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2019年上半期、訪日客が増えた国減った国 週刊インバウンドニュースマガジン(7月3週号)

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今週もインバウンド業界に関わるみなさんに、最新のインバウンド関連ニュースをお届けします。

1. 2019年上半期、2019年6月の訪日データが発表!

6月の訪日外国人旅行者、前年同月比6.5%増の288万人(JNTO) (7/19 日本商工会議所)
https://www.jcci.or.jp/news/trend-box/2019/0719103919.html

6月のインバウンド統計データがJNTOにより発表されました。6月単月では過去最高の訪日客数を記録し、全体的な旅行者の伸びは継続している一方、4月5月に続き、国により明暗が分かれている点が特徴的です。

中国では88万人と単月過去最高を記録。韓国、台湾、香港などの主要市場も、前年同月比を上回る集客を記録しています。

一方、タイ(14.5%減)、インドネシア(12.2%減)、マレーシア(16.4%減)の3カ国は前年と比較して大きく訪問が減少しています。

6月の訪日タイ人、前年比14.5%減 (7/18 @ニフティニュース)
https://news.nifty.com/article/world/worldall/12200-11864/

関係悪化が話題となっている韓国については、報道とは裏腹に個人旅行が堅調(0.9%増)。ただし、1-6月期では昨対比で3.8%減少しています。

2019年はその他、台湾も1.0%減。反対にベトナムは30%と大幅増を記録しています。

訪日韓国人、関係悪化も個人旅行堅調 (7/18 ニュースイッチ)
https://newswitch.jp/p/18473
19年上半期の訪日外客数は前期比4.6%増、6月単月では過去最高に (7/18 BCN+R)
https://www.bcnretail.com/market/detail/20190718_129013.html

各国の経済状況、天候、国家間の関係によって、インバウンド集客の波は大きく動きます。特定の国をターゲティングすることは重要ですが、上記のようなリスクを勘案すると、今後は「ターゲット国ポートフォリオ」のような考え方も必要になってくるでしょう。

訪日外国人消費動向調査2019年4-6月期(1次速報)について(7/17 観光庁)
http://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_000388.html

消費という観点からもデータを俯瞰してみましょう。観光庁の「訪日外国人消費動向調査2019年4-6月期(1次速報)」によると、前年同期比で13.0%増を記録しています。

費目別に見ると、各費目が全体的に増加しているものの、買い物代や宿泊費が前年比で15%〜18%増と大幅に増加しています。

国別では中国、タイ、イギリス、ドイツ、フランスなどの国が、前年比で20%を超える消費額増を記録。全体の伸びに貢献しています。

ターゲット国を定める場合は、その国の訪日客数だけでなく、消費額、訪日目的なども踏まえておくことが必須となります。

2.交通各社で、訪日向けのチケット・施策が進行中!

JR東など鉄道各社、五輪向けに訪日客の乗り放題パス販売 (7/18 日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47516240Y9A710C1TJ2000/

本マガジンでたびたびご紹介している鉄道会社の企画パスに、今週も新顔が登場。鉄道会社会社・路線の枠を越えて利用できるIC乗車券で、特定区間が3日間乗り放題になります。

IC乗車券という点がこれまであまり見られなかった特徴で、購入したSuicaに乗車券情報を登録して利用できるため、紙の企画チケットよりもユーザーの利便性は高くなることが期待されます。

詳細は未定とのことで、今後の発表が待たれますが、自治体の方にとっては対象路線や沿線に自地域が含まれていれば、沿線の観光ルート開発などが集客のための有効施策となってくるでしょう。

企画チケット以外にも、旅行者の移動の利便を向上させる仕組みはまだまだ可能性があります。

JR西日本では、QRコード決済でチケットを購入できる券売機を導入。

JR西日本、訪日外国人向けに券売機でQRコード決済導入(7/18 マイナビニュース)
https://news.mynavi.jp/article/20190718-861455/

QRコード決済が普及している中華圏などを意識しているようです。決済手段の充実は、機会損失を防ぐ効果があります。ただしあらゆる決済手段を導入していくのは非効率。自地域のターゲット国を念頭におき、ターゲット国の主要決済手段を導入するのがよいでしょう。

3.訪日客対応可能な医療機関を厚労省が選定

外国人患者診療に協力意志ある医療機関をリスト化 厚生労働省と観光庁が作成(7/17 CB News)
https://www.cbnews.jp/news/entry/20190717191249

