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キューブリック「博士の異常な愛情」('63英/米)

スタンリー・キューブリック「博士の異常な愛情」Blu-rayです。原題は「Dr.Strangelove」で、これの直訳で言葉としては変なのですけど、とても印象的になったことは確かで、名邦題だと言って良いでしょう。原題を正確に訳すと「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」という長いもので、これはコメディです。 

この映画公開の2年前にキューバ危機が起こり、これを受けてキューブリックはピーター・ジョージの「破滅への二時間」を原作に脚本を執筆しました。米空軍の大将が発狂して世界中に展開している爆撃機に核爆弾の投下を司令すると言うものです。 

脚本に取り組んで2週間後、キューブリックは原作のままのシリアスな調子だと恐怖の本質が伝わらないと考え、原作のプロットはそのままに、キャラクター全員が異常者という設定で、映画をコメディに変えました。本当にシリアスな問題はコメディと変わらないと考えたためです。結果、本作は過去作られた中で最高のコメディ映画であり、最高の戦争映画であると考えられています。 

米空軍大将が精神に異常を来たし、世界に展開する戦略爆撃機に核爆弾投下を命令するのは原作のまま。アメリカ大統領は寝耳に水で、直ちに政府と軍の首脳を集めて対策会議を開きます。 

将軍が発狂していると分かり、大統領はソ連書記長に間違いを認める電話をかけ、ソ連目掛けて飛行する世界中のB52に作戦中止を司令しますが、ただ一機だけ無線機の故障で中止命令が伝わらず飛行を続けるという話です。 

アメリカ大統領、狂った将軍の間近に居て一部始終を目撃するがどうすることもできない出向中の英国将校、そしてペンタゴンの核シェルターで大統領に進言をするドイツ人科学者ストレンジラブ博士の三役をピーター・セラーズが1人で演じてます。 

白黒撮影が見事で、破滅に向かっていることを全員が分かっているのに止めることができない悲劇をドタバタ喜劇としてまとめています。 

核戦争による人類滅亡は、それが現実に起こり得、かつ始まったら誰にも止められない事態は喜劇以外のなにものでもありません。 

キューブリックは映画の最後を関係者全員がパイを投げ合うサイレント映画調のドタバタで締めようとしましたが、撮影はしたものの、やり過ぎだと判断してそこはカットしました。

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