冬支度

私が仕事から帰ると、おばあさんが押し入れから色々出していました。
「ただいま、おばあさん、何をしてるんですか?」
「あぁ、華、おかえり、今、炬燵を出していてね、ちょっと手伝っておくれ」
私は人形なので大したことはできません。
懐中電灯で押し入れの奥を照らしました。
「あぁ…コードがあんなところにあったよ」
おばあさんはコードを引っ張り出すと炬燵をコンセントに繋ぎました。
「あぁ…暖かくなったねぇ」
おばあさんは嬉しそうに言います。
私は台所からみかんを持って来ました。
「ありがとう、さっそくいただくよ」
そう言うとおばあさんはみかんを一つ手に取ります。
おばあさんはテレビをつけようとしてやめました。
「華や、ラジオをつけておくれ」
私はラジオのスイッチを入れ、チャンネルを合わせます。
古い歌謡曲が静かに流れて来ました。
「あぁ…懐かしいねぇ…」
おばあさんはうっとりと言います。
ゆったりとした時間が流れていきます。
もうすぐ、暖かい冬が始まります。

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