原曲にないドラムを追加してみよう!
初めに
初めまして、主にニコニコ動画で音MADを制作している「ますとも」と申します。
ドラムを追加することで、他の音MADとの差別化が図れたり、音圧を上げることが出来たりとたくさんの利点があるのにも関わらず、そのノウハウは今まで解説されずにいました。
なのでこの記事では、私がドラムの音源を選ぶとき、ドラムを追加するときに留意していることを中心に、音MADにおけるドラム追加について執筆しようと思います。
※この記事は自分の思考の整理も兼ねたメモ書きのようなものです。ほとんどが独学であり、用語の誤用など、誤りがある場合があると思いますが、あらかじめご了承ください。
音源探し
まずはドラム追加に必要な音源を素材から引っ張ってきましょう。使う素材によってはドラム音源がある程度定まっていることがあるのでその素材の音MADをいっぱい見てみるのも手です。
音選びでドラムの質はほとんど決定します。なので妥協することなく慎重に選びましょう。
どんな音がドラムに向いているのか?それはドラムの種類によって異なります。私が私的オールスターを作るときに愛用しているドラムとともに紹介したいと思います。
・バスドラム(キック)
バスドラムは主に曲の低音域を支え、リズムやビートの要となる重要な楽器です。
基本的に元々バスドラムとして加工してある素材を使うことが多いです。
(バスドラムとして加工されていない素材でぱっと思いつくものだと犬作ドラムと淫夢3章の冷蔵庫ドラムくらい?)
(まちカドまぞく 2丁目 第4話より)
・スネアドラム
スネアドラムは主に中音域を助け、バスドラムと同じく曲のビートを刻む重要な働きをしています。
音MADでは打撃音がよく使われる印象ですが、バスドラムのように加工してある音が使われることもあり、その割合が五分五分で使われている気がします。曲によって重めの素材を使うのか軽めの素材を使うのか見極めることが重要です。(自分はあんまりできてないかも・・・)
(原西ギャグ大全 オープニングより)
・ハイハット
ハイハットにはクローズとオープンという2つの種類があります。両者とも曲の高音域を持ち上げ、曲全体の音域バランスを保つ効果があります。
クローズハイハットとはハイハットのうち、チッという歯切れのいい音を指します。
音MADでは摩擦音(日本語でいうサ行の子音部分)が使われることが多いです。素材の中でサ行の音さえ発していればクローズハイハットに使えます。
しかし、「さ」「す」「せ」「そ」と「し」では種類が異なり(正確には前者が無声歯茎摩擦音、後者が無声歯茎硬口蓋摩擦音というらしいです)、前者は音域が高めで、後者は音域が低めです。
後は環境音などのノイズ、スプレーの噴射音なども使うことができます。
(ガヴリールドロップアウト 第2話より)
オープンハイハットはクローズハイハットとは異なり、シャーンという比較的長めの音を指します。
これもクローズハイハットと同様、摩擦音やノイズを使うことが多いです。摩擦音を使う場合だと「~です」の「す」の部分が長めのsの子音のみで構成されていることがあり、その部分を効果的に用いることができます。
(カビキラーチャレンジ 高橋さん編より)
・シンバル
シンバルは曲の展開をその迫力ある音で視聴者に伝える働きがあります。
シンバルもバスドラム同様、加工してある素材を使うことが多い印象です。しかしアニメの効果音やロッカーを叩く音など、比較的長めで中高音域がしっかりしている素材だと使うこともできます。
(レスリングシリーズ VAN様 vs ビオランテ編より)
・タム
タムには「ハイタム」「ロータム」「フロアタム」の3種類があり、ハイタム、ロータム、フロアタムの順で音程が低くなります。この楽器は主に曲の展開が変わる前に置かれ、展開の切り替えを盛り上げる役割があります。
しかしその独特な音色がゆえ、日常生活で似たような音を聴くことはほとんどありません。音MADでもタムまでは再現されていないものが多い印象です。
