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香港旅 ホテルの掃除のお姉さんとのおしゃべり

香港で泊まったホテルは、「Ramada Hong Kong」ということころだった。

香港は今まで訪れたどの場所よりもホテル選びに困った場所だった。
まず、値段が高い。他の国で同じクオリティだったら、もう少し安く泊まれるはずだと思えるホテルが軒並み予算オーバーだった。さらに、希望する価格帯のホテルになると、そのレビュー(口コミ)がひどい。もう「これでもか!」というほどの罵詈雑言が書き込んであるものもあれば、負けじとホテル側も反論をしているものもあったりして、もはや喧嘩の様相を呈している。

「ふぅむ。」と思いながら、1週間ほど旅行サイトでの値段の変動を見ながら泊まりたい場所(地域)を変えながら、やっとのことで妥協するという形で今回のホテルを取った。"妥協して"なんて失礼なこと言うなぁ、と宿泊し終えた今は思うけれど、予約したときは不安でいっぱいだったのだ。Ramadaのレビューはそこまでは悪くないけれど、賛否両論。アジア各国の旅行者のレビューは、日本人のそれよりもはるかに辛辣である。上海在住で香港にも何度も行っている日本人の友達に話すと「RAMADAなんてチェーン店なんだから大丈夫だよ」と言われた。「重慶大厦とかに泊まればいいのに。と付け加えられたけど、今回はそこまでの度胸が出なかった・・・。

結論として、RAMADAは良いホテルだった。日本人の感覚からすると値段は「少し高いなぁ」と感じるを得ざるをえないけれど、佐敦駅(尖沙咀駅の隣駅)からは近いし、部屋はきれいだし、近くにコンビニはあるし、さらにスタッフの人たちがとても素敵だった。20代の若い子で構成されたスタッフの人たちは、みなさんとても親切でフレンドリーだった。

特にルームキーパーのお姉さんは、とても親切だった。

僕は、国内で海外でも、短期の宿泊の時は、連日のルームキーピングを希望しない。旅先においてホテルは基本的に寝るために帰るだけだし、それほど部屋を散らかしたりはしないから、毎日やってもらうのは申し訳ないしもったいないと思うからだ。最近では「毎日はキーピングはしません」とアナウンスするホテルも増えているけど、それでいいと思っている。今回はどちらのタイプのホテルかなのかわからなかったので、1泊目のあと香港2日目の朝に部屋を出るときには「Don't disturb」の札をドアにかけておいた。

滞在中の香港は、連日とても暑かった。30度を超えている時間帯もあって、歩き回っているとシャツは汗でびしょびしょになり体力も相当奪われた。なので、今回の旅では無理をせずに、時折ホテルに戻り休憩を取りながら街を散策した。午前中の散策を終えてランチを終えた後に、一休みしようとホテルに戻ったときちょうどルームキーパーのお姉さんが、僕の泊まっている部屋の前を掃除をしていた。とても快活なかわいらしいお姉さんだった。たぶん、20代中頃か、それより若い。向かいの部屋の掃除中の彼女とちょうど目が合ってしまった。「Hi」と僕も挨拶すると彼女も「Hello」と返してくれて、僕の元に駆け寄ってきた。

「お出かけだったんですね。お休み中だと思ってました。お部屋に入らせていいですか?チェックをしたいんです。」

「あ、でも、掃除はいいですよ。そんなに散らかしてないし、必要ないから。」

「申し訳ありません。チェックだけでもさせてください。それが私の仕事なんです。少しだけです。」と彼女は言った。そこまで言うなら、と思って僕は鍵を開けて部屋に入り、ドアを開けっぱなしにしたまま彼女に入ってもらった。僕はベッドの上に出していた服や下着なんかをサっと片付けて、ひっくり返したままになって乱れていたベッドも直そうとした。彼女は、それを見て笑いながら「何もしなくていいですよ。私が整えます。」と言った。とても素敵な笑顔だった。

「あなたは日本の方ですか?」

「そうです。日本から遊びにきました。」

「そうだと思いました。」

「なぜ?僕の顔で日本人だとわかるんですか?」

「はい、あなたはとても日本人のようです。けれど、顔というよりは雰囲気ですね。それに日本の方は、あなたのように部屋をとてもきれいに使ってくれる。」

それを聞いて僕はとても誇らしかった。彼女の日本人に対するその印象は、どこの国に言ってもそのように言われることが多い。日本人は、親切で礼儀正しく、マナーが良い。自分が日本人であるということを誇らしく思う瞬間だ。

「私も日本に行ってみたいと思っているんです。」
彼女はそう言いながら、窓の外に見える海を見た。

「そうですか、それは嬉しいな。ぜひ遊びに来てください。」と僕は言った。

彼女はまた満面の笑顔を作ってくれた。
彼女はきっと笑い慣れている人なのだと思う。とても素敵な女性だと思った。

そこまでの会話は英語でしていたのだけれど、その次の会話から彼女は急に「広東語」を話し始めた。当然ながら、何を言いたいのか、何を話してくれているのか、まったくわからない。「〇〇嗎?」と言うのだけ聞き取れるから、何かを聞いてくれているのだと思うけれど、皆目検討がつかない。仕方がなく、「ごめんなさい、僕は中国語はまったくわからないんだ」と伝えた。すると「あぁ。」とちょっと困ったような顔をした。しかし、すぐ取り直して、「It's OK」と笑い、そのあとは黙々と部屋の掃除とタオルなどの交換をしてくれていた。急に静かになってしまった部屋で、僕は気づまりになり黙って窓から見える香港の街を眺めていた。

彼女はサクッと部屋のリフレッシュを済ませてくれると「Yes,Finish!」と僕に笑顔を作ってくれてドアを開けたまま部屋を離れたあと、ミネラルウォーターを2本持ってきてくれた。「1日2本はFreeです。香港は暑いから、これを持ってでかけてください。」と手渡くれた。「Have a nice trip.」そう言い残し「byebye~」と、手を振って彼女は部屋から出ていった。

僕は一人部屋で休息を取りながら、彼女は「広東語」で何を話してくれていたんだろう?と思った。「中国語はしゃべれない」と伝えた後の、僕たちの間に流れたほんの少し気まずい時間を思い返して、僕にも他の対応の仕方があったんじゃないかと後悔をした。

一休みをして午後の散策に出かけようと部屋を出ると、その階の掃除を終えた彼女がエレベーターの前にいた。僕の部屋のドアが閉じる音で彼女は振り返り、僕を見とめた。すると、スッとエレベーターの「↓」をボタンを押して、あの笑顔で振り返ってくれた。そして、そのままサッと「Stuff Only」のドアの中へ戻っていってしまった。

エレベーターが閉まる時、そのドアの向こうから「Have a nice Trip.Take Care!!」という彼女の大きな声が聞こえた。

彼女と言葉の壁がなく自由にコミュニケーションが取れたら、どんなに素敵だろうと思った。

旅に出るといつもこのもどかしさが、僕を付きまとう。

また香港行くことがあったら、またここに泊まりたい


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