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『歌』の1/2

『歌 ロングロングショートソングロング』(雷鳥社)が枡野浩一の最新短歌集です。オリジナル短歌集としては四冊目。歌人として約四十冊の本を出していますが、短歌集に関しては「寡作」としか言いようがなく(日々たくさん短歌を詠みますがどんどん捨ててしまうのです)、四冊のオリジナル短歌集の短歌をすべて合わせても三百首ありません。ほかの本に収録した短歌も含めると、もう少し増えますが。「ひとさまの目に触れさせていい作品はこの程度」と思って厳選しています。

『歌 ロングロングショートソングロング』は杉田協士監督の写真とのコラボレーションです。総天然色でこの価格の写真短歌集ってたいへんお得だと思うんですが、発売してから時間が経っているし、心ある一部の書店にしか並んでいないかもしれません。ブックオフでは今のところ一度も見たことがないので、入手した方は大切にしてくださっているのだと思います。装幀は私の本の八割をデザインしている篠田直樹さんです。

もともとこの作品集は『ロングロングショートソングロング』というAppleの電子書籍でした。電子書籍版は後藤グミさんが絵と字を担当してくれています(編集者は階段社の穂井田卓志さん)。縦に延々スクロールして読む縦書き手書き文字の、シンプルだけど画期的な仕様でした。強気で八百円という定価にして、まだ短歌の電子書籍が珍しかったせいもあり思いのほか売れました。電子書籍アワード2012の最終選考に残り、谷川俊太郎さんと競って負けたこともあります。現在は残念ながらApple機器の進化に対応できず販売していません。私のiPhoneにダウンロードしたやつは事故で消えてしまいました。電子書籍がこんなに「途中で読めなくなるもの」とは知りませんでした。もっと未来があると思ってた。

そういえば、谷川俊太郎さんの詩と枡野浩一の短歌が電光掲示板でコラボレーションしたこともあり、そのときの電光掲示作品も『歌 ロングロングショートソングロング』収録の短歌たちでした。

そもそもツイッターに発表した短歌をもとに編んだ作品集だから、無料で読みたければ過去ログを探せば全作が残っているんですが、それでも「読みたいけどなかなか買えない」という声を聞くようになりました。町の書店に本を注文したり、詩歌の品揃えのいい書店まで遠出したり、そういった昔では当たり前だったことも昨今は遂行が難しいことなのかもしれないと思います。

そこで試みとして『歌 ロングロングショートソングロング』の短歌部分だけを、noteで販売してみることにしました。定価は廉価版の文庫本のイメージで五百円にします。美しい写真集でもある雷鳥社の『歌 ロングロングショートソングロング』には、短歌と写真のほかに杉田協士監督による読みごたえのある枡野浩一論も、枡野浩一本人による長い長いエッセイも載っていますので、財布に余裕のある方はぜひそちらを読んでください。Amazonでも買えますし、雷鳥社サイトなら一冊から送料無料です。【2019年現在、品切。】

ツイッターでもブログでも毎日のように枡野浩一の短歌が引用されていますが、作者が並べ方を熟考した「連作」を一遍の小説のように読んでみると、また印象がまったくちがって見えるはずです。

『ゴロウ・デラックス』で稲垣吾郎さんに朗読していただいたあれ(一度だけ抱いてやるから)も載ってます。先輩歌人の穂村弘さんに珍しくほめられた一首も載ってます、雨上がりの歌です。

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