ギターの神はかく語りき ~エピローグ~
俺は、彼女と一緒に他のメンバーをスカウトし、めでたくバンドを組んだ。
俺と彼女のツインリードギターは、地元のメタラーの間で密かに話題になった。
俺たちのライブには、どこから湧いてきたんだってぐらい大勢の筋金入りのメタラーたちがいつも集まってくれた。
ありがたいことに地元以外でもファンが増えてきて、ライブ遠征できる日も近い。
俺と彼女の息はピッタリだ。
彼女と一緒ならいくらでも音楽を楽しめる。
最高のギタリスト仲間で、最高の戦友で…。
イケメンたちはというと、あれから新しいギタリストを迎えて、今度は仲良くやっているようだ。
一度ライブを観に行った(彼女も一応誘ったが断られてしまった)が、イケメンもみんなも楽しそうに見えた。
あの野郎、本当にいい顔するようになったな。
そのおかげでファンの黄色い声が前より凄まじい。こちとらムサい客層なのに羨ましいったら…。
(((ほ~んとにおまえは大した野郎だな~)))
何がだよ。
(((とぼけちゃってぇ。このこの!)))
気持ち悪いぞ。
(((ヘッヘッヘ。おまえもすごいけど元はといえば俺のおかげだな!神様に感謝しろよ~)))
はいはい。
(((じゃ、俺はもう行くぜ)))
…そうか。
(((面白いもん見せてくれてありがとな!がんばれよ!)))
こちらこそ、ありがとう。
俺にギターを教えてくれて。
ギターの神様は、メロイックサインを掲げて消えていった。
それ以降、俺の前に現れることも、声が聞こえることもなかった。
「おーい!もうすぐ出番だよ!」
「おう!」
メンバー全員で輪になって士気を高めた後、俺は彼女と向き合い、互いにニヤリと笑って拳をかち合わせた。
これが出陣前の俺たちふたりの儀式だ。
俺たちの指にはめられた揃いのごついシルバーリングが、鈍く光った。
【おわり】
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