共性の高いことこそ、細心の注意が払われるべきである。


なお、この点、地方においては、極端な人材不足ゆえにほぼ信頼をおいていない。

長い間、トンデモプレイヤーで溢れかえっている。今に始まった事ではない。


あわせて、政治、行政の側には、この素人の横暴な振る舞いに十分に注意されたし、と警告をしておくとしよう。

新しい公共とはよく言ったもので、たとえ公と民の連携が必須だとしても、公共性の高い分野において、すべてを許容してしまっては、公の役割が果たせないことになりかねない。

民のすべてが聡明であるとはやはり言い難い。

連携するにしろ、慎重な見極め、見定めは間違いなく必要なのである。むしろ公の側の役割はその点にこそある。


私たちは、賢明で崇高な部分と、愚鈍で邪悪な部分を持ち合わせて生まれた。
ダークサイドに落ちないためには、深い学び、より高い専門性、教養が不可欠なのである。

見極めの方法は、その者の抽象度である。
抽象度の高い人物を、どれだけ人材として育て上げ、登用することができるか。


あゝ、これが地方には随分と頭の痛い問題なのである。


(おわり)


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