ノスタルジック・95 ―Windows95登場前夜―

(1995年頃執筆。ミニコミか何かに公表してたと思うけどなんだか思い出せず。懐かしいというより古臭いというか、作ったきり忘れてた20年物の梅酒みたいになってますが、若さが発酵していい感じに笑えるのでタイトルを変えて再掲載。なお、今出川とは同志社大学今出川校地のこと)

 こんにちは、今出川のパソコン人柱です。今月も、何の得もないレビュー記事を書くために、結構苦心してみました。題して、「実用に耐える環境を最低限整えるのにいくらの資金が必要か?なんてね」です。ただし、今回はほとんどWindowsに限ってのことで、Macintoshには言及しません。Macintoshは、あまりにも本体価格の上下動と仕様の変更が激しすぎて、その道のマニアでないとフォローできないからです。僕は既にMacintoshを捨てた身ですから、そこまで気合いを入れてMacintoshを観察しているわけではないのです。まあ、初心者にはMacintoshがおすすめである、という基本姿勢は変わらないのですが、所詮めかふぇちにはMacintoshは可愛げがなさすぎるのです。

 さて、Windowsを使用するのが前提で、といっても、現在のバージョン3.1はすでに新世代のWindows95にとって変わられることが確定しているOSですから、これから購入するならばやはり「それさえ使えればいい」というものではないでしょう。つまりWindows95に対応できて、かつ現在安価にWindowsが動作しているマシンであることが、最低限の条件ということになります。

 その場合、参考になるのはOSのメーカーであるMicrosoftと、CPUメーカーであるIntel、ハードメーカーのCompaqなどが推奨している新規格、PC95でしょう。これは、Windows95のために推賞されている環境で、確か次のような内容だったと思います(Windows95カンファレンスを持っていないのでうろ覚えですが)。

CPU:Intel486DX2/66Mhz以上

メモリ: 12MB推奨

ハードディスク:250MB以上推奨

その他:Plug&PlayBIOS推奨、ステレオ音源推奨、256色以上のモニター推奨。

 いわば、これがWindows95のための最低限の環境ということになります。これは、半年前ならハイエンドのサブノート、中級以上のノートパソコンのスペックでした。当然ですが、僕のマシン、Caravell AV-B5NTは完全に失格です。音源もないし、モノクロ64階調液晶モニターだし、メモリーは8MBだし、ハードディスクは120MB。まあ、全くWindows95が動かないことはないのですが、アプリケーションソフトを書き込むディスクスペースがないなど、どうしようもない状況に変わりはないし、CPUのアンダーパワーもどうしようもありません。Windows95はメモリの量の方に依存するとはいっても、限度があるのです。

 しかし、反対にいうと、最低限のマシンという意味では、このクラスのマシンはおすすめです。何しろ、爆発的に「安い」のですから。

 僕のマシンなら、在庫さえあれば新品でも9万円を切っているはずですし、カラーモデルの方でも10万弱、メモリーのことを考えればカラーモデルがお買い得ですが、どちらにしてもとんでもない安値です。コンパックのコンチュラ・Aeroも似たようなスペックで、最上級モデルでも実売13万円くらい、メモリを増設しても16万くらいですから、悪くない選択です。ほかに、ダイナブックの旧モデルや、ソーテックのウィンブックも選択肢としてはあり、価格的には似たようなものです。僕個人としては、三年保証のあるコンパックか、デザインの優秀なウィンブックをおすすめします。何しろウィンブックは、このクラスで唯一Type3のPCMCIAカードが使えます。また、少し余裕があれば、IBM ThinkPad230CS、OlivettiのECHOSも悪くないです(何せデザインがかっこいいので)。

 ただし、この場合には、Windows95に関して少し不安が残るため、下手をするとWindows3.1を永久に使い続けなければならない可能性もあります。Aeroだけは、Plug&Play対応なので大丈夫かも知れませんが。いずれにせよ、ハンディキャップのあることは覚悟しましょう。

 これよりはましな選択肢と思われるのが、台湾のAcer製のノートパソコンです。

 実際に見たのは店頭が初めてだったのですが、なかなかすばらしい製品です。CPUは486DX2/50、メモリは8MBもしくは12MB、さらにハードディスク260MBで、256色カラー液晶、ステレオ音源を内蔵。ケースもぼくのAV-B5NTよりは頑健そうです(僕のマシンがぼろいという説もあるが)。これでなんと、139800円です。信じられん!

