昨日、タイにて今シーズン初の対外試合、BGパトゥム・ユナイテッドとの対戦が行われた。
結果は2-3での敗北。景気よく勝利でスタートといきたかったが、結果は残念なものになった。とはいえ、フィジカルを追い込みまくり戦術もほぼ仕込めていない状態での試合だったので下を向くことは無いと思う。個人的にはいろんなことが見られたのでとても面白い試合だった。

今回は雑多に気になった点を書き記したいと思います。
4000字超えの大作となったがぜひお付き合いください。

昨季終盤戦の延長のチームづくり

戦術練習はそこまでやっておらずここからだと思うが、この試合を見る限りでは昨季から劇的に変わるということはなさそうだなと感じた。

ただ、昨季との大きな違いがアンカーが動きすぎない点。昨季終盤は香川がアンカーを務め、ボールを引き出すためにSBの位置まで降りるということが多々見られたが、中盤に流動性が生まれてイレギュラーな形でボールを受けるシーンが多くなりミスが続くという場面も同時に多かった。
この試合は田中・平野が務め、基本的には真ん中で受けることを徹底していた。その分、IHが流動的に動いてスペースを作っていくという部分が見れたし、選手の距離感も悪くなかった。

そのIHには奥埜の動きを求めてるのかなと。
4-3-3を導入した広島戦からやっているが、裏抜けを狙う→DFラインを下げる→その間延びしたスペースを自ら使う→ボールを落とし、前向きの選手を作る。という感じのプレーを引き続き行っている。
このタスクを求めているからこそ、裏抜けが相対的に上手いFWの上門やターンして前を向ける柴山をIHで使っているのかなと考えている。
ただ、香川は香川の清武には清武の良さがあり、彼らには同じ役割を課していない印象なので上手く使い分けて行って欲しいところ。

守備はひたすら前から人を捕まえに行く。これが昨季ともどもトコトンはまらない。個人的には攻撃よりも守備がキツイ印象。
流石にリスク取らなすぎなので上手くチューニングして欲しい。

ジョルディ左SB起用について

スタメン発表で我々を驚かせた【DF ジョルディ・クルークス】の文字。憶測が行き交ったが、蓋を開けてみると本当に左SB。阪田も右SBで起用された。

WGがSBをやるメリットはボールを保持したときのファイナルサードでの精度が最も大きい。実際にカピシャーバがタメを作り、オーバーラップしたジョルディのクロスから柴山のヘディングを演出したシーンなどいい点が見られた。
また、突破力やボールを守る能力に相対的に優れていることが多いので昨季終盤もよく見られた香川左SB落ち→そのスペースを左SBが使うというプレーもよりスムーズになるのではないか。試合中でも前半5分にそのようなシーンが見られた。(ただIHは極力降りすぎないように意識しているのか昨季終盤よりはその回数が少なかった)
その意味では強みを発揮していた前半であったと思った。

一方で後ろにカバーできる選手が少ない状態で守備をすることになるため、より強い対人能力や守備の判断能力が求められるが、ここは課題を残した様に見えた。対人能力は特に問題ないように見られたがやはり判断というところは本職じゃないと厳しいところがありそう。
実際で弱みが露呈したのが失点に直結したFKを献上した36分のシーン。
トランジションの部分で前から潰しに行ったところをかわされて、ジョルディの裏に速いボールの放り込み。そこには舩木がカバーに行っていたため、ジョルディはその舩木の元いた場所を埋めに行かなければ行けなかったが、裏抜けされた選手の方に行ってしまった。結果としてファウルになったが、舩木が空けたスペースには相手FWが飛び込んできていたのでどちらにしても決定機に繋がってしまっていた。

ここを場数で慣れると割り切るのかどうなのか。個人的には今季はトランジションが発生しまくるオープン上等のサッカーになりそうだなと試合を観て思ったので、こういうシーンに晒される危険は常に負っているのでちょっと怖いかな、と感じた。

とにかくCB陣の成長が欠かせない

正直ここが最大の課題。

前からガンガン人について行きSBも迷わず前に出していくサッカーをする以上、CBには後ろの広大なスペースをカバーする大きな責務が生じる。
カウンター対応についてこの試合ではかなりCBが外について行く傾向が見られた。少なくとも前半はそのスペースに高さがある田中を下ろして、バイタルはIHで守ろう…という意図があったように見えたが、それにしても一発で取りに行って裏返される危険なシーンが多い。
正直、裏へのボールもそれだけだと危険でないシーンが多いので、まず真ん中を守る意識を付けさせたほうがいいと思うが、これはロティーナ政権以降、薄れ続けてきたところなのでもう仕方なさそう。

現時点ではこのサッカーを成立させられるだけの質がCB陣にあるとはとても言えないのでそこをなんとか伸ばして行って欲しい。伸びしろですね。
このままだと「これこないだも見たぞ…」という失点がかなり多くなりそう。まあ1試合目だから…！

