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【沼】ゴスペラーズはかっこいい。世界一かっこいい。【5つの真実】


はい、今日取り上げるのはゴスペラーズです。


1994年のメジャーデビュー以来変わらぬ初期メンバー5人で
25年以上も活動を続ける男性グループ。

えっ、25年??
 
 
そう、ただでさえ移り替わりの激しい音楽業界。
25年同じメンバーで活動し、今なお現役というのは、
それだけで奇跡のグループと言って良い。
 

活動期間が長いだけあってメディア露出も中々に多い。
広く世間からの認知されている(と思う)。
 
 
周りの人に写真を見せれば大体「ゴスペラーズでしょ」と答えてくれるし、
「どんなグループ?」という問いに対しても、「歌の上手い本格コーラスグループ」という方向で、大体のところは認知されている気がする。



 そうそう、大体そんなかんじ!
合ってる合ってる!! ^_^



一言言いたい。


甘いですよ。



この5人が、どれほどのご婦人たちを沼に叩き込んできたか。
あなたは分かっているのか。


沼にはまる婦人(イメージ)



今や満面の笑みで肩まで沼に浸かっている婦女子各位の誰もが、当初は彼らをただ「歌の上手い5人組」と認識していたに違いないのだ。
 
 
たしかに広く認知される一方でこのグループ、誤解されがちな面もある。
特に上記のような「名前は知ってるけど深くは知らない」層で、それが顕著である。
 
 

そこで、今回は 

  • 男でありながら中学時代からのゴスファン

  • 自身もアカペラ奏者(ゴスのカバーも多数)


という筆者が、

「ゴスペラーズって、実はどんなグループ?」
「ゴスペラーズって、実際どこがすごいの?」



ということを伝えるために筆をとった次第である。
そう、全ては自己満足のために。
そして、一人でも多くの沼の住人を増やすために。



…とはいえガチゴスマニアの方からすれば、「そんなの当たり前でしょ」と一蹴されてしまうような内容かもしれませんが、どうか寛容な目で見て頂けたら幸いです。


 

1.ゴスペルを歌う→歌わない


 
まずはシンプルなところから。「え?」と思われるかもしれないが、そもそも彼らはゴスペルを歌わない。はい。歌いません。


いや、もしかしたら過去に歌ったことはあるかもしれないけれど、
少なくともそれに特化したグループとは言い難い。

 
これはそもそも「アカペラ」と「ゴスペル」が混合されがち、というところが一つあるんですけど、
 
まずアカペラは、単純に無伴奏のこと。
楽器による伴奏が無く歌だけなら、それがアカペラ。
だから極端な話、サッカーの試合前なんかでやる無伴奏の国歌独唱も、あれはもうアカペラです。


ただし日本で急速にアカペラは認知されたのは、かの有名な「ハモネプ」の大流行がきっかけでして、その流行の中で、

「アカペラ=5人前後のメンバーがそれぞれ別のパートを担当し、演奏するスタイル」

という認識が自然に刷り込まれたように思います。

大衆音楽における「アカペラ」イメージ



 
対してゴスペルは、その語源がGod spell(=福音)であるように、
教会音楽に端を発する、讃美歌がその起源。
 
これも新たな議論を生んでしまうリスクはあるけれど、
映画「天使にラブソングを」をイメージするのが一番わかりやすい。
 
情熱的で、リズムが強くて、コール&レスポンスを多用。
伴奏はあってもなくても良い。
ただし、歌詞は神を讃える内容。そんな音楽。


「ゴスペル」イメージ。

 

ここでゴスペラーズに話を戻しますが、彼らが讃美歌を歌っているところを見たことない。一部のクリスマスソングとかでそれっぽい曲を歌ったりはしたかもしれないが、少なくともグループ名に冠するほどの距離感ではない。


じゃあなぜ「ゴスペラーズ」なんて名前なのかというと、
それは…うーん、一種のノリかなぁ…。
 

だって、彼らは早稲田大学のサークル時代に結成したグループである。
ノリでグループ名をつけることもあるだろう。

 
ちなみに、ネットで「ゴスペラーズ グループ名 由来」で調べると、
以下の解説が出てくる。

ゴスペルの持つ言葉の力強さにあやかり、『Gospeller(福音伝道師の意)』と称し、それを複数形のsを付けて「The Gospellers」とした。

ゴスペラーズリーダー:村上てつや氏の言葉


 
おそらく、「ゴスペルを歌わないのにゴスペラーズとは??」という何万回と投げられた質問への苦肉の策として用意した、後付け説明と思われる。

学生時代、ノリでつけちゃったグループ名の説明に大人になってから苦心するリーダー(グラサン強面)(でも目は可愛い)を想像するとそれはそれで萌える部分があるが、それはさておき。
 

