歴史学の基礎訓練をどう積むか

歴史学をやっていくうちで必要になってくる基礎訓練のはなしをしたい。これは自分が今まさに積んでいるトレーニングの話であるので、あくまで「こうなんだ」というよりも、「こう考える人がいるんだなあ」という程度の話として捉えてほしい。

歴史学の基礎訓練っていうのは、要するに、「自分の設定した課題を適当な手段・方法で明らかする」ことが出来るようになる、ことだと自分は理解している。

この「自分の設定した課題を適当な手段・方法で明らかする」ことが出来るようになる、という歴史学の基礎訓練の目標を分析してみると、以下の3点にまとめられる。

 ①適切な課題(リサーチクエスチョン)を設定する→時代背景と先行研究の読み込み
 ②課題を明らかにできる適当な手段・方法を探し出す→史料の収集、史料批判
 ③探し出された手段・方法を適切に運用できる→史料批判・読解

こうやって一般化をすると、史料批判や史料読解、先行研究の読み込み、目録学、文字学などの歴史学で必要とされる諸スキルを「どれだけ必要なのか」「なぜ必要なのか」という自分が設定した相対的な指標の上に乗せることができる。

そう考えるものだから、よくSNSとかで見る、「○○を知らないなんてー!」「○○に造詣がなければ、✕✕学をやってるなんていえない!」なんていう巷の言説に足をすくませて、ひたすらスキルを磨くだけの「器用貧乏」になるのは良くないんじゃないか?って思ったりする。あくまで自分が必要なスキルだ、という自覚を持って、「これが出来るようになりたい」という目標を決めとかないといけない。教える側に立ったときも「あれ(特定のスキル)やったほうがいいんじゃない?」っていうときは、そういう目標設定をどう考えてるのか聞いたり、わからないようなら一緒に考えるのがいいんだと思っている。

話を先に挙げた3つの目標に戻すと、1つ目の課題の設定に関するトレーニングっていうのは、「その課題が学術的に面白い、解決すべき課題なのか」という問いに答えるためのトレーニングなんだと考えている。

具体的に言うと、現在通行している歴史像の変化(「一国史から地域史へ」など)を概説書や研究入門などを通じて理解し、それを築き上げてきた・その流れに乗ってきた先行研究の視角をトレースし、常に変化し続ける過程にある現在の歴史像を捉える、そういうマクロでメタな視点を築く。それと並行して、個々の先行研究や目録、図書館を歩くこと、インターネットで検索することを通じて、どういう史料があるのかをリスト化していき、この史料を読めば〇〇ということが分かるかもしれない、というミクロな引き出しを沢山用意していく(この部分は②と③の部分とも重なってくる。これらの目標はひとつずつ進む段階なのではなくて、並行して進んでいくものだと実際にトレーニングを積んでいて思う)。この両面の作業を通じて、「(解決可能性の高い)ミクロな問題」を「(解決することに意味のある)マクロな課題」に接続する試みを行う、ということができれば、そこで設定された課題は「その課題が学術的に面白い、解決すべき課題」である、と考えてもいいのではないか。

もちろん、この「マクロな課題」ってのは、「歴史学」とか、そういう巨大な対象である場合もあるし、例えば「清朝前期における人材登用」とか、そういう個別論的な対象であることもある。「マクロな課題」なんて、学位論文くらいじゃないとチャレンジできない、大それたことをいうな、とかそういう話ではなくて、そうしないと適切な課題が設定できないんじゃない?って思う。

話題の性質上、「思う」とか「考える」が多くて、あまり自分好みじゃない文体になってしまった。目標の2点目以降は、また後日ということで。

2/10 加筆修正

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