10日目 朝と夕方の手術説明

朝起きると身体が痛い。寝返りが自由にきかないためだ。ベッドの背を少し起こしているせいかもしれない。完全にフラットな状態で寝ると、むせこみやすいのだ。寝起きのぼんやりと中(といっても夜はあまり眠れない)、6時頃には朝の栄養剤がはじまる。その時間はだいたい2時間。明治のメイバランスをいっつものように胃瘻チューブに接続して、ポタポタ点滴みたいに摂取する。途中で薬を注射器で入れる。終わってからの時もある。そして抗生剤投与。この間はだいたいぼーっとして過ごす。7時代には整形の担当の先生が様子をみにきてくれる。ぼーっとしていた頭がそこでスイッチが入る。足指の運動、左手ほぐしをはじめて、身体と脳を起こしてく。というのが日課になりつつある。

朝9時、手術説明のために母、夫、義父が来てくれた。まわりの荷物の整理を少し手伝ってもらった。説明が始まり、造影剤を投与した上でのCT検査をすることになった。予定していたお茶ゼリーはお預けになった。

リハビリ。言語聴覚療法士(ST)さんによる知能検査とおはなし。しゃべれないけど、筆談で会話する。おしゃべりをするのは、気分転換になる貴重な時間だった。理学療法士(PT)さんは、担当が変わったので、改めて私の身体の様子を確認してくれた。

病院にはたくさんの職種の方が働いている。ちなみにここは、救急専門の病院。医師、看護師、介護スタッフ、清掃員、事務員、移動販売員、薬剤師、リハビリスタッフ(OT ST PT)、患者、お見舞い・・・。いろんな人の声、作業の音、機械の音、ナースコールの音、笑い声、怒った声など、賑やか。今まで出会ってきた人にそっくりな人が何人もいて、パラレルワールドに来ててしまったようだ。妙な親近感を持つ。初対面のはずのに。

夕方、2回目の手術説明。(実は明日の手術は頬は形成外科、顎は口腔外科と、分野がわかれているのだ。手術説明が2回に分けられたのは、そうした事情があったようだ。)顎が折れてよくわからなかったのだけれど、歯が一本折れてなくなっているらしい。ずれを整復すると下の前歯がすきっ歯になることが確定した。(怪我をした直後は下の前歯は2本飛んでいったと思っていたので、一本ですんだと思うと嬉しい)

今日の「初めて」はトイレにいったこと。おしっこは管が入っているので、いつでもどこでもOKなのだが、うんちの方はベッド上で差し込み式便器をつかうしかなかった。出来るなら、トイレでしたい・・・と思い、昨日許可が下りた車いすでトイレへ!10日ぶりのトイレ!車いすに乗るには2人以上の介助が必要だった。上半身を持つ人、足を持つ人。尿道の入っている管が、移動中に変なところにひっかかって、大事なところが引っ張られることがないように細心の注意を払う。

もうひとつ大きなことはスマホを手に入れたこと。手術説明のため来院下田時に、夫が持ってきてくれた。外部との連絡手段が手元にある。なんとなく、非日常だった入院生活が、急に現実味をおびる。ああ、私の人生は前から繋がっていたのだ。2日前に、同僚からお祈りのメールがきていた。ありがとうございます。


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