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田宮二郎「白い巨塔('66大映)」

医学界の頂点を巡るドロドロした人間模様を描いた山崎豊子の原作小説を社会派の巨匠・山本薩夫が映画化した「白い巨塔」であります。野望に燃える医師・財前五郎を田宮二郎が体当たりで演じ、田宮の当たり役になりました。「白い巨塔」は劇場映画(本作)が1回、ラジオドラマで1回、テレビドラマはなんと7回(うち韓国製ドラマが1回)も制作され、田宮は映画とラジオとテレビでそれぞれ一回主役を演じています。

数ある財前五郎役では田宮二郎が群を抜いた存在感で、インテリジェンスを感じさせるが胸に野望を秘めた2枚目という意味では、これ以上の財前五郎は居なかったと言えるでしょう。

田宮が演じたテレビ版「白い巨塔」は1979年1月6日に放送が終了しましたが、その最終回の撮影を終えた前年の12月28日に田宮は猟銃自殺を遂げており、これが遺作となりました。まさに財前五郎を演じるために生まれたような役者で、自殺の直前まで演じていたという意味で、財前五郎は田宮二郎の文字通りのライフワークでした。

財前五郎(田宮二郎)は恩師である東貞藏(東野英治郎)の後釜を虎視眈々と狙う。

財前は食道噴門ガンの手術を得意とする外科医で、彼の名声を頼って全国から患者が殺到する名医と言われてましたが、次期教授の座を狙って権謀術数を巡らし、ライバルを蹴落として教授の座を獲得します。

ところが財前は事もあろうに医療ミスで患者を死なせてしまう。財前はありとあらゆる裏工作で道義上の責任はあるとされながらも無罪を勝ち取り、自分の権力で財前に不利な証言をした友人を地方に飛ばして、大学病院という「白い巨塔」で王に等しい存在になります。

映画公開時のキャッチコピーは「誤診という名の殺人!」でした。

映画「白い巨塔」ポスター

田宮が演じたドラマ版は小説の第二部で描かれた財前五郎のその後を描くもので、財前自身がガンになって死ぬというものです。田宮は絶食してガン患者になりきり、作中の遺書まで自分で書いて、死を演じた後、「もう自分は何を演じればいいのか分からない」と言って自殺しました。

映画版では医科大学の最高実力者に登り詰めた財前五郎が医学部の医師や看護婦を配下のように従えて朝の定期検診に病院の廊下をゾロゾロ歩く印象的な場面が描かれますが、それはその後のドラマ版が全て模倣しています。

「白い巨塔('66大映)」
田宮二郎 / 東野英治郎 / 山本薩夫
定価: ¥ 2800

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