バスドラム同様、加工してある素材を使ったり、キャラソンなどからドラムを抽出して使ったり、音の原型がなくなるまでVSTなどで加工したりしましょう。(二つ目の方法だと容易に素材を手に入れることができると思います)
(プロに習えばドラムができるようになる?挑戦してみた! - MasuoTVより)
・追加ドラム
ドラムを追加するときは手拍子や、何かを置いた音、叩く音、落とす音など、色々な素材を使っています。なるべく短めで歯切れがよく、アタックが強めの素材を選ぶようにしましょう。
そして、バスドラムやスネアドラムなど、上記のドラムのような特徴を持たないものを選ぶようにしましょう。もし、スネアドラム似ている音の素材を選ぶと、既存のスネアドラムとドラム追加のパートの聴き分けがつかなくなり、スネアのパートが2つあるように聴こえてしまします。
(のんのんびより りぴーと 第1話より)
(真夏の夜の淫夢 1章より)
(ゆゆ式 第1話より)
コツ
よさそうな素材をある程度集め終えれば、いよいよドラム打ち込みの準備は整いました。実際に打ち込みに入る前に私がドラムを追加するときに留意している点がいくつかありますのでご紹介しておこうと思います。
・曲の展開に沿うようにする
落ち着いたメロディーが鳴っている中でドラムが激しく鳴っていたら雰囲気がなくなってしまいます。Aメロでは少なめにしたり、サビでは激しめにしたりと、曲の展開と同じようにして抑揚をつけましょう。
・似たような音は重複して使用しない
似たような音を複数使用すると、原曲などを重ねたときにそのドラムが同じ音に聴こえてしまいます。なのでなるべく似ていない音を使用するようにしましょう。
・ほかのドラムと重ならないように注意する
他の追加ドラムと被らないようにしましょう。多少は他のドラムパートと被っても構いませんが、あまり被り過ぎると音量の高低差が激しくなってしまいます。なるべく他のパートと重なるのを避け、まんべんなく配置しましょう。
・欲張りすぎない
欲張りすぎるのはよくありません。自分も音圧を稼ごうとしてよくやってしまいます。ドラムが多すぎるとリードなどの他のパートが埋もれてしまいます。それに、聴いていて疲れるような音声となってしまします。なのでドラム追加はほどほどにしておきましょう。
実践
コツも把握したところで、いよいよドラム打ち込み開始です。
原曲のドラムの耳コピ
まずは原曲のドラムを耳コピしましょう。
原曲のピッチを上げてバスドラムを聴こえやすくしたり、EQで低中音域を削ってハイハット、スネアドラムを聴きやすくしたり、低倍速(0.5倍速がやりやすいと思います)にしてハイハットの刻みをわかりやすくしてみたりすると、ドラムが聴き取りやすくなり、耳コピ作業が捗ると思います。
ドラムの追加
前置きが長くなりましたが、いよいよ本題です。
もうここからは決まりなどはなく、自由にドラムを配置するのですが、一からドラムを考えるのは難しいと思います。なので自分がよく行っている手法を書いておきますので、良ければ参考にしてみてください。ほとんどが他作者さんの受け売りです。パクりまくってごめんなさい。
・8分音符の裏拍を取る
これはGM先生やゲスト3さんなどの作者さん方がよく使われている手法です。これはオープンハイハットでよくあるような配置になると思います。ただ裏拍に置くだけでなく、三拍目の部分を16分音符を2つ置いてみたりと、色々アレンジしてみるといいと思います。
・16分音符の裏拍を取る
これは阿保草さんがよく使われている手法です。裏拍ばかりだとクローズハイハットのような配置になってしまうので、ドラムの配置量を減らしてみると良いと思います。
・16分音符で刻む
先ほどと同じく阿保草さんがよく使われている手法です。16分音符に配置するだけだと単調や配置となってしまうので三拍目を少し刻むといい感じになると思います。
・左右に振る
