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今まで #詩人歌人 を応援してくださってありがとうございました。きょうはご報告があります。

これは、このnoteに書いてきた様々な文章の続きにあたる一文ですが、ここから読んでくださってもかまいません。

私は44歳のとき生まれて初めて「お笑い芸人をめざしてみよう」と決意しました。最初に組んだコンビは「ゾロメガネン」、次に組んだコンビが「詩人歌人」でした。ゾロメガネンは解散はしていません。ただ相方の「ダンサー」こと木皮成が本物のダンサー・振付家であるため、私が所属したかった事務所SMA(ソニー・ミュージックアーティスツ)に所属して日々活動することが事実上困難でした。今も木皮成が振付を担当するミュージカルに参加したりしていますし、彼とは一生のその時々で共に活動していけたらと思います。

詩人歌人の相方、「詩人」こと本田まさゆきとは、じつは十年以上前に一度会っています。私は離婚直後でした。彼はNHK「詩のボクシング」優勝直後で、単行本を刊行する準備をしていました。私はまさか自分の離婚問題(要は「自分の息子に会えない状態が続いてしまう」問題)がその後こんなにもずっと続くとは思っていませんでした。たぶん「詩人」もまさかその単行本デビューが頓挫するとは思っていなかったのでしょう。

離婚後に書いた小説『ショートソング』(推薦文は宮藤官九郎さん!)が中途半端なベストセラーになったが貧乏のまま歳を重ねた私と、ソニーから出した朗読CD(推薦文はリリー・フランキーさん!)が売れたわけでもなく単行本デビューするわけでもなく詩人活動をくすぶらせていた「詩人」が再会し、詩人歌人というお笑い芸人コンビを始めることになったのは、なんだか神様の悪い冗談のようです。

私は正直、新しい相方のことを尊敬できずにいました。彼のやってきたことで、「自分にはできない」と思うことがほとんど全然なかったからです。じつは私もNHK「詩のボクシング」で優勝した経験があるし、朗読CDではないけれども、全曲作詞をしたCDアルバムを東芝EMIから出したことがあるのです。こういうことを言う私の性格が悪いと思われるかたも多いでしょう。でも相方のほうが、わかりにくいかたちで、もっと性格が悪いんです。

詩人歌人は喧嘩ばかりしているイメージがあるかもしれません。そもそもやっているネタ「BLコント」も、痴話喧嘩をしたあとお互いにポエムと短歌を朗読し合い、うやむやのうちに仲なおりするというネタです。

本当に何度も危機がありました。結成して一年ちょっとのあいだに「もうこれ以上は続けられない、、、」と心の底から思った瞬間が最低三回はありました。私は「いやなことをしない」というのを人生のメインテーマにしているくらい、いやなことに耐えられません。だから離婚したのだし、狭い出版界では比較的知名度があるわりに貧乏なのです。せっかく貧乏で、もう失うものもないのだから、できるかぎりわがままに生きたいと思っています。でも、相方のほうが、私の何倍もわがままなんです。

詩人歌人は、どういうわけか、続きました。「もうだめだ、、、」と思うと、なぜか予期せぬ出来事が起こり、二人の関係が続いてしまうのです。「腐れ縁」という言葉を想起せざるをえません。

クリスマス・イブ発売のお笑いDVDに詩人歌人が参加しています。正直「へたくそ枠」だったと自負しておりますが、それでも大抜擢でした。(この記事の冒頭の写真はDVD宣材より)

私のお笑い活動に関する動機は、「短歌をお笑いという枠組みの中で広めたい」という、じつに不純なものです。モテたいとか、大金がほしいとかより、圧倒的に不純だと思っています。「DVDにも出たし、これくらいで、もうピークなのかな」と思ってしまったわけでは全然ないのですが、二人で活動することの限界を感じ始めていたところ、事務所の先輩コンビ「うえはまだ」が解散することになりました。

「うえはまだ」は好きなコンビでした。お笑いの輪郭を狂わすような芸人たちに魅了されたから私は事務所SMAに関わるようになったのですが、そんなSMAの中でも頑固なくらい「王道」を行こうとする強い意志に心ひかれていました。ザマンザイの予選も、喧嘩の絶えない相方と二人で、「うえはまだ」を見に行きました。ほかに好きな漫才コンビは色々いますが、ザマンザイの舞台で見るなら「うえはまだ」だと思ったのです。

