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どれくらいの競技者がギョーザ耳になるか?

前回のnoteでギョーザ耳、耳介血腫の印象について書きました。ブラジリアン柔術や柔道、レスリングなどの組み技格闘技や、ラグビーなど激しい接触のある競技経験者にはギョーザ耳の人がいます。でも、全員がギョーザ耳にはなっていません。

レスリングではどのくらいギョーザ耳になるか?

kordi たちは、イランの首都、テヘランのレスリングクラブのアマチュア・レスラーたちがどれくらいギョーザ耳になっているか調べました(Kordi, 2007)。テヘランにはレスリングクラブはなんと95もあるのだそうです。すごい。レスリングはイランの国技とも言われ、当地では大変盛んです。世界ランキングの上位にもイランの選手を良く見ます。

流石に全員を調査するのは無理なので、正しく割合が予測できるようランダムサンプリングを行い、レスラーがギョーザ耳になっているか調査しました。

1年以上経験のあるレスラー411人が調査の対象となりました。平均年齢は19歳、平均競技歴は4年です。平均すると週3回練習、1回2時間の練習をしている選手たちです。熱心に取り組んでいる柔術おじさんと同じくらいの頻度です

調査の結果、44%がギョーザ耳になったと回答しました。また、そのうちの23%しか治療をしなかったそうです。まあ、治療してもすぐなってしまうので、諦めてしまうんでしょう。

経験が長いとどうなるか?

4年くらいの経験だと半分弱がギョーザ耳になります。では、もっと長い経験だとどうでしょう。Manninenたちは、フィンランドで国際レベルで活躍する柔道選手とレスリング選手がギョーザ耳になっているか調べました(Manninen et al., 2019)。63名が対象となり、平均年齢は22歳、それでも競技歴は平均で15年。子供の頃から、競技漬けのエリートです。

競技漬けのエリート選手ですと、男性で84%がギョーザ耳でした。女性では0%でした。イランのデータとの違いは、96%が治療をしたとのことです。経験が長いとギョーザ耳になる割合は増えるようです。ただ、女性はケアをきちんとするのか、なりにくいようですね。

誰でもなるわけではない

ブラジリアン柔術をやっていても誰もがギョーザ耳になるわけではありません。私も良く見たらわかる程度にしか変形していません。一流の選手でも変形していない人もいます。有名なのは、チェッキマットの総裁、レオジーニョことレオナルド・ヴィエイラですね。

AOJのメンデス兄弟は2人とも耳が変形していません。ハファ・メンデスは歴代最高の選手に挙げられることすらあります。それでも、耳は変形していません。ただ、メンデス兄弟については、一緒に練習をし、兄弟の実家にしばらく滞在したこともあるプロシューターの若山達也選手が「あいつらは血を抜いてた。ちゃんとケアをしてた。俺は知ってる」と昔、私が出稽古でお世話になったときに話してくれました。なので、ケアも大事なのでしょう。女性のエリート選手が男性に比べギョーザ耳になる確率が圧倒的に低いのもケアをするからです。

引用文献

・Kordi, R., Mansournai, M. A., Nourian, R. A., & Wallace, W. A. (2007). Cauliflower ear and skin infections among wrestlers in Tehran. Journal of Sports Science & Medicine, 6(CSSI-2), 39.
・Manninen, I. K., Blomgren, K., Elokiuru, R., Lehto, M., Mäkinen, L. K., & Klockars, T. (2019). Cauliflower ear among Finnish high‐level male wrestlers and judokas is prevalent and symptomatic deformity. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports, 29(12), 1952-1956.


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