何はともあれ、今日の彼らの音楽はゴスペルとは別の所にある。


ちなみに、日本で「ゴスペル=アカペラ?」の混合が異常に起きやすいのは、まず間違いなく彼らが原因です。


2.日本を代表するアカペラグループ→ボーカルグループと言うべき



 
関連してもう1つ。
ゴスペラーズを「アカペラグループ」と指す方も多いが、彼らがアカペラを活動のメインに添えてるか?と言われると、実は意外とそんなことはない。
 


「アカペラグループ」とはPENTATONIXや、日本ではRAGFAIRのように、基本スタイルとしてアカペラを採用しているグループを指す言葉だろう。

ライブでは基本メンバーの声だけ、みたいな。
 

たとえばこの並びにリトグリを入れると、ちょっと違うような。
この感じ伝わるでしょうか??



話を戻します。


たしかに彼らは早稲田のアカペラサークル出身だ。
しかしデビュー後リリースした楽曲を見ると、声以外の楽器、いわゆるオケが入ったものが圧倒的多数であることに気づく。
 


もちろんリードをまわしたり、バックコーラスに入ったりと、5人はそれぞれの歌唱で参加しているが、そのどれもがオケと合わせる前提のコーラスワークをとっている。


つまり彼らのことは、
「アカペラグループ」ではなく「ボーカルグループ」というべきだろう。


もちろん前述のとおり、彼等の結成は早稲田大学のアカペラサークル。
当初は「アカペラグループ」としてのスタートだったのは間違いない。
そして、ここが最大のミソである。


「アカペラ」というスタイルにゴスペラーズがとってきた距離感としては、大雑把にこんな流れがある。↓

早稲田で結成(この時点ではアカペラグループ

1994年、レコード契約。CDデビュー(オケあり)

基本的にオケありの楽曲をリリース。ただしテレビではアカペラを武器に、「笑っていいとも」や「夜もヒッパレ」といったバラエティ番組を中心に露出を増やす

2001年、アカペラ曲「ひとり」がオリコン3位の異例のヒット

基本オケありなのは変わらずだが、アカペラ曲もコンスタントにリリース。
この時期にハモネプブーム到来。追い風を受け、アカペラ曲のみのアルバム、「アカペラ」をリリース。

ベスト盤「G10」リリース。
オケ、アカペラの双方にファンから愛される楽曲が多数揃う。
ライブではオケ有り曲→アカペラ曲と時間を分けるのがお決まりに。

基本はオケあり、ステージに応じてアカペラも使い分ける。
近年では某ロックフェスで、異例のマイク5本のみ、オールアカペラのセトリで参戦。また、The First Takeでは「ひとり」、「VOXers」の2曲を選出するなど、ここぞという勝負所でアカペラをかます戦法が定着。




「ヒット曲多数のアーティストでありながら、アカペラでも第一人者」
「普段はオケで歌うが、5人のアカペラだけでもステージができる」


この絶妙なポジション取りこそが、彼等が今の地位を築いている大きな要因ではないか。


 
意外と制約の多い「アカペラ」という奏法への固執を
早い段階で(良い意味で)捨てたことで、


普段 → オケ有りの楽曲を披露
ここぞというとき → 必殺のアカペラ


と、アカペラを制約ではなく、むしろ武器として使うことに成功している。


大きな声では言えないが、ハモネプ全盛期にデビューした多くのアカペラグループがその後のアカペラブーム終焉と共に姿を消していったのを考えると、ゴスの先見の明、そしてバランス感覚はやはり秀逸だ。
さすが早稲田…!(一部違うけど)
 

3.ルーツはクラシック?→強いて言えばブラックミュージック


  
ゴスペルは歌わない。
アカペラにも固執しない。


では彼等はどこにルーツを持つのか??



ビシッとスーツで決めるフォーマルなイメージもあるから、クラシックの人たち?とも思われがちだが、実は違う。
 

彼らは明らかにブラックミュージックにルーツを置くミュージシャンだ。
 

もちろんメンバーにより多少の趣向の違いはあるので、クラシックにルーツが無いとも言い切れないが、(特に北山さんは故坂本龍一氏を師と仰ぐ等、クラシックへの造詣も深い)


少なくとも、リーダーの村上てつや氏、そして皆大好き酒井雄二氏の2名からは、ソウルミュージックやR&Bの影響を伺うことができる。



その影響は、「リズム」や「グルーヴ感」という点で、彼らのステージングに色濃く体現されている。早い話が、彼らはステージで踊るのである。
 
 


 
踊るゴスペラーズが驚かれる理由は、おそらくこの辺にある。


おそらく、ゴスペラーズをクラシカルな声楽グループと認識していた方は、例えるなら千の風になっての秋川雅史氏が踊り出したような衝撃を覚えたのではないか。
 
 

このダンスも、我々が馴染みあるヒップホップ系のダンスとは系統が違う。現代風に洗練されているが、ルーツの部分には60年代のモータウン等に端を発するコーラスグループを思わせる振り付け。
 
