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宗谷のテーマソング2022振り返りと、「テーマソングとは?」

自分が聞いた音楽を、1年間記録するということをやってきました。

思ってたところに辿り着けたかどうか、はわからないけれど。2022年のわたしの人生はたくさんの劇伴に彩られて過ごして終わったんだなっていう、不思議な感覚はあります。劇伴。ーーそうなんだよなあ、劇伴。

テーマソング探しのきっかけ

テーマソングを探したいと思っていたのは、(いつかも少し書いたけれど)もともとは、レッドカーペットを歩くための曲探しとして始めました。

コロナ以前、わたしの会社では半期に一度、全国の社員を東京に集めて(それこそ何千人と……)、それはそれは盛大な表彰式をやっていました。表彰文化なんです。セクションごと表彰なので、営業だけじゃなくて営業サポートも、プロダクトも、コーポレートもそれぞれに対象になりうる可能性のある、表彰式。
式の形態は毎年少しずつ変わっていたのだけれど、はじめてその表彰式に参加した時の衝撃が忘れられない。

数分に編集された個人と業績の紹介動画のあと、ドレスアップした本人がホールの端に登場し、長い、それこそ50メートル以上ありそうな細長い花道を、スポットライトを浴びながらメインステージに向かって歩いていく。
そして、登場した瞬間から流れる入場曲は、その人自身の選曲だった。

あまりに眩かった。
曲も知っているものも知らないものも、ロックもポップスもアイドルも。それこそジャニーズだって。ああ、この人はこういう音楽を聴く人なんだって、そう思われながら/主張しながら、ランウェイを歩いていく。
名前と所属と、業績と。見た目と。そこからはわからないその人個人の、最もパーソナルなものとして選ばれる入場曲。その手触りに眩暈がした。
わたしはきっとその時から、そのパーソナルさに囚われていたんだと思う。

入場曲を自分で選べた回はおそらくその時だけだったし、表彰式もコロナでオンラインになってしまった。だから、わたしにこれからも、そんな眩い機会は(たぶん)訪れないだろうということはわかっている。
でも、2017年10月のあの瞬間から、あの空間にわたしの魂はいつもある。

名刺がわりの1曲を探して

わたしは、あの瞬間にどんな音を引き連れて、歩くのだろう。
「〇〇部の宗谷」さん、として。上司、同僚、仕事上のわたしを知る人、知らない人たちの眼差しを受けながら。

きっとそれは好きな音楽、じゃない。「わたしらしい」音楽。
わたしらしい、って、何だ。わたしのなかの何を掬い上げる?
役割と見た目と中身に落差があることを自覚しているし、志向している。じゃあ、踊る人としてのわたし? 仕事をするわたし? プライベートのわたし? 
曲の持つパブリックイメージと、自分のイメージとの乖離をどう折り合いつける?
フルでは流せない。曲の構成はどうだろう? 音の攻撃力は? リズムは? 歌をのせる? インストゥルメンタルがいい?
どんな感情を想起させるものがいい? 楽しく? 意外性?

名刺がわりの一曲を、どう選ぼう?
そう、ほんの数分だけの、たった、1曲。

Jean-Jacques Burnel 「You Won't See Me Coming」

2017年のその秋の日、まず反射的に浮かんだのは、Jean-Jacques Burnelの「You Won't See Me Coming」でした。
2004年のアニメ「巌窟王」のオープニングテーマだった曲。

・静かなイントロからのドラム24連、という最初の20秒の掴みが完璧。イントロは超大事にしたい。掴み!
・その後、一気に展開が始まるギターの歪んだメロディライン。背中を押して貰えてノリノリで歩けそう。
・サビ終わりの"until I strike!"の締めまで約1分半。構成が良すぎる。

コーポレート職だねって感じの大人しい曲じゃない方が良い。ギャップ/二面性を感じさせたい。(ランウェイを歩くための)力になる曲が良い。
……といった、場に求めたい曲としての要素を概ね満たしている曲。
ただ、巌窟王じゃないんだよな〜〜〜〜(歌詞もちょっと違うんだよな〜〜)
ということで、この曲を超えるランウェイソングを探し始めたのが、ひとつ転機だったかもしれない。

