【実際には印刷されなかった】『#枡野浩一全短歌集』あとがきのしたがき
あとがき
今、短歌ブーム。
とのニュースをテレビで何度か見ました。もっと大昔にも見ましたが、最近も見ました。
短歌ブームの中に私はいない。という思いが強いのは現在、書店に並んでいる短歌の作品集が一冊もない状態だからかもしれません。
笹井宏之、宇都宮敦、といった歌人たちの短歌をお借りして書いた集英社文庫の青春小説『ショートソング』(企画・執筆協力は佐々木あらら)は約十万部売れ、小手川ゆあさんの手による漫画版がアジア各国で翻訳されました。小説は絶版にはなっていませんが、歌壇で同作が語られたことがほぼなく、短歌ブームの文脈で語られたこともありません。与謝野晶子さんや俵万智さんは存在するが、枡野浩一を含むそれ以外の歌人を存在しないものであるかのように描いた作であるため、今読むと古典SFのような趣かもしれません。
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歌人としてのデビュー作『てのりくじら』『ドレミふぁんくしょんドロップ』は一九九七年の二十九歳の誕生日、実業之日本社より二冊同時発売されました。現在「おかざき真里」名義で人気漫画家として知られる、オカザキマリさんの絵との合作。短歌と言われなければそうは見えない、絵本のように作りました。字をゴシック体にすること。という一点だけが著者のゆずれない希望でした。二冊に分けることや、歌の並び順などはデザイナーの故・義江邦夫さんに基本おまかせしたので三者の合作とも言えます。書名は中森明夫さんの発案。
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