「8分音符の裏拍を取る」で作成したトラックの他に、表拍のトラックと作成し、その2つのトラックのパンを左右に振ります。私はいつも35%くらいで振っています。左右の音量バランスが同じになるように2つのトラックをソロにし、マスタートラックを見て調節しましょう。
サイドの音圧を上げることが出来るので多用しています。しかし、あまり音量が大きすぎると他のパートの邪魔となってしまうので、耳を澄ませば聴こえてくる程度の音量にしておきましょう。
・タムを追加する
曲の展開が変わる前の小節にタムを追加することで盛り上がりが増します。三連符などを加えたりするのもいいです。
・ノイズを刻む
任意の音声素材にMVibratoというVSTを掛け、以下の画像のような設定にすることでノイズにすることが出来ます。
ちょっとズルい気もしますが、音圧がイマイチ足りないという場合に重宝します。ノイズが鳴っていても違和感の少ないサビに使うようにしましょう。
音量は、そのトラックをミュートにしている状態としていない状態を聴き比べて初めてノイズが鳴っていることが分かる、という程度の音量にしておきましょう。
余談ですが、このMVibratoというVST、使い方によっては線香花火の音声が再現出来たり、黒塗り世界宛て書簡のノイズ混じりの和音が作れたり出来ます。
追記(2023/11/05)
音MADスタートダッシュのサーバーにてドラムアレンジに関する情報をご提供いただきましたので、ここに追加で記載しておこうと思います。
・フィルイン
タムのような形で曲の展開が変化するときにドラムループを加え、アクセントをつけるという手法です。
詳しくは「フィルイン DTM」と調べるとドラムのパターンなどが載っている記事が見つかると思うので、そちらをご参照ください。
(八幡謙一さん)
・リバースシンバル
シンバルの前に逆再生したシンバルを小さめに乗せ、盛り上がりを加える手法です。タム、フィルインと併用するとさらに盛り上がりが増すと思います。
(ドラゴン山田さん)
作品例
例として自分の動画のドラムのみ音源を用意いたしました。是非ご活用ください。
参考
音MADにおけるドラムについて参考になるものをまとめてみました。是非ご活用ください。
動画、ブログ
・本格的ケツドラム講座
ケツドラムに関する基本情報が兄貴と一緒に学べます。ケツドラムを叩きたい哲学者たちは行けぇ!なんばパークス!
レスリングシリーズ音MADを作ろう
ロックマラでお馴染みの関内兄貴のブログです。ここに載っている動画はどれもドラム追加が優秀でとてもなのでケツドラムを使うことがない方も一度ご覧ください。
野獣!でもわかる音MAD講座2(ベース・ドラム)編
2:44~
ドラムについて初歩的なことが初心者でもわかりやすく解説されています。私が初めて音MADを作るときに参考にした動画だったと思います。ドラムの他にも基本的な音楽的知識が身につくので是非ご覧ください。
ドラム追加が上手い音MAD作者さんたち
・GM
エア本MADを投稿している作者さんです。ドラムが存在しない曲のドラムを一から創作していたり、どれもドラムが凝られている動画ばかりなので一度観てみることをオススメします。
・阿保草
この方のYTPMVでは追加したドラムも映像で表現されており、ドラムが可視化されていてとても参考になります。ドラムの置き方も隙間がなく、聴いていてとても心地よいです。
・Fotzu / bobywea
ケツドラムの打ち込みはもちろん、様々な素材でのドラム追加に長けている作者さんです。この方のYouTubeのサブ垢には投稿動画のドラムのみ音声など、非常に役立つ動画が上がっていますので、是非参考にしてみてください。
最後に
いかがでしたでしょうか。私が解説したかったことはこれで以上となります。この記事で少しでもドラムアレンジに興味を持った方、是非一度チャレンジしてみてください。
この記事が少しでもお役に立てば幸いです。
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