プレスリリース

書籍とスマホアプリを同日にリリースするまでに発生した課題とその対応

昨日(2019/5/13)、書籍『IT用語図鑑』を出版するとともに、スマホアプリ「IT用語図鑑」をリリースしました。
書籍の企画が通った段階からスマホアプリも出す予定ではあったものの、なかなか予定通りには進まないもの。リリースまでに発生した課題と、その対応を振り返りながらまとめてみます。

課題:書籍が完成に近づくまでコンテンツが定まらない

今回のアプリは書籍『IT用語図鑑』から一部のコンテンツを抜粋して作成したものです。取り上げる用語やイラスト、解説は書籍と変わりありません。つまり、書籍の内容と合わせる必要がありました。
書籍は原稿を書くだけでは完成しません。著者が原稿を書いたあと、出版社にて編集の作業があり、さらに校正も発生します。この中で、原稿は当初の内容からどんどん文面が変わるのです。
今回は「用語図鑑」という特徴もあり、1ページに1つの用語という制約がありました。ページ内、枠内に入る文字数に制約があるだけでなく、カーニングにより文字の間隔が変わる場合もあります。
文字が多すぎてもダメですし、空行ができるのも見栄えがよくありません。このため、最終的に組版してみて調整するまでコンテンツが定まらない状況でした。

課題:書籍からアプリへの誘導ができない

結局、スマホアプリの開発は書籍の組版まで完成してから着手することになりました。ただ、スマホアプリの審査が通るかわからない、審査が通ったとしてもそのリリースのタイミングが決まらない、という状況から、書籍にはアプリのことを一切記載しないことになりました。
もちろん、事前にURLだけを記載しておくことはできたかもしれませんが、今回は断念しました。

課題:書籍の発売まで時間がない

書籍の組版が完成してから、印刷、配本され、販売されるまでに1ヶ月ほどの時間があります。ただ、実装がそれほど難しくないアプリとはいえ、この期間に1人でiOS版とAndroid版の両方のアプリを開発し、テスト、リリースするには十分な時間があるとはいえません。
しかもその間には10連休のゴールデンウィークがあり、改元の対応もあり…さらには個人的に技術書典への参加や新刊『基礎からのプログラミングリテラシー』の発売も…
アプリのコンテンツはすべて揃っていますが、どのような機能を実装するか、どこまで無料で提供し、何を有料化するのかも考える必要がありました。さらに、リリース後のアプリへの誘導ページの作成、広報まで含めて1人で対応。個人事業主の大変なところでもあります。
まずは審査の厳しいiOS版の開発から着手。なんとかテスト、審査まで進み、ここまで2週間弱。引き続きAndroid版の開発に進むことができました。
ゴールデンウィークも少し使いながら、Android版もとりあえず完成したのが書籍の発売1週間前…

課題:アプリの使い勝手をよくする

とりあえず最低限の機能は実装したものの、残る時間は1週間。まだまだ使い勝手の面で課題を感じており、この期間でブラッシュアップすることにしました。出版社の編集者さんにテストを依頼し、実際に使っていただき、ご意見をいただきました。
開発者では気づかないような貴重なご意見をいただき、対応できる範囲でプログラムの修正を実施。月曜日のリリースに向けて、なんとか土曜日の夕方に修正を終えることができました。
ただ、iOS版のアプリの審査は平日のみ。しかもアメリカ時間です。日本で土曜日の夜に審査に出しても、日本時間で月曜日の発売日には間に合いません。そこで、Android版は最新でリリース、iOS版はとりあえずリリースして審査後に反映することにしました。
それと並行してアプリへの誘導サイトの制作も進めていきます。実際にできあがったサイトがこちら。

課題:月曜日にリリースできるように準備を整える

iOS版のアプリは審査に通っていても、リリースの作業に最大で24時間かかると記載されています。つまり、月曜日に使える状態にするには日曜日のうちに作業する必要があります。
そこで、日曜日の午前中にiOS版のリリースを実施。実際には数時間でダウンロードできるようにはなりました。引き続きAndroid版のリリースも実施。無事に日曜日のうちにダウンロードできる状況を用意できました。
合わせてiOS版の最新版を審査に出すとともに、誘導サイトの公開とプレスリリースの準備を進めます。

課題:認知度を高める

そして迎えた書籍の発売日当日。朝一番で上記の誘導サイトを公開し、リリース完了です。ただ、リリースするだけでは誰の目にも止まりません。Twitterなどで発信するとともに、プレスリリースなどを各社に発信しました。
実際、以下のようなサイトに取り上げていただきました。ありがとうございます。

CodeZineでは書籍を紹介していただき、Amazonでも多く購入いただきました。本当にありがとうございます。

余談

今回、iOSアプリの開発にはSwiftを、Androidアプリの開発にはKotlinを使用しました。限られたスケジュールの中、別々のプログラミング言語を使用するのではなく、React Nativeを使う方法や、Xamarinを使う方法なども考えられました。実際、この方が短時間でリリースできたかもしれません。
正直なところ、書籍の企画段階ではReact Nativeでの開発を想定していました。ただ、書籍が完成してから1ヶ月でのリリース期限を守ろうと考えたとき、最終的にSwiftとKotlinに決めたのは過去の経験の有無でした。
何か問題が発生しても速やかに対応できる環境を選んだのが正解だったかどうか…答えは出ませんが、とりあえず無事にリリースできたことは確かです。

ぜひダウンロードして、楽しんで使ってみてください。


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