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ギターの神はかく語りき (5)

【承前】


あれから何ヶ月経ったかな。
評判は(ほとんどイケメンのおかげかも知れないが)上々で、地元でちょっとずつ有名になっていった。
ライブハウスでのライブに加え、対バンにちょくちょく呼ばれたり、地元のちょっとしたフェスにも出たりと、バンドとして充実の日々が続いた。

だが、ここ最近はバンド内の空気がピリピリしていた。
どうやら原因は俺らしい。
とにかくイケメンが何かと俺に文句を言ってくるようになった。

「オレの曲はもっと爽やかな音だ。おまえは上手いけど音が暑苦しい」
「あのバンドをカバーするのか?オレらの音楽性に合わないだろ」

面倒なので、何か言われるたび俺は「ごめん」と言って修正した。
俺は暑苦しくしている気はないのだが。
自分で弾いて録ったのを聴いてみると、確かに前より力強くなった気はする。
まあ直せないもんでもないし、俺は特に気にせずにいた。

(((おうおう、なんか大変そうだな)))

それほどでもねえよ。
俺が奴の言うことを聞いてりゃいいだけだし。

(((フーン。あのイケメンくんなー。いいモンは持ってんだけどな。
なかなか難しい奴だぜ。自分に何が足りないのか気付くといいんだが。
それこそ俺みたいな優し~い神様と出会うとかしてよ~)))

あいつんとこに行って教えてやればいいじゃん。

(((うーん、行ってもいいけどあいつには俺のこと見えねえと思うよ)))

そういうもんなの?

(((そういうもんよ。
まあこの話は置いといてよ、おまえそろそろ曲作ってみないか?
おまえならいい曲が作れるはずだぜ。やってみろよ)))

自作曲か。自分で作るって発想がそもそもなかった。
そうだな、帰ったらやってみるよ。

(((そう来なくっちゃ!楽しみにしてるぜ)))

帰宅後、俺は早速曲作りに取り掛かった。
これが思ったより熱中してしまった。
曲が完成して、ヘッドフォンを外して初めて夜が明けていたことに気付いた。

(((なかなかいいじゃねえか!一晩で作ったなんて大したもんだぜ)))

神様に褒められてすっかり気を良くした俺は、この曲を次のスタジオ練習で披露することにした。


【続く】

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