 Acerなんてメーカーを知らないという人のために。一応言っておくと、Acerのパソコン生産高は世界第七位です。そのメーカーのマシンが、この装備で、この値段。後で知ったのですが、このマシンはDOS/Vマガジンの95年4月のBEST BUYマシンだそうです。確かにねえ。たぶん、Windows95とOfficeを一通りぶっこんでも、多少余裕はあるだろうし。カードスロットも、Type2×2もしくはType3×1ですから、拡張性も十分。ゲームだってがりがりでしょう。

 はっきり言って、保証とかオプションの供給なんてことを考えさえしなければ、最強の選択肢、ほかのものを見る必要なんてありませんね。あえていうなら、OlivettiのECHOSくらいは考慮してもいい。値段は二倍強ですが。

 まあ、サポートの悪さなんて、僕のマシンも似たようなもんです。メーカー規模から言えば、Acerの方が圧倒的に信頼できるわけですし。

 というわけで、まあ、こういうマシンと旧型のモノクロプリンタの叩き売ってるのをそろえて、20万弱としましょう。これくらいの予算なら、メモリも最低8MBまではくっついてるでしょうから、Windowsも何とか動作します。エディタとワープロ、表計算ソフトくらいまでなら、何とかストレスなく動作するはずです。なんせ、最低線以下の僕のマシンでも、かろうじてこの辺までは普通に使っています。

 とはいえ、ものには限度というものがあります。ワープロと言ったって、一太郎V.6やWord6なんて化け物は動かせないし(というよりは耐えられないほど遅い)、MS-OFFICEなんて486DX4/100Mhzでメモリ16メガでも完全には動作しないんですから。できるだけ軽いソフトを、しかも効率よく使うのがミソでしょう。

 その場合気をつけたいのは、軽さや値段ももちろん、ソフトがOLEに対応しているかどうかです。とりあえずOLEをサポートしていれば、Office商品と似たようなことはできるのです。できれば、クライアントとサーバの両方に対応しているといいのですが、低価格ワープロはクライアントにしか対応していないものがほとんどなようです。

 さて、実際に商品を見てみると、選択肢は意外に多いようです。

 まずワープロですが、これはオーロラエースかプラズマヴィジョン、WX-WORDの中から選択するのがいいでしょう。どれも6000円くらい、結構高機能です。特にオーロラエースは表計算モジュールのオーロラカルクと、入力メソッドのKATANAが付録に付いてきますから、いい買い物だと思います。プラズマヴィジョンは、多少表示がわかりにくい気がしますが、ドローソフトが付録で付いてくるので悪くありません。ちなみに僕自身は、プラズマヴィジョンの愛用者です(といっても、ほとんどWZエディタで印刷までやっている)。WX-WOORDは、標準の入力メソッドとの相性がいいようですが。それは要するにMS-IMEがWX2そのものだというだけの話です。

 こう言ったワープロソフトを中心にして、次にその周辺を固めてゆきます。

 パソコンと言えば表計算、というくらいだから、まずスプレッドシートを考えましょう。これは、三四郎で決まりです。9800円という値段だけ見ると、アカデミーパックなら123やExcelもほぼ同じ値段です。ですが、この選択には大きな理由があります。なんと単体パックでも売っていたATOK8が同梱されているのです(CD-ROM版のみ)。これは、大きな差です。何しろ、日本語を扱うのが主になるのは目に見えていますから、優秀なインプット・メソッドは必要です。ATOK9には及ばないにせよ、ATOK8だってほかのメソッドと比べれば(好き嫌いは別として)相当優秀なのです。単体のATOK8が9800円であることを考えれば、三四郎までおまけについて来るという言い方もできます。三四郎自身の機能も、さすがにExcelには勝てないにしても、123とならいい勝負ができるレベルのものです。あえていうなら、SuperOfficeの特別版(定価98000円が30000円になっていて、123とアミプロとフリーランス、オーガナイザーがセットになっている)を買ったとか、プリインストールモデルだったとかいう以外には、123を使ってる人なんていないんじゃないでしょうか。Lotus自体、IBMに買収されちゃったし。という訳なので、表計算ソフトは三四郎で決まりです。