だから「うえはまだ」の浜田さんが芸人をやめることになり、植田さんも芸人をやめると宣言したときは悲しかった。お二人は、お互い以外の相方を一度も経験しないまま十四年やってきたそうです。

そんな植田マコトさんと詩人歌人が「詩人歌人と植田マコト」というトリオを結成するに至った背後には色々なことがあったのですが、これ以上話が長くなると「長えよ!」と植田さんに頭を叩かれてしまうので、はしょります。

詩人歌人は、二人で事務所の「金のタマゴ」まで昇格すべく活動しようと、へたくそなりにがんばってきましたが、あきらめることにしました。なんだか意味のない意地であると気づいたからです。これからも二人のコンビ「詩人歌人」として、ライブに出たりはしていくつもりですが、事務所の毎月の昇格降格決定ライブには、来年からトリオ「詩人歌人と植田マコト」で挑戦することにします。ツッコミ不在の「詩人歌人」のもやもやしたスタイルには愛着も「根拠のない自信」もあるのですが、三人でやることの楽しさを知ってしまった今、二人だけでやるのは物足りなくなってしまいました。一応、「着脱自在なトリオ」という考え方は基本変わらないと思います。三人それぞれがピンでも活動するつもりです。

ゆうべ、事務所の頂点を決める「SMAホープ大賞」の予選を2位で通過し、準決勝に出ることになった「詩人歌人と植田マコト」。師走のさなか、お客さんをあまり呼べなかったので意外な好評ぶりに驚いています(1位は湘南デストラーデという、もうSMAホープ大賞は卒業してほしいような人気コンビ)。調子に乗り過ぎた相方「詩人」の、バンビのような目が憎くてしかたありませんが(トリオ漫才の台本の発案者が詩人なのです)、こうなったら上位入賞めざして走りぬけたいと欲が出てきました。

好評の数々。https://twitter.com/niceshampoo38/status/548508854737072129 とか https://twitter.com/minedon2014/status/548464880458530817 とか https://twitter.com/minedon2014/status/548706477188194304 とか。

歌人の枡野浩一がどうやらお笑い芸人をやっているらしい、くらいの気持ちで傍観していた皆さんに、お願いがあります。準決勝を応援に来てください。日付はあさって12/29(月)。19時15分開場、19時半開演の準決勝Bブロック。チケットは1000円です(予約はツイッターとかで。「詩人歌人」直通メール ure@masuno.de にメールくださっても大丈夫。当日券もあります)。場所は池袋から2駅のところにある、「千川」徒歩30秒の地下の小屋「びーちぶ」です。

ツイッターでお笑い芸人活動の告知をするたびに、フォロワーが減り続けるということはよくわかっているのですが、残念ながら私は本気なのです。「詩歌」と「お笑い」の相性の悪さは、この二年近くの活動の中で身にしみています。でも、今、こういうことをやっています。「そのうち見てみたいな」とか言っていると、そのお笑い芸人は消えています。私がこの事務所に来てからも、たくさんの先輩方が解散し、消えていきました。みんなぎりぎりのところで全体重をかけてやっているからです。

このような告知をするために、なんでこんな要領を得ない長文を朝から書いているのか自分でもわからなくなってしまいましたが、どうぞよろしくお願いします。一度「詩人歌人」を見たことのあるかたも、最近の「詩人歌人と植田マコト」は別次元の何かになっています(ためらいをこめて「自信作」と言わせてください)。ある人気テレビ番組のオーディションでも好評を博し、延べ11ものネタを披露し、今は最終結果待ちです。そんなトリオの今を、見ておいてください。加藤千恵さんも、見てください。松田アキさんも、見てください。「詩人歌人と植田マコト」以外の芸人も、とても面白いです。ぜひ公平に投票してください。私は本日もこれから千川へ行き、ほかの芸人のネタの見学をします。


もしお役に立ちそうな記事があれば、よろしくお願いします。