ウール着物は暖かいです。

目次

1、ウール着物とは何ぞや?

2、ウール着物の特徴

3、ウール着物の具体例

4、まとめ

1、ウール着物とは何ぞや
名称だけでも比較的想像しやすいのではないでしょうか。読んで字のごとく、羊毛、つまり羊の毛を平織りにして織った着物の事です。洋服では知られている素材ですが、きものにあったの?なんて疑問に思う人も多いかもしれないですね。答えを申しますと、着物でも、羊毛生地はあるんです。ただ、ウールという名称は、戦後ウールマークが考案された時につけられた名称で、日本ではセルと呼ばれてきました。今でも、呉服屋さんではウールとは呼ばないでセルという名前で販売しているお店も少なくありません。
どういう生地なのか気になるところですが、海外で作られているサージと全く同じです。と、言いますのは、日本では羊がいなかったため、毛織物を海外から輸入してくるしか入手する方法がなく、海外で作られているサージを、そのまま輸入してきただけだったからでした。明治初頭、アルファベットに慣れていなかった日本の呉服商が、誤ってサージ(Serge)をセルジと読んでしまい、それが略されてセルと呼ばれるようになったのです。
しかし、ウール着物つまり毛織物でできていた着物は、明治よりもっと前から存在しておりました。もともと、毛織物が日本にもたらされたのは、鉄砲伝来とほぼ同時期です。そのころは、羅紗と呼ばれて、戦国武将が陣羽織の原料として使用していました。その後江戸時代になると、日本は鎖国状態になりますが、長崎をとおしてオランダから毛織物が持ち込まれており、なのでわずかながらに毛で作られた外套などが販売されていました。医者や裕福な商人などがこの生地の着物を入手して贅を競ったこともあり、江戸幕府から禁止令を加えられたこともあったのだそうです。この時はサージという名称ではなく、「唐縮緬」という名称で売られておりました。素材が輸入に頼らなければならなかった時代でしたので、大変に高価であり、相当な金持ちでなければ、入手できませんでした。なので、この唐縮緬の着物を着るほど金持ちで、しかし定職についていない人の事をからかって「縮緬ゴロ」という言葉まであったそうです。このころは、羽織も、金持ちとか権力があることを示していましたから、「羽織ゴロ」という同義語もありました。
まあ、そういう訳で、江戸時代にも、わずかばかりにウール着物というものはあったんですね。何回も言いますが、相当な金持ちでないと買えませんでしたけど。
で、明治時代になると、唐縮緬という言葉は廃止されて、サージで取引されるようになるのですが、先ほど述べたように、セルジと誤読され、毛織物はセルと呼ばれるようになり、これは戦中まで続きました。戦後になって初めてウール着物と呼ばれるようになったわけです。
こう考えてみると、意外に歴史の古い着物で、しかも江戸時代までは高級品だったというから驚きですね。はて、今はどうなんだろうと思いますと、セルは、比較的格が低く、普段使いくらいにしか使えないという人が多くいます。
まあ確かに、毛に特有の性質として、虫に食われやすいという大きな弱点はありますが、そこさえカバーできれば、ウール特有の暖かさは正絹では敵いませんし、色や柄も独特で面白い着物だと思います。絽や紗など、夏に特化した生地はたくさんありますが、冬の寒さに強い生地はウールしかありません。唐縮緬時代のことを考えれば、もう少し、順位を上げてもいいのではないのでしょうか。比較的値段も安く、かわいらしいものもありますから、着物の入門編としても、十分使えます。

2、ウール着物の特徴

ウール生地の特徴としては、つるんとしてはおらずざらっとしていて、首周りなどにはセーターと同じようなチクチク感があるという特徴があります。ほとんどが単衣仕立てですが、寒い冬でも、単衣のまま、十分外へ行けてしまうのが、ウールのすごいところですね。また、ウールは、染色するときに、絵の具を高い位置から垂らした時のような、液体の広がり方をします。これをぼかしといい、ほかの着物と見分けるときに重要なポイントです。ブランドとしては、浜松ウール、しょうざんウール、源氏ウールなどあり、九州を本拠地としているブランドが多いです。
現在、立場的に低いと言われているウール着物ですが、こうしてみてみると、歴史の古い着物でもあるわけで、なんだか、悲しい気持ちがしてしまいます。もっと着物を身近なものとして来てもらうためにも、ウール着物を悪くいうような風潮はやめてほしいものです。ウールは格が低いと言われがちですが、先ほど申しましたように、冬の暖かさは抜群です。そこをもうちょっと考えると、冬用の着物として、もうちょっと、規制を緩和してもいいのではないかと思います。

3、ウール着物の具体例

画像1

黒に、もみじを入れたウール着物です。格が低いと言われてますが、このように良い柄とされるもみじがたくさん入っています。確かに柔らかい系の着物のような美しさはありませんが、これはこれで素朴でよいのではないでしょうか。帯は、半幅帯を合わせましたが、名古屋帯などでもいいのではないかと思います。格がどうのより、相手にどれだけ好印象を与えることができるか、を重視すれば、ウール着物も少し出番が増えるのではないでしょうか。

4、まとめ

・羊の毛、いわゆる羊毛を糸にし、平織りして着物生地にしたもの。羅紗、唐縮緬、セルなど、多くの別名がある。

・格が低く普段着程度しか使えないと言われるが、かなり歴史の長い、古くからある着物である。虫に食われやすいので防虫対策を忘れずにする。冬は暖かく、防寒対策としては抜群。

・帯は、半幅帯でよいが、名古屋帯などを使ってもかまわないと思われる。

いかがでしたでしょうか。ウール着物は格が低いと言われますけれども、寒い冬には、もってこいの着物であることは間違いありません。格が低いからいやだではなく、実用性を取れば、もっといろんなところに着ていくことは可能です。偏見を持たず、楽しい着物生活を楽しんでください。



拝読有難うございます。何かの参考にしてくだされば嬉しくもいます。