虫の声

最近、急に涼しくなった。
昼間に外に出るのが気持ちいい。
「さてと」
ぼくは言った。
神社の裏に外用のテーブルと椅子を準備する。

中に入ると、ちょうどご飯が炊き上がっていた。
エビとキノコと銀杏の入った炊き込みご飯。
ぼくはおにぎりを作り始める。
そこへ、美子がハムとレタスとトマトとパンを持ってくる。
「あ、コマ兄はおにぎり作ってるのかぁ」
美子はそういうとパンにバターを塗り始める。
「私はサンドイッチを作るね」
材料を切ったのは女神様。
今は包丁やまな板を洗っているようだ。
美子はパンにハムを乗せ、レタスを乗せてトマトを乗せたあと、またレタス、ハムの順に乗せてパンで挟む。
「こうすればトマトでパンがふにゃふにゃにならないでしょ」
美子は楽しそうに言った。
そこへ女神様が戻ってくる。
「あら、二人とも楽しそうね」
そういうと女神様はおにぎり作りを手伝ってくれる。
「コマに任せると大きいのばっかりになるからね」
ぼくと美子は笑った。
「それにまだ熱いから美子にはムリかな」
テーブルの上に少しずつ食べ物が増えていく。

夕方、暗くなってからおにぎりとサンドイッチを持って外のテーブルに移動する。
そしてみんなで晩御飯。
いつもはみんなで楽しく話すのだが、今日はできるだけ静かに食べる。
少しずつ、虫の声が聞こえてくる。
ぼくたちはしゃべらない。
でも、言いたいこと、持ったことはお互いに通じ合う。
綺麗な声だね、みんなで聞けて楽しいね、たまにはこんな晩御飯もいいよね…
そしてお互いに顔を見合わせ、くすくす笑う。
半月が、優しくぼくたちを照らしていた。

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