必要最小限で心地よいグルーヴを体現する様は、キレや鋭さというよりは、大人の色気を追求したダンスである。



これは技術的に簡単な振り付けを採用しているという単純な話ではなく、(もちろん技術の問題もある)彼らの「ルーツ」と「リスペクト」はどこに重きを置いているか、という話だ。
 
 
つまりゴスペラーズは、根源的なソウルミュージックを体現することができる、日本では数少ないミュージシャンである。


2ndアルバムにしてSam & Daveの「Soul man」をアカペラでカバーしてのける胆力は、並大抵では無い。


4.カバーが得意→そうだけど…真骨頂はオリジナル


FNS歌謡祭などで、名曲のカバーを披露することも多い彼ら。
 

伴奏ありにせよ無しにせよ、歌唱力抜群の男ボーカル5人というのは、それだけで強力なフックになるし、そもそも彼らはアカペラサークル出身。
古くは「夜もヒッパレ!」の頃から、ポップソングを自分たち流のハーモニーワークに落とし込むのはお手の物だ。


※「夜もヒッパレ!」:90年代後半に放送された、歌手やタレントが当時のヒットソングを歌いまくる、芸能人のカラオケ大会のような番組。


 

しかし、彼らが本当にすごいのは、その創作力にある。


これ、声を大にして言いたい。


25年間ノンストップでオリジナル楽曲を量産し続けてきた事実は、結構やばい
。結果として、「ひとり」「永遠に」「ミモザ」といった、ゴスペラーズをよく知らない層にまで知られている楽曲は数多くある。


そして特筆すべき点として、彼らのヒットソングには、自らライティングしたものも数多く含む。彼らは5人とも、作詞作曲のいずれも手掛けるソングライター集団でもあるのだ。


個人的にはこの点が、ゴスペラーズが他のボーカルグループと一線を画した一番の決め手だと思っている。


5人が5人とも、しのぎを削りあって25年もの間オリジナル曲を生み出してきたグループを、僕は他に知らない。


そしてその5人とも、

 

・美しいラブソングのメロディメーカーである黒沢さん
・クラシカルなアプローチで音楽の美しさを追求する北山さん
・ソウルミュージックを武器にここぞという時勝負曲を決める村上リーダー
・詩的に振り切った作詞能力で世界観を確立する安岡さん
・誰も想像のしないアプローチで中毒性の高い曲を作り出す酒井さん



と、それぞれ個性が爆発しているのも素晴らしい。
グループ内に複数のソングライターがいるときは、大体誰の曲が採用されるというのが偏ってしまいがちだが…

彼らの場合はどのメンバーの楽曲もコンスタントにアルバムに収録される。グループ内で健全な創作の競争が生じている証拠である。


そういえば彼ら、バラエティ番組に出ても5人が5人とも均等に喋る。
Youtuberでさえ5人もいたら発言回数が偏ってくるのに。

メンバー間の配慮とかリスペクトに溢れた、良い関係なんだろうなと思う。



5.ライブ中ずっと歌ってる→5人ともすげー喋る



上記を書いていて思い出しましたが、5人ともMCで凄い喋ります。


この辺り、アカペラサークル出身というのを強く感じる要素である。

アカペラっていうのは常に互いの出方を見たり、バランスをとろうという意識が不可欠な音楽である。声というのは繊細なので、そうしないとすぐハーモニーが崩壊してしまうのである。


ゴスペラーズのMCはまさにその精神に溢れていて、誰かがメインで喋る時は他は聞き役に回る。それでいて良いところで相槌を打ったり、たまにボケてみたり、かと思えば誰かがちゃんと突っ込んだりと、

役割が縦横無尽で、誰一人無駄がないのである。


そんなグループのライブが、楽しくないはずがない。

彼らのライブは驚異のリピート率を誇るという。
現に筆者の周りは、ゴスのライブへ2回以上行ったことのある人ばかりである。


※筆者の交友関係は主にアカペラを軸に成立しています。

6.総括



というわけで、今回はゴスペラーズを取り上げてみたが、筆者の愛が重すぎて5000字を超える記事になってしまった。
何の気なしに読み始めた方にとってはカロリー過多ではないかこれは。
体調の優れない方は読まない方が良いのではないか。


いずれにせよ平均年齢50歳を越える野郎グループに30代の男がここまで夢中になっているのである。
これを素晴らしいと思うか気色悪いと思うかは議論の分かれる所だと思うが、ここまで記事を読んでもし気になった方は、ぜひゴスペラーズのライブに参戦してほしい。そしてあわよくば、この沼に一緒に浸かってみませんか?一回だけで良いから。


この沼はほら、温度もちょうど良いし、優しい人が多いし。
気持ち良いですよ。


さあ。さあ。



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