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「奇跡の人」

盲目・聾・失語の三重苦を克服した聖女と呼ばれたヘレン・ケラーの有名な実話に基づく、1962年のアーサー・ペン監督による映画です。59年に「奇跡の人」の題で舞台になっており、これに主演したアン・バンクロフト(サリバン役)とパティ・デューク(ヘレン役)が、そのまま同じ役で映画版に出ています。

幼い頃に猩紅熱にかかり三重苦になったヘレンを、裕福な両親は甘やかして育てますが、結果、ヘレンはわがままで自分の意思が通らないと野獣のように暴れる、手がつけられない子供になってしまいました。

苦悩した両親は、盲学校から住み込みの家庭教師としてアン・サリバンを雇います。

サリバンは、ヘレンを甘やかすばかりの両親に呆れ、ヘレンを自制心のある子供に育てるべく苦闘します。時にケダモノのように暴れるヘレンと、引っ掻かれ噛みつかれて血まみれになっても絶対に甘やかさないサリバン先生の格闘は物凄い迫力。構図もカット割りもアクション映画のように作られています。

最後にヘレンは庭の井戸から出る水に触れ、それがサリバンが指文字で教えた「ウォーター」だと気がついて、天啓に打たれたようになるところは屈指の名場面です。以後、ヘレンは言葉を覚えるために自分から勉強するようになります。

映画は、この最も感動的な場面で終わりますが、その後のヘレンは三重苦の状態でラトクリフカレッジ(今のハーバード大学)で文学士の称号を得ました。そして世界中を回って障害者福祉の重要性を説きます。

日本にも来て有名なハチ公に会おうとしますが、ハチ公は直前に死去しており、ハチ公の銅像に触れるヘレン・ケラーの写真が残っています。これを知った秋田の警察署巡査が、飼っていた生まれてまもない秋田犬「神風号」をヘレンに譲りました。恐縮したヘレンが謝礼金を払おうとすると、巡査は「私は金銭目的で犬を譲ったのではない」と断固として謝礼を拒否しました。

アカデミー賞に輝いた「奇跡の人」はその後も何度も舞台になり映画化もされましたが、やはり最初の映画版「奇跡の人」が決定版と呼べるでしょう。1979年には「奇跡の人」でヘレン・ケラーを演じたパティ・デュークが、今度はサリバン先生になってテレビ映画になりました。

ちなみに「奇跡の人」の英題は「The Miracle Worker」で、明確にサリバン先生を指しています。邦題だとヘレン・ケラーのことを奇跡の人だと勘違いしますが、本当の奇跡の人は誰なのか、考えながら映画を見るのも一興ではないでしょうか。

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「奇跡の人('62米)」
アン・バンクロフト / パティ・デューク / アーサー・ペン


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