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小説「まねーびと」

世の中…ってヒトコトで表すなら、なんと言えるだろう…?
〝愛〟…なんて気恥ずかしい言葉が言えるのは、おれとは縁遠い世界な感じがする。ってな具合の〝その年の世相を一文字で〟みたいに言えるのは、おれが思うにズバリ〝金〟だ。そんなことを感じたことがあったので書いておくこととしよう。


その日もおれは仕事帰りで疲れ果てていた。
そんな時だ。フト、スマホで良さげなアプリがあったのでダウンロードしてみた。ろくに説明文など見ずにダウンロードしたので、しばらく忘れた頃に遊びに出かけた際、またそのアプリ「マネービト」というのを使ってみることにした。
〝使い方はとっても簡単!人に向けて写真を撮ると、それだけでお金になるんです!〟というアヤシゲな説明文だったが、よく意味が分からないなりに通行人に向けて写真を撮ってみた。するとアプリが、
「アノヒトノ値段ハコンナカンジデス」
とアノAI特有の声で言いやがった。すると次に
「アノヒトヲオカネ二換エマスカ?換マセンカ?」
と言ったので、これは何かのゲームアプリ…?いやコレはひょっとして…。

               
おれはこのアプリの意味を理解した…と同時に想像するに戦慄を覚えた。こんなことが実際にあったら…と思ったが、そのココロとは裏腹にスマホに向かってこう言った。
「お金に換え…ます!」
「了解シマシタ」
                    
                   
 すると、どうだろう。その瞬間から通行人の足元が
「チャリン!チャリン!」
と音がし出した。
 その通行人は60代ぐらいのオッサンのようだったが、
「う…うわあ…何じゃあ…!」
と某俳優のセリフのようなことをいう間もなく
「チャリン!」
と何十円かの小銭になってしまっていた。
 「アノヒトノ値段ハコンナ感ジデス」
と、またAI特有の声で言い放った。
 「41円デシタ」
 
                    
 こんなことが実際に出来るなんて…。おれはその時の通行人の周りに誰もいなかったのをいいことに〝まあ…41円くらいならいっか〟と拾ったままにした。
 その日から、おれは当然のようにそのアプリでお小遣い稼ぎに夢中になった。
 しかし因果応報というか、おれはある時思った。
「コレがもし他のヤツに知られたら…」
と思う間もなくAIの声が聞こえた。
「アナタハゼロ円デス」
という間もなく、おれは無になった。
                    
                    完
 

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