踊る人であれば、Spanish Connectionの「Isla del Tronpito」とかいいな。
アラビックな雰囲気に傾けるのであれば、SixTONESの「Special Order」も歌詞的にはいいのだが、あの冒頭のジェシーの掛け声を背負いながらランウェイするのは……だいぶ……気概がいるな……(NAVIGATORはヨシ!)
「This is Me」は最高だけど("Look out 'cause here I come, And I'm marching on to the beat I drum"!)、背負うにはちょっとパブリックイメージが強いかなあ。ご機嫌に「Tequilla!」でもいいな〜歩きやすそう とか。
そんなこともやもや考えながら「テーマソング」を真面目にアウトプットしてみよう、なんて。

そして、「何かを通して自分の人生を振り返る」という試みの示唆を受けた時、わたしは音楽であれば振り返られるかもって思ったんですよね。
「好きになった男(とかキャラクタ)を語ることは、自分の人生を語ることと同義」っていう考えがすごく好きで。それと同じぐらい、その時に聞いていた音楽を振り返り綴ることは、自分の人生の集積になる気がしていてならなかったので。

ファッションで振り返るのと別物なんですよね。名刺がわりの一曲を探すことは、自分の制服を探すことに近いのかもしれないなと思いますが。
でも、その旅程においては音楽の方がもっと自由で、何にも縛られない。ティファニーが手に入れられなくたって、ムーンリバーを聴くことはできる。誰にだって。

あと、わたしはお葬式に流すプレイリストも考えているのですが、やっぱりこれは自分という人生の物語の「オープニングテーマ」と「エンディングテーマ」が何かという話なのでしょう。
自己紹介のランウェイソングはオープニングテーマ。そうして最後、人生が終わった時に何が残るんだろう。
これはきっと、「You Won't See Me Coming」から導かれた心象風景。

テーマソングを探して2022

冒頭で劇伴、という言葉を使いましたが、毎月少しずつ書き残していく中で、「あの時に聞いていたあの曲」の手触りが確実になっていった部分はあります。
表参道に行けば(sic)boy、四谷駅はGumTape。どこかに向かっているときの風景、時間、空気の冷たさ。空の感じ。そこで聞いていたもの。視覚と聴覚が結びついている世界に生きていたなという感覚。

それから、いつもなら溢れていくはずの音楽の欠片を拾い集めて、パッケージに入れることでわかってきたこと。わたしはリズム(ビート)の人間であること。「灰になる」という概念に惹かれること。「踊る」ということが示す言葉から導かれる手触り。

好きだから聴くもの。聴いていたら好きになっていくもの。そうして、わたしの見ている世界と混じり合って、かけがえのないわたしだけの一曲になっていくこと。
生きてきた中で当たり前のようにそうなってきたものに、いくものに、じっと焦点を当ててつぶさに見ていく2022年は、名付けられて圧縮され、そうして時々に眺めて清々しい気持ちになれるような、そんな思い出の一年になったと思います。この年に何があった、とかじゃなくて。音楽を聴いていた時の感情だけが真空のままパッケージングされているみたいな感じ。それこそ、空気ごと。(真空なのにね)

この日にあったこのこと、ではなく、このことに対してどう思ったか、をそれこそ真空パックにして。そしてそれを時々引っ張り出して眺めてみる。
感情を磨耗させないように生きていきたいと思っています(わたしは蟹座なので!)。
心が揺れたことを、覚えていたい。人生に穿つ楔のように。標のように。不意に、思いもよらないところから殴られて、意識を波に攫われるようなことが、わたしの人生にはたしかにあったのだといつでも戻ってこれるように。
その標のひとつとして、その感情の劇伴として、わたしは音楽と生きている、んだろうな。

この風景を言葉にしてくれた銀色夏生の詩があったけれど、今すぐに思い出せないので、いつか追記します。「時々そっと、指の隙間から光を見せてくれる」という言葉で締められる詩です。(詩や短歌の優れた効能は、人生に深く染み込んで、相応しい時に相応しい感情として立ち上がってくるところ。)

改めて、宗谷のテーマソング2022

途中で放り投げてしまうかもしれない、と思いながらもなんとか一歩一歩足を出し、12個のパッケージを作り出せたことにはほっとしています。
積み上げたもの、はこんな感じでした。

