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【ハモネプ2024レビュー】ハモネプは賞レースではなく、〇〇〇である。


※ネタバレしかない記事なので、未視聴の方はバック推奨!!




こんにちは。考える犬です。

先日放送のハモネプ2024について、少しだけ語ります。


前提として、これから語る内容は「ハモネプ」というプロジェクトおよび演者様、製作陣の皆様への大きなリスペクトが根幹にあります。誰も傷つかない内容だと思います…たぶん。だといいな。




今回感じたのは、「どんどん誠実な番組になっていくなぁ」ということ。少し前のハモネプは演者の意図と関係なくルックス等でバンドをキャラづけたり、審査員として音楽と関係ない方が座り、稀に理屈の通らない批評をしたりと、良くも悪くもTVショーとして盛り上げる姿勢が強かった。




しかしここ最近、そうした傾向はどんどん薄まり、「変に味付けせず、ありのまま演者の魅力を伝える」方向にシフトしてきた。真偽は分からないが、制作勢にかつてのハモネプ出演者(音響関係だったかな?)が関与しているとも聞いたこともある。良い変化を目指し内部改革している気配を、ひしひしと感じる。


同時に感じたのが、「ハモネプはあまりに巨大になりすぎた」ということ。JAMやアカスピにKaja等、アカペラ界には多くの賞レースがあるけれど、その中でもハモネプの知名度はあまりに大きい。圧倒的と言える。これは、漫才におけるM-1の立ち位置と非常によく似ていると思います。


例えば「さほど熱心なお笑いファンでなくともM-1だけは見る」という人が多いように、アカペラにさほど興味が無い人にも、ハモネプは知られている。注目を集める。アカペラ界では独占状態と言って良いほど、あまりに知名度が圧倒的となってしまった大会なのです。


すると何が起きるか。レベルのインフレです。今回本戦に残ったのは、どこもプロと遜色ないと言って良いクオリティなのは間違いない。そしてさらにそこからもう一歩踏み込むと、50組→25組と絞られていく中に、死ぬほど上手いバンドはゴロゴロいた。背徳の薔薇、Rabbit Cat、SMELLMAN、それにじゃーんずΩが。容赦無く落選した。


これらのバンド、実績がありすぎて、普通の賞レースなら参加を断られ、ゲスト枠として出演依頼されるようなバンドたちである。一般のアカペラ大会にRAG FAIRが出演しようとしてきた、と言えば伝わるでしょうか。「あなた方が参加するなんてめっそうもない!」みたいな。


しかしハモネプで本戦に進むのは「技術が高い上位12組」とは誰も謳っていない。敢えて言うなら、「番組として取り上げたい12組」であることを忘れてはいけない。ハモネプは「アカペラ日本一を決める」TVショーであって、「アカペラ技術日本一をガチで決める大会」ではない。



本戦に触れます。決勝に残った4組。どのグループも抜群のクオリティだったという大前提はありつつも、技術・安定感・パフォーマンス力としては、韓国勢のNarinが際立っていたし、アレンジ力やバンドコンセプトという点では夜にワルツが洗練されていた(と思いました)。実際、審査員採点の時点ではNarinがトップだった。


しかし、今大会を制したのはBam B crew。リアルタイムでの視聴者投票でトップをとり、逆転した格好だ。…いやでもとても良くわかるよ!その心理。もし自分も、投票するなら彼らに入れていたと思う。



これは、やーさんの「最近のハモネプは上品すぎる」という(演出としての)煽りが共感を呼んだ部分もあるし、何より第3回大会で優勝した彼らが、15年を経て尚歌い続け、久しぶりの舞台であの頃と寸遜色無い演奏を見せてくれたというエモさに心動かされた票が多数存在すると思う。言うなれば「歌い続けてきたこと」が感動を呼び、優勝に繋がったというわけだ。


しかし…それを言ってしまうと、じゃあ8Lawや夜にワルツはどうすれば良かったの…?という話でもある。彼らは彼らで濃密な時間を過ごしてきたことは間違いないが、いかんせん重ねてきた期間が違う。これはもう、事実として。


何が言いたいかというと、ハモネプはスキルが飽和しているからこそ、そのバンドのストーリーを評価する側面が出てきてしまっているということ。評価基準が常に(おそらく意図的に)曖昧なのだ。そして、もし単に技術を競うだけの大会なら、この本戦に進める12枠というのはあまりに少なすぎるのだ。


だからこそ注意したいのは、「ハモネプに出るのが夢だった」という若者が目指すには、ハモネプは狭き門になり過ぎているということ。学生限定の回ならともかく、今回のように無制限だと、インフルエンサーみたいな人ばかりの大会になってしまい、新規参入者が入る余地がだいぶ厳しいのである。


そのために僕らはこう考えておいた方が良い。
…これ、本記事で一番言いたい内容である。


即ち、「ハモネプはお祭りであり、賞レースではない」と。


あらゆるバンドが共演する夢の祭典。それがハモネプ。出演を夢見るのは素晴らしいことだけど、それだけを目標に血眼でアカペラに取組むと、なんだか味気ない大学4年間になっちゃうよ。


ハモネプでは、せいぜい各バンド2分。それはアカペラの楽しさのほんの一側面である。アカペラでできること…例えば30分かけて一連のパフォーマンスを考えるのも面白いし、ステージでアカペラと劇やコントを融合させてみてはどうか。オリジナルソングを作っても面白いかも。アカペラの可能性は無限大だ。


そういったアカペラの楽しみ方と全く並列に、ハモネプは存在する。ぜんぜん唯一無二のものではないのである。音楽は自由で、アカペラは実はそのイメージと裏腹に自由を見失ってしまいがちな奏法だからこそ、広い視野で色々やるのが、きっと楽しい。それでこそ音楽だ。




…以上、長くなってしまったけれど、ハモネプを見ての所感でした。
最後に1つだけ、今後の要望を言わせてください。


それは、「生放送はやめてほしい」ということ。理由は2つで、

・音響的にリスキーだから
(1組、音響トラブルで最初の音が放送されていないグループがあった。あれはあってはならない。
(また、今回あまりに低音が絞られていた。ベースパーカスが厳しい音響だったと思う。ただそれはTVから聞こえる音で、おそらく現場での聞こえ方は相当違ったのだと思う。収録ならば、そうした音のバランスも綿密に調整した上で放送できる

・北山さんのコメントもっと聞きたかった😭


ということ。以上です。



色々語ってしまいましたが、総じて素晴らしい大会でした。


出演者への純粋な尊敬のほかにも、懐かしさや羨ましさなど、色々な思いが溢れ、しばらくぼーっとしてしまいました。

演者やスタッフの皆様、本当にお疲れ様でした。

そしてBam B Crewの皆さん、優勝おめでとうございます。
最高でした。

以上、考える犬でした。


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