選手雑感

最後に各選手への雑感を書いて終わろうと思う。

キム・ジンヒョン

引っ掛けて大ピンチになりかけたが、攻撃の起点となるプレーはやはり依存度高め。
2失点のところはちょっと心配になった。どうした。

舩木翔

1シーズンぶりのCB起用。
何本か左足で地を這うようなミドルパスを通そうとしていたが、ミスになったとはいえそれが彼の武器なのだからこれからも続けていって欲しい。

進藤亮佑

得点は見事。ただ何度か被カウンターの場面で手前の選手に一瞬食いついてしまって裏を突かれるということがあり、これは昨季からの継続した課題なので改善を期待したいところ。

西尾隆矢

中途半端なパス(クリアだったのか)でピンチを招くなどまだ不安定な感じがする。守備自体は問題なかったのでボールを持ってるときのプレー精度を上げていきたい。

山下達也

試合を通じてSB裏がスッカスカだったのでそこの対応を強いられることになったが、あまり穴になっている感はなく。
ボックス周辺での守備が得意な選手(年齢的にも)だと思うので全体の守備の仕方がなんとかなれば今季は出番が増えるかも？

ジョルディ・クルークス

SBでのプレーについては前述したが、プレースキック含めて総じて良かったのでは？特に攻撃面では前に前に行きたいだろうにしっかりとSBとしてWGを邪魔しないポジショニングを一貫していた。

登里享平

プレータイムは限られたが、主に守備の強度でアピール。
オーバーラップのタイミングも流石で、カピを一番活かしてあげられるSBになれるんじゃなかろうか。

奥田勇人

パスミスでピンチを招いたり、守備が怪しい場面があったりしたが、特に後半は前でボールを持てる時間も増えて良い試合になったのでは。
あの場面はシュートを選んでほしかったがそれまでの流れが良かったので、次回以降の課題ということで今日は彼を称えたい。

阪田澪哉

右SBでの起用。最初の1対1の守備は良かったのだが、以降失点に直結するミスだったり、守備で穴になるなど悔しい試合になってしまった。

田中駿汰

上手かった。
横の移動が少なく、真ん中でボールを受けてくれる・しっかりと失わないのでボールの動かし方の再現性という面でかなり助かる。ミスもないし、姿勢もきれい。
背も高いので人を捕まえに行くハイプレスにはロングボール回収で強みを発揮。

平野佑一

田中も上手かったが、平野も上手い。後半のほうがより真ん中で狭いところでショートパスを繋ぐというシーンが多かったが、止めて蹴るが上手いのでスムーズに試合を進めさせられる。ゴールに繋がったルーカスへのミドルパスも良かった。
守備は結構サイドまで付いていくことが多いので、リスクが低いシーンでは他の選手に任せていってほしい。

香川真司

あまり目立たない試合になった印象。良くなく聞こえるが、昨季終盤は全部香川がやっているみたいな状態なのでボールを引き取るフェイズはアンカーがやってくれていたのでチームとしては正常になっていっていると思う。

奥埜博亮

流石。ボール保持時の裏抜けやそこからのポストプレー、更に動き直しとプレーの連続性がこの時期とは思えない。
今季もたくさん頼ることになりそう。

清武弘嗣

ボールが落ち着く。失わないし、ボールを受ける場所もタイミングも本当に上手い。ズバッと入れるスルーパスも健在。
清武がいると全く違うサッカーになる印象。

ヴィトール・ブエノ

「上手い奴ってこういう感じだよね」という感じ。(語彙力)
思ってたよりペナ内に入っていくなという印象。
低い位置で自分でなんとか打開しょうというシーンもあったがクイックネスで勝負できる選手ではなさそうということはわかった。

カピシャーバ

局地的な上手さは際立つもちょっと窮屈にプレーしていた感じ。身体のキレで勝負するタイプなのでそこは仕方ないか。

為田大貴

まだまだ状態上がりきってないかなと言う感じ。ただ仕掛けまくり、高速クロスに突っ込みゴールをもぎ取った。突っ込み方が毎度上手い。

柴山昌也

昨季WGで起用されていた頃には球離れの悪さが致命的だったが、昨季のIHでのプレーを経験したからかかなりスムーズにプレーできていた。
裏のスペースを積極的に狙っていたのも好印象。個人的にアンカーの2人についで良かったように感じた。

ルーカス・フェルナンデス

奥田と良好な関係性。無理して仕掛けるというよりは味方を使って優位を作ってから斜めに切り裂いていくプレースタイル。
そしてナイスアシスト。

渡邉りょう

TMでの2得点を受けての先発だったと思うが、試合を作るという意味では上手く立ち回ってくれた。
ボールを受けに降りてくるときにはしっかりとミス無くボールを落としてくれていたし、守備も良かった。

上門知樹

CFとIHを半分ずつという感じだったがあまり良さを感じることはできず。
本当はスペースがある状況で右足を振らせたい選手なのだが、色々できるがためにこういう立ち位置になっているのがもどかしい。

レオセアラ

まだまだ仕上がっていない。ボールへの関与が極端にこの試合では少なかった。ただ危険なところには絶対いるので今季はそこにボールを他の選手だけで届けてあげられるようにしたい。

何度も書いているが、まだ1試合目。全く悲観する必要はないし、新戦力を中心に面白いシーンもいくつかあった。
まずは宮崎キャンプの選手たちの成長に期待したい。