海外旅先での事故や病気は旅行者にとって大きな不安の種となります。

特に日本では外国人対応が可能な医療機関が限定されているため、勇気を出して医療機関に赴いても病院側で対応を断られる可能性も存在します。

そこで厚生労働省ではこのたび、外国人対応が可能な医療機関をリスト化して発表しました。

ポイントは「適正」と「意志」。外国人対応ができる環境・体制が整っているだけでなく、対応を行う意志があるかもリスト化の条件としているため、旅行者に紹介しやすい内容となっています。

また、これまでの医療機関リストとは違い情報も統一されている点もよいポイント。観光事業者、自治体の方であれば、いざという時のために自地域の医療機関をチェックしておいて損はないでしょう。

4.主要交通機関のインバウンド対応は、来年にも完了予定

公共交通機関におけるインバウンド対応が着実に進展!
~ 主要な線区については2020年度中にインバウンド対応が概ね完了の見込み ~(7/16 観光庁)

http://www.mlit.go.jp/kankocho/news08_000286.html

観光庁の主導で行われていた、公共交通機関のインバウンド対応について、現時点での進捗発表が行われました。

発表によると、主要空港へのアクセス路線、新幹線、主要都市・観光地へのアクセス路線などの線区で2020年度中にインバウンド対応が完了する見込みだそうです。

なおここでいうインバウンド対応とは、以下の通り。

1.外国語等による情報の提供
2.インターネットを利用した観光に関する情報の閲覧を可能とするための措置(Wi-Fi 環境の整備)
3.座便式の水洗便所の設置(洋式トイレの設置)
4.クレジットカードによる支払を可能とする券売機等の設置
5.交通系 IC カード利用環境の整備
6.荷物置き場の設置
7.インターネットによる予約環境の整備などの環境整備

主要線区でのインバウンド対応が優先して進められていることは、当然なことでもありますが、人気エリアやそうでないエリアとの間で環境差が更に広がることも意味しています。

これからインバウンド集客を進めていきたい地域は、上記のようなインバウンド対応を自地域での環境整備の参考とするとともに、国内でインバウンド環境の地域差が生まれつつあることも念頭に置いておきましょう。

5.ダムや橋が観光地になる!? インフラツーリズムとは?

インフラツーリズム魅力倍増プロジェクト始動! ~社会実験モデル地区を選定~(7/12 国土交通省)
http://www.mlit.go.jp/report/press/sogo03_hh_000219.html

インバウンドでは思わぬスポットが観光資源として人気を集めることがあります。例えば日本の普通の生活を追体験することが、訪日客にとっては非常に刺激的に感じられることも珍しくありません。

そのような観点に立てば、「うちは観光地ではないから」と思っている地域でも、訪日客誘客を実現することは可能です。

国土交通省が推進しているインフラツーリズムも、そんな新しい旅の形のひとつだと言えるでしょう。

インフラツーリズムとは、ダムや橋などのインフラを観光資源として活用する旅の形のこと。ダムの建築やダムを含む自然の景観を楽しんだり、ダム湖でクルージングをしたり…可能性は様々です。

ただし、元々観光向けに作られていなかった施設・地域の場合、アクセス方法や現地での観光対応などが整備されていないことが多く、課題も多いことでしょう。

インフラツーリズムの公式サイト( http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/region/infratourism/index.html )には全国のインフラ観光資源の事例がまとまっています。自地域の観光開発の参考にご覧になってください。

改善アンケートのお願い

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https://forms.gle/bhNDH1Qrz7fE65fX6

あとがき

今週私は出張で北海道の札幌を訪れています。

北海道はインバウンドでも人気の地域ですが、他とは違う特徴を持っています。それはとにかく「エリアが広いこと」。

そのため、各地域の方とお話をすると、同じ北海道なのに驚くほど状況が違います。観光地としてのステージ、定めているターゲット国、プロモーション戦略などなどが、自治体によって大きく違うのです。

とはいえ、訪日客の視点に立てば、北海道は北海道というひとつのエリアであり、各市町村の違いなどはあまり認識されていません。

このような状況であれば、本来は北海道全体、あるいは市町村よりももう少し大きな観光領域を作り、その中でインバウンド戦略を作るべきでしょう。

本マガジンでは「ターゲット国ポートフォリオ」という考え方(造語です)をご紹介しましたが、そのような戦略も、周辺地域とずれていたら用をなしません。

もしも周辺地域の状況や自地域自地域・企業の立ち位置に不安をお持ちであれば、ぜひ弊社までご相談下さい。

各地・各社さまのプロモーションを支援している弊社が、客観的な視点でみなさまのインバウンドマーケティングをお手伝いいたします。

今回もお読みいただきありがとうございました。

次回もどうぞお楽しみに!

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