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P・バーホーベン「スターシップ・トゥルーパーズ('97米)」

ロバート・A・ハインラインのSF小説「宇宙の戦士」を原作にしたポール・バーホーベン監督のSF大作。

地球は遥か宇宙の彼方の惑星に棲む知性を持った昆虫たち(バグズ)との全面戦争に発展していました。

その時代の地球では民主主義が崩壊し、代わりに全世界を軍国主義が統一していて、若者はみんな軍隊に志願してバグズと戦おうとします。地球はナチスが全世界を統一したような社会になっていて、異様な雰囲気の作品になっています。

主人公たちは武装艦隊でバグズの惑星に乗り込みますが、自我のある昆虫はごく一握りで、残りは殺戮マシーンと化した兵隊バグズたちで、これが本当にウンカの如く現れて地球軍を襲うのです。

地表を覆い尽くすバグズの群れはCGで表現されていますが、私は初めて映画のCGを見て「凄い」と圧倒されました。もう後から後から、ワラワラと地中から這い出して来て、どう見ても人間が敵う相手ではないです。

バーホーベン監督の最高傑作ではないでしょうか? 最後は一応地球軍が勝ちますが、ナチスが宇宙人に勝利したようなもので、後味がいいものではありません。バーホーベン監督独特の悪趣味ジョークと底意地の悪さが最後までまとわりつく、なんとも言えない余韻に浸れます。

江戸川乱歩の小説に「蟲」というのがありますが、主人公はある有名女優を殺してその死体に防腐処理を施し、永遠に美しいままの死体を作ろうとします。しかし処理に失敗して死体が徐々に腐っていく。その時主人公の頭の中に、死体の体内に腐敗を進行させる虫がいるとして、これと格闘するうちに頭が虫でいっぱいになり、「虫、虫、虫虫虫虫…」となるのですが、初出は戦前なので旧字で「蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲……」と、蟲がページを埋め尽くす物凄い気が狂った描写があります。「スターシップ・トゥルーパーズ」を観た時、乱歩のあの小説を思い出しました。

「スターシップ・トゥルーパーズ('97米)」
キャスパー・ヴァン・ディーン / マイケル・アイアンサイド / ポール・ヴァーホーヴェン


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