 これ以外で、通常Office製品に含まれているのは、プレゼンテーションソフトとデータベースです。Lotusにはアプローチとフリーランス、Microsoftにはアクセスとパワーポイントがあります。これらの製品の代用になるものは、結構少ないです。

 まず、プレゼンテーションソフトですが、はっきりいってフリーランスやパワーポイントみたいなタイプの安価なソフトはありません。しかし、ジャストシステムが花子をそういう位置づけにしていることから、ドローソフトで代用できるように思われます。マクロの代わりにFillyのようなフリーソフトのオーサリング・ツールを利用すれば、それほど表現力に差は出ないと思います。Macintoshならば迷いなくマイケルドローなのですが、Windowsの場合はこの手のツールがオンライン上でも結構多いので迷いがあります。しかし、一応パッケージソフトに限って考えてみると、G-CREWというソフトが良いように思われます。これもプラズマヴィジョンと同じメーカーの商品ですが、低価格でなかなか高機能です。ただ、大量のテキストの流し込みはできないようなので、字の多いプレゼンテーションには向きません。そういう人は、パーソナル編集長やページれいあう太と言った、簡易DTPソフトの方をおすすめします(その場合には、ワープロソフトをやめてドローソフトとDTPソフトという組み合わせも考えられるのですが)。

 問題は、データベースです。

 これも、安価なものは売ってません。せいぜい、統合ソフトであるチャンピオン2ワークスにデータベースモードがあるくらいですが、僕はほとんど使っていません。しかしこれも、三四郎のデータモードと、GREP機能付きのエディタ、画像管理ユーティリティを上手に組み合わせることで代用できそうな気がします。実際、僕はほとんどWZエディタのGREP機能でデータベース的な使い方をしていますし、テキストデータベースという思想はいまだに有効なものでもあります。ただし使ってみた感じ、オンラインソフトの秀丸エディタの方が、やや機能的に優秀な面もありますから、WZが無条件で推奨できるわけではないのですが。ともあれ、エディタソフトにそういう機能は十分に内蔵されています。

 これで一通り、Office製品でできることはできるようになります。結局いくらくらいの値段になるかというと、ワープロ6000円、表計算1万円、エディタ1万円、ドローソフト7000円で、およそ33000円、実売ならちょうど3万円くらいのものです。

 何だ、結局LotusSuperOfficeと変わらない値段になってしまった。

 まあ、まだ手にはいるなら特別版のLotus・SuperOffice、それがダメならこの組み合わせということになりますね。それに、フリーソフトのRyu's menuをシェルとして使うようにすれば、裏Officeの出来上がりです。プラズマ+三四郎+G-CREWの組み合わせなら、プラズマを中心にOLEを使った環境を利用できますから、メモリーをできる限り増設しておいた方がいいのはいうまでもありません。

 いずれにせよ、Windowsの場合、最初の段階でのソフトウェアへの投資は3万円くらいが基準額のようです。

 以上のようなことから、実用に耐えるWindows環境の構築には、最低20万円程度の投資が必要ということが言えるようです。うまくやりくりすれば、15~18万くらいでも可能かも知れません。まあ、叩き売りの最終ロットでもない限りMacintoshではこういうことは不可能ですから、DOS/Vの本領発揮という感じですね。

 たぶん、Windows95の登場と共にもう一段の値崩れが期待できますから、もっと安くまっとうな環境を手に入れられる日も来るかも知れません。僕自身でさえ、ほかにSCSIカードとCD-ROM、ハードディスク(外付け)をくっつけて、それでも26万くらいの投資ですんでますからね。Macintosh時代の損失分は取り戻したかも知れない(^^;)。

 まあ、ゲームよりは実用ソフトの利用を重視していて、あまりお金がない人はどうぞ。ただし、これらの低価格ソフトはほとんど利潤なしの場合が多いので、違法コピーだけはしないように。

P.S 僕は、パソコンは四六時中持ち歩いてなんぼという発想の人なので、デスクトップは眼中にありません、あしからず。なお、価格その他は、京都寺町J&P及びOAシステムプラザ調べです。

 以後の調べで、MacintoshのPowerBook520が16万円と言うのがありました。うーん。SCSIボードまで内蔵していることを考えると、悪くない選択かもしれない。しかも、Windowsを動かすなら、PowerPCにしてソフトWindowsで動かすという邪道なまねもできるし。

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