ハロウィン

「ハロウィンもすっかり定着しましたね」
炬燵でおばあさんと二人、お茶を飲みながら私は言いました。
「ハロウィン?何だい、それ?」
おばあさんはハロウィンを知りませんでした。
私は簡単に説明をします。
「あぁ、スーパーとかでカボチャ柄のお菓子が売ってあるのはそれかい」
「えぇ、そうです」
「じゃあ、今日由美たちが火葬してくるって言うのは知り合いにご不幸があった帰り道じゃないんだねぇ」
おばあさんはほっとしたように言いました。
「仮装…つまりお化けの格好で来るんですよ。
その時にお菓子をあげなきゃ」
「おぉ、そういうことだったのか…お菓子なんて今日はせんべいくらいしかないよ」
おばあさんは困ったように言います。
「大丈夫です、私が準備しています」
偶然、昨日いただいたお菓子があります。
中身はチョコレートの詰め合わせでした。
みんなで山分けした後、持って帰って来たのです。
「おやおや、ありがとう。
あまり見ないメーカーだねぇ」
お化けたちの作ったチョコレートなんて口が裂けても言えません。
笑ってごまかします。
「おや、もうすぐ2時になるねぇ」
由美ちゃんたちが来るのは2時の約束。
おばあさんはお茶を入れられるようにお湯を準備し始めました。
その時、玄関のチャイムが鳴りました。
おばあさんは嬉しそうに玄関へと向かうのでした。

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