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手話を楽しむ


地域の手話サークルに通いはじめて
数年になる。
きっかけは、
初詣に出かけた時にみた光景に
魅せられたから。

参拝を待つ長い列。

寒いね
やっぱ混んでるわ
何をお願いするん

ざわめきの中で後ろの男女が
声を出さず、笑いあっている。
見交わしながら手を動かし
うなずいたりしている。

生まれて初めてみた手話だった。
雑踏のなか
そこだけ静謐があるような
不思議な光景だった。

目まぐるしく手や指が動く
身振り手振りとも違うコミュニケーション
若い男女は楽しそうに会話を続ける。

テレビドラマで聴覚障害者が
手話を使う場面はみたことはあったけれど
はじめて手話を目にして思ったのは

手話って本当にあるんだ
あんな風に話せたら楽しいだろうな

早速、地域の手話サークルを探し
飛び入りで参加してみた。

会議室の戸をノックする。
長机に座った人たちが
一斉にぼくをみて
こんばんは
と言いながら挨拶の手話をしてくれる。

席につくやいなや
講師と思しき男性が近寄ってくる
破裂音のような独特の声を発しながら
手話で何かを言っている。

隣の机の女性が、
「自己紹介をしてと言ってるんですよ」
と微笑む。

冷や汗をかく思いで
自分の名前と、よろしくお願いします
とだけ、悪戦苦闘しながら手を動かす。

自己紹介を促した男性は
聴覚障害者のようで
緊張でしどろもどろのぼくに
たいじょおぷ
と笑った。

手話には、音声言語にはない特色がある

駅のホームの向こうとこちらで
話すことができる

あら、ひさしぶりね
元気にしてた❔

仕事が忙しくてさ
残業が多くて疲れるよ

大変ねえ
これからどこ行くの❔

ひさしぶりの休みだから
映画館にでも行こうかなって

えーわたしも映画行くんだよ
ねえ、ひとりなの?
良かったらいっしょに行かない❓

驚くことにこういったやりとりが
出来てしまう。

数年経った今も、不勉強ゆえ
“読み取り“がなかなか出来ないので
流暢に話すまでには程遠いが
ろう者に、手話が通じた時は
とてもうれしい。
手話学習者の学習意欲の最大の
動機だと思う。

手話は音声に依存しない分
声を出せない場面、環境では
とても役立つ。

工場や工事現場では、昔から
指差し確認やジェスチャーなどで
安全の確保を図っていると聞く。

荷揚げ機器の大手
KITOが、聴覚障害者を積極採用し、
現場で手話を活用しているという
ニュースをみた。 

ろう者が手話を健聴者に教える取り組みが
効を奏し、工場の騒音の中でも、手話を
使った意思疎通が出来るようになったらしい。
同時に、聴覚障害者と健聴者が手話で
コミュニケーションできるようになったことで
職場のバリアフリー化にもつながっている。

こうした有用性もさることながら
手話独特の豊かな身体表現は、楽しい。
聴覚障害者のコントを見たことがあるが
目でみることばの面目躍如。
表情や動きが大きく、落語の上下を
“観るような“楽しさ。
客席もどっと沸く。
客席のろう者は、
手話でとなり同士おしゃべりに夢中だ。
ステージの演者を邪魔しないのが
手話ならでは。
手話は、早くて読み取れない
ことの方が多いけど、饒舌な手話が
飛び交う光景は圧巻だ。

今回、手話を記事にしたのは
コロナ禍で、サークルがなかなか開催されず
モチベーションが下がりまくっていたから。
実際に逢ってやりとりする楽しさは
かけがえないものだと思う。

手話は素敵なコミュニケーション 
かなり忘れてしまったけれど
学びなおしたい。


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