Kis-My-Ft2
「LuvBias」(1月)「灰になる前に(北山宏光)」(1月)『BEST OF KIS-MY-FT2』(2月・3月)「NAKED」(2月・4月・8月)「Tequila! -テキーラ-」(5月)「足音」(7月)「Two as One」(7月・8月)「Smokin' Hot」(8月)「Tokyo-Kis」(12月)
SixTONES
『CITY』(1月)「Gum Tape」(3月)「NAVIGATOR」「love u...」「You&I」(4月)「Party People」(8月)
I Don't Like Mondays.
「LIFE(minus one)」(2月)「HONNE」(6月)
SKY-HI「Marble」(2月)
(sic)boy 「Heaven's Drive feat.vividboy (Prod.KM)」(3月)
ジャニーズWEST 『Mixed Juice』(3月)
レミオロメン『Ether』(3月)
松任谷由実「あなたと私と」(4月)
SnowMan
「From Today」(4月)「オレンジKiss」(7月)『Snow Labo.S2』(9月)「ミッドナイト・トレンディ」「Movin'up」(10月)
MANKAI STAGE『A3!』~SPRING 2019~ 「一五一会」(4月)
・「Sole (por Burelias)」from『La noche flamenca』(5月)
ミュージカル刀剣乱舞 真剣乱舞祭2022(5月・6月)
IA「Conqueror」(6月)
KREVA「神の領域」(6月)
FIVE NEW OLD「Summertime」(7月)
Tani Yuuki「W/X/Y」(7月)
BUMP OF CHICKEN「プラネタリウム」(8月)
向井太一「Bravest」『COLORLESS』(9月)
川本真琴 『川本真琴』(10月)
King & Prince 「Namae Oshiete」(11月)
スピッツ 「夜を駆ける」「恋する凡人」(11月)
Mrs. GREEN APPLE 「ダンスホール」(9月・11月)
・「Waving through a window」 from 『Dear Evan Hansen』(12月)
・紅白歌合戦(12月)

いや〜〜〜、今年一番聞いたのは間違いなくキスマイですね。
直近効果とかイメージとかじゃなくキスマイ本当によく聴きました。ジャニーズも聞いてはいるんだけれど、ジャニーズを聴いているというより、音楽的な部分でキスマイが好きなんだなと思います。シンプルに好みの曲が多い……。ずっと聴いていて飽きないし、なんだろう。どんなシーンにでもどんな感情にもフィットする曲がある。(さすが10年選手……)

そう考えると、2022年のテーマソングはやっぱり「NAKED」でしょう。全身麻酔のBGMに選んだという時節の巡り合わせというのも大きい気もする。
次ぐのは「ダンスホール」。春と夏のNAKED、そしてこの曲に背中を押されて歩いた秋と冬だった気もします。

サブスクリプションはLINE MUSICを使っているのですが、2022年のPlayBackによると、LINEトータルの再生時間は220時間16分。(LINEで聞いていない時間ももちろんある(配信されていない曲とか)ので、音楽を聴いている時間はもっと長いわけですが)
LINE MUSICだけで、1年の2.5%がここにある、と思うと感慨深いものがあります。

そして、このLINEMUSICの再生回数TOP3が、「灰になる前に」(北山宏光)、「DON'T WANNA DIE」(北山宏光)、「Two as One」(Kis-My-Ft2)なあたりも、ブレないな〜という気持ち……。(Two as Oneはキャンペーンがあったから下駄はいていると思います。NAKEDは未配信です。)
2023年も1月もすでに灰になる前にとドンワナ聴きまくっていたので、好きなんだろうな、本当に……本当に好きなんだな……って実感しかない、北山宏光のソロ曲のセンスが。
自己プロデュース能力が高い人がわたしは大好きです。自分の選び取る道に、自覚的であるということだと思うから。

2023年をどうするかはまだ決めかねているのですが(え、もう2月も終わるのに?)、何かしらの形で楔は打ち続けていきたいな、などとは思っているので、また一歩踏み出すことがあればご笑覧ください。
(あれこれごっちゃまぜ月報のかたちにするか